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夜明け前今も昔も夜は続く [2019年08月06日(Tue)]

fumihouse-2019-08-06T18_40_07-1-thumbnail2.jpg映画『夜明け前/呉秀三と無名の精神障害者の100年』を見ると百年という歳月の速さに感じ入る。精神科医・呉秀三の物語である。

1世紀ほど前の1918年に『精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察』を呉医師は著した。そこには精神障がい者が置かれた悲しい「監護」実態があった。看護ではなく、監禁保護である。

当時の法律(精神病者監護法)では私宅監置、通称「座敷牢」に閉じ込められて外界との接触を断たれた患者に人権はなかった。社会にとって危険な精神病者を監禁するという発想から生まれた法律である。その差別の実態は長く残り、今でも偏見はつづいている。

狐や狢(むじな)の憑きものが発したり、祟りからくるという前近代的な認識は変わりつつあったものの、解明されない脳の病気であることは同じだ。医者にとっても治療は暗中模索。薬もない時代である。その中で、呉秀三は患者を人として遇し、座敷牢と身体拘束廃止を目指した。

呉医師は述べる。精神病者が不幸なのは病を受けたことだけではない、日本という国に生れたことなのだ、と。「我邦十何万ノ精神病者ハ実ニ此病ヲ受ケタルノ不幸ノ外ニ、此邦ニ生レタルノ不幸ヲ重ヌルモノト云フベシ」

呉医師は医療者が患者と向き合うことを望んだ。今や患者さんを一人の人間として尊重する考え方に変わった。それでも映画の解説者は、座敷牢から病院監護へ替わっただけであり、心の中にある見えない檻や壁を取り去らなければならないと警告していた。長期の社会的入院が実態としてある。課題は大きい。
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