ヒトラーは手間がいらずと独裁に [2013年07月17日(Wed)]
考えさせられる文章だ。有能な人、秀でた人、刮目すべき人、図抜けた回転をする頭脳を持つ人、カリスマ性のある人等々、優秀な人間を表現する言葉はいろいろある。あの殺人鬼ヒトラーがそれほどまでに有能な男であったとは。確かに徒手空拳、頭脳ひとつで一時は世界の帝王に成り上がったのだ。しかも権力奪取は民主的方法で。
≪世界恐慌のまっただ中、失業率は三〇%を超え、六百万人以上の失業者をかかえて、破産寸前だったドイツ経済を、ヒトラーは復興させました。 社会保障と福祉を中心にすえて完全雇用をめざしたヒトラーの失業抑制政策は世界中の経済学者から失笑されました。しかし数年も経たないうちにドイツ総生産力は世界経済の一〇%を超えて、アメリカに次ぐ世界第二の経済大国へと生まれかわったのです。 都市計画・公害対策・医療福祉・経済に芸術。あらゆる分野でヒトラー独裁下のドイツは驚異の発展をとげました。 ここまで有能だと、おそらく他人はすべてバカに見えてしまうのでしょう。ヒトラーはすべての情報を自分で吟味し、すべての判断を自分が下す、完全な「独裁者」だったのです。 しかし、独裁者というのは方向を誤りはじめると、誰も修正できません。ヒトラーは結局、戦争に敗れて自殺してしまいます。後の研究によると、ヒトラーは自殺しなくてもあと六ヶ月ぐらいで過労で死んだと言われています。 独裁者というのは本当に忙しいのです。というのも、すべての報告が自分に来て、すべての判断を自分が下すからです。忙しいけれど他人に任せられない。他人に権力を預けられないわけです。だいたい、他人に権力を預けて「俺が寝ているあいだ、おまえが決めろ」と言ったら、そいつが自分の地位を脅かすかもしれません。そんな怖いことはできない。そのため、休む間がない。(中略)独裁者に過労はつきもの。過労死するほど働かざるをえないからこそ、独裁者になってしまうとも言えます。≫ (『「世界征服」は可能か?』岡田斗司夫著,ちくまプリマ-新書,2007年) 独裁者はあちらこちらにいる。独裁と名をつけられていなくとも、その人がいないと組織が動かないとすればある面それも近いことだ。仕事を標準化して誰でもできるようにすること、話し合って多数意見を尊重しつつも構成員の満足が最大化すること、後継を育てて組織が発展し長く保たれること。独裁者はそうしたことの手間をかけることができないのだなあと思う。だから有能で器用で誰からも頼りにされることがよくわかる。 |