悩ましき蜩鳴いて人も泣き [2015年07月24日(Fri)]
蜩(ひぐらし)のことを、またもや書きます。≪出だしは低く、徐々にスピードと音量を増して、再びゆっくりと収束していく。その揺らぎには、地から湧き出してきたかのような得体の知れな≫さがあると。
違っていました。出だしからトップスピードです。しかも音は低くない。カナカナカナとやや金属的に飛び出して一秒間に4,5回も音を繰り出す。持続はせずに2,3秒で声は収まる。せわしない印象がないのは、音が切なく響いてくるからでしょう。遅くなって消え入るように終わる。思う間もなくすぐに鳴き出す。これを繰り返します。 彼らに特筆すべきは、シンクロするところです。山全体がザワザワっと揺らぐのです。若干ズレることで声の塊に揺らぎを感じさせ、いっそう切なさを募らせるのです。やるせなくて悩ましい感じが存分に出ています。日が暮れるまで続きます。 怪談話にはいい素材になりますね。「おめぇのことを好いている、必ず連れ添って所帯を持つからなぁ」と言った舌の根も乾かないうちにあたしを手込めにするなんて……死んでも死にきれないよぉおまえさん。あんたをすぐ迎えに行くから、三途の川を一緒に渡りましょうよ……。 そんな怪談劇があるかどうかは知らないけれど、今夕も悶々と悩ましく蜩は、日を暮らしていくのです。 (夕陽に照らされてムクゲが咲いている。さすがにて今日は邇摩高校も暑かった) |