ゴーギャンがアースカラーにしっとりと [2015年09月22日(Tue)]
『ゴーギャンとポン=タヴァンの画家たち』の展覧会を、広島・三次市の「奥田元宋・小由女美術館」に見てきた。ポール・ゴーギャンというと、南洋タヒチの健康など女たちを多彩な原色で奔放に描きつつも、憂いやけだるさも交えた絵画が有名だ。
残念なことにそうした絵は出ていなかったが、仏ブルターニュ地方のポン=タヴァンで彼が百年以上前に、ポスト印象派を目指して同志の画家とともに苦闘しながら新時代の絵画を生み出す過程の一部を観覧することができた。 ≪自然をあまり素直に描きすぎてはいけないということだ。芸術は抽象なのだ≫ というゴーギャンの言葉が印象的だ。ブルターニュの風景や農家の婦人たちを描いた絵に目を凝らしてみると、油絵の具を幾重にも塗って盛ることはせず、あっさりとあえて塗らないところもあったりする。輪郭を残しているのは、印象派の画家たちが大いに影響された浮世絵の雰囲気が出ていたような気がする。 アースカラーがよく使われている。緑系統に茶系統。鮮やかなグリーンやくっきりしたブラウンではなく、くすんでグラデーションたっぷりのアースカラーだ。画面が目を優しく安定的に包んでくれる。形の面でも、斜めの三角の構図をどの絵にも使っており安定感がさらに増す。 月を美しく観賞することが設計思想となっている館内は庵治石や大理石がふんだんに使われており、思いのほかゴージャスだった。奥田元宋の豪壮にして繊細な日本画も、妻奥田小由女の独創性のある人形類も、印象深く観賞することができた。近くには三次ワイナリーもあってお勧めのスポットだと思う。 (ゴーギャンのゴージャスなタッチを彷彿とさせてくれる薔薇の花。南海の奔放な女性たちが髪飾りにするのにふさわしい) |