2-13 ロビーでの再会 [2011年05月27日(Fri)]
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「もう受賞式は終わったから、
君たちもはやく帰りなさい」 子供たちは、記念品の袋を渡されて、 部屋を追い出されてしまいました。 さっきまでは、晴れがましい舞台にいたはずなのに、 今は、すっかり惨めな気分でした。 ホテルの廊下を、とぼとぼ歩きながら 誰かがつぶやきました。 「ぼくたちのメッセージは 伝わったかな。」 「・・・」 誰も答えられません。 うつむきながら歩いていた 女の子が小声で言いました。 「お父ちゃん...許してくれるかな」 「・・・」 子供たちは、ホテルのロビーで待っている家族と 顔を合わせるのが、怖かったのです。 エレベーターを降りて、ロビーに足を踏み入れると、 小さな人だかりができていました。 何かに、みんなで見入っているようです。 やがて、大きな拍手が巻き起こりました。 人だかりの中で、お礼のお辞儀をしている 何度も繰り返している人たちもいました。 それは、子供たちの家族でした。 7人の子供は顔を見合わせました。 何が起きているのだろう?と 言葉にならない会話をしました。 ゆっくり人だかりに歩み寄っていきますが、 まだ、誰も子供たちには誰も気づきません。 「お父さん...」 「お母さん...」 子供たちの小さな声に気づくと、 みんなが、一斉に振り返りました。 次の瞬間、どの子供も、すぐに 両親のたくましい腕に抱きしめられていました。 「よくやった。」 「よくやったな。」 「立派だったよ。」 最初は、びっくりしていた子供たちも 緊張の糸が切れたのでしょうか、 声を上げて泣き始めました。 先程、カメラの前で 泣きながら訴えた少女が、 父親にあやまっています。 「お父ちゃん...ごめんね... もう会社の仲間と 話せなくなっちゃうね 仲間はずれになっちゃうね。」 子供たちは、自分たちがやったことが 原子力ムラの掟を破ることだと知っていたのです。 「何をばかなことを言ってるんだ。 父ちゃんが一番大切にしているのは お前たち家族なんだぞ。」 父親の顔を、少女は見つめ直して、 また大声で泣き始めました。 1年間、ずっと、親の前では泣くまいと がまんしてきた子供たちが、 はじめて心の底から泣いたのです。 静かなホテルのロビーに泣き声が響いても 誰ひとり怒る人はいませんでした。 みんな一緒に涙を流していました。 坊主頭の少年を抱きしめていた お母さんが言いました。 「あなたたちの立派なインタビュー。 ずっとここで みんなで見ていました。 ここにいる親切な人たちが 『お子さんたちは立派ですね』と パソコンで見せてくれていたの。 とても立派だった。 誇らしかった。」 母親が振り返ると、パソコンを持った 青年たちと目が合いました。 親たちは、晴れ姿をネット中継で見せてくれた 親切な若者たちに、深々とお礼のおじぎをしました。 子供たちも、一緒に頭を下げました。 若者の一人が、ゆっくりと拍手をすると 一人、また一人と拍手の輪が広がっていきました。 そして、ロビー全体が 大きな拍手でつつまれていったのです。 |


