今日は、助成事業の一つである
第9回SIDS国際会議市民公開講座に行ってきました。
これは、
NPO法人SIDS家族の会、日本SIDS学会が開催する「第9回SIDS国際会議」の中で、一般市民や医療・母子保健関係者などを対象に、SIDS(乳幼児突然死症候群)や、胎児期から乳児期の安全な子育て環境に関する周知啓発を行うセミナーです。
パシフィコ横浜で、本日の13:30〜17:30まで開催され、200人以上の参加者がありました。
私(山田)も、成事業の担当者としていろいろ勉強してきましたので、セミナーの参加報告書を兼ねて、自分自身が勉強になったことや興味を持ったことなどを中心にまとめてみました。
以下は、山田の文責となりますので、あらかじめご了承ください。
【講座名】
「胎児期から乳児期の安全な子育て環境をめぐって」
座長:仁志田博司(東京女子医科大学母子総合医療センター)
江藤 宏美(聖路加看護大学)
演者:『親の喫煙が胎児と小児に及ぼす影響』
遠藤 明(えんどう桔梗クリニック)
『母親の飲酒が胎児と小児に及ぼす影響』
久保隆彦(国立成育医療センター)
『母乳保育と母子環境』
堺 武男(宮城県立こども病院)
『舌小帯切除を含めた過剰医療の子育てに及ぼす影響』
長 和俊(北海道大学病院)
『良い妊娠環境とお産が及ぼす良い子育て環境』
山本詩子(山本助産院)
『カー・チャイルドシートの安全な使用法』
片岡幸代(アップリカ葛西株式会社)
『赤ちゃんの安全な睡眠環境』(日本語通訳付き)
ベルナード・キネーン(アメリカ小児科学会)
1.国際会議について
SIDS国際会議は、2年に1回開催される国際学会で、主催国のSIDSの家族会が中心となって開催される。今回、日本では初めての開催となる。参加者は25カ国400名以上。
SIDSは、欧米などの先進国では乳幼児の死亡原因の上位を占める。日本においては、1歳未満の乳児の死亡原因の第3位である。
SIDSは生活環境に気をつければその発生率を抑えることができる。
なお、SIDSについては、NPO法人SIDS家族の会のホームページに詳しい説明が掲載されていますので、そちらをご覧下さい。
http://www.sids.gr.jp/2.親の喫煙
受動喫煙はSIDSの危険因子である。
妊娠中に母親が喫煙していると、子供に受動喫煙の影響が出てくる。禁煙者と比較して小さく生まれてくる。また、将来の成長にも影響が出てくる。
大人の喫煙の場合、脳への影響は一部分だが、胎児の場合は脳全体に影響する。また、新生児の第一尿中からニコチンが検出される。
母親が禁煙していても父親が喫煙していると、受動喫煙で影響が出てくる。
父親の喫煙は、母親と胎児や乳幼児に影響を及ぼすので、止めるべきだ。
喫煙者の場合、妊娠判明後禁煙しても、妊娠がわかるまでの期間はタバコを吸うことになってしまう。
3.母親の飲酒
妊婦の飲酒について、昔はそんなに影響があるとは思われていなかった。
しかし、今では胎児性アルコール依存症(FAS:fetal alcohol syndrome)が認められている。発育障害を引き起こす。
妊婦のアルコールの取り過ぎは胎児に影響を及ぼす。
但し、母親のアルコール摂取量や民族による発生率の差など、まだ良くわからない点が多い。
日本国内においては、FASに関する報告事例が少ない。
国内において、胎児や乳幼児に対する水銀などの環境汚染物質や薬の影響への関心は高いが、アルコールやタバコの影響については関心が低い。
4.母乳保育
SIDSと母乳保育の関係については定かではないが、統計的に母乳児にSIDSの発生率は少ない。
母乳保育によって、@乳児との密着度、密着時間が多くなる、A乳児の睡眠からの覚醒反応がよくなる、B直接的なものではないが喫煙率が低いなどが、SIDSの発生率に影響しているのでは。
5.チャイルドシート
チャイルドシートを着用している場合とそうでない場合は、死亡・重傷率が約2倍の差が生ずる。
チャイルドシートを使用していても、正しく装着されていないなど誤使用が多い。
また、チャイルドシートは乳幼児の発達段階にあったものを選ぶ必要がある。
SIDSの危険リスクの一つに暖めすぎるというのがあるが、夏、駐車している自動車の車内の温度が上昇するのと一緒にチャイルドシートも熱くなる。チャイルドシートを使用する際は、十分に熱を逃がしてから使用する必要がある。
特にシートの表面の熱が下がっても、シート内の空洞部分の空気の熱が下がっていないことがあるので要注意。
6.乳幼児の睡眠
米国で仰向け寝キャンペーンを実施したらSIDSの発生率が下がった。
これまでの研究成果で次のようなことに気をつける必要がある。
○仰向け寝をする
○暖めすぎるのを避ける
○赤ちゃんの頭を毛布で覆わない
○一つのベットで一人
○固めのマットレス。椅子やソファでの睡眠を避ける。
○寝具を過度に多くしない。
但し、乳幼児と大人が一緒に寝ること(添い寝)の是非については、まだ多くの議論がある。
(ベルナード・キネーン氏の発表から)
以上、簡単にメモをしていたものをまとめてみました。
これから子供を生もうとしている人や、今乳幼児がいらっしゃる家族の方、あるいは将来子供を持ちたいと思っている人などの何かの参考になればと思っています。
今回助成事業を担当して思ったことは、タバコを吸わない、うつぶせ寝にするなどのことで、SIDS(乳幼児突然死症候群)の発生率を下げることできる、またそのためにはより多くの人にこの事実を知ってもらわなければいけないということです。
皆さんのお近くに、これから新しい命の誕生を待っている人がいたらぜひSIDSについて教えてあげてください。
福祉チーム 山田