景気回復傾向がみえてきたことと、2007年問題(=団塊世代の大量退職)への対応もあってか、今年の4年生の就職動向は以前と比べればかなり好転してきているようだ。しかし、こんな時期だからこそ、会社選びは慎重にしたいものだ。
この観点からいえば、企業の決算書を読むことは非常に役に立つ。この
ブログでも、以前、会社の決算書を読むことの重要性と、決算書の読み方の解説書を紹介したことがある。しかし、こうした解説書を読んだ上で企業の決算書を調べることは、若干骨の折れることだ。経済学・経営学を専門に学んでいる学生ならまだしも、文学や芸術系の学生にはちょっと厳しい。
そこで、今回から、何回かに分けて、決算書の読み方を少しずつ(気が向いたときに)簡単に紹介したいと思う。第1回めは企業の「安定性」、つまり企業がどの程度倒産しにくいか、を簡単に調べる方法を伝授する。
この記事さえ読めば、マトモな大学生なら図書館のデータベースを使って、企業の安定性についてそれなりに調べられるはずだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
アタリマエのことだが、企業を設立し運営するためにはお金が必要である。企業がお金を集めることを「資金調達」と言うが、資金調達の方法には大きく以下の2つの方法がある。
(1)自分で集める
主に、株式を発行して株主からお金を集める方法。集めたお金で企業を経営し、得られた利益の一部を「配当」という形で株主に還元する。利益が大きくなれば株主が得る配当も大きくなるが、利益がなければ配当も当然ゼロである。また、企業活動が長期にわたれば、過去に得た利益の蓄積が原資となって、新たな設備投資や販売投資が行われるようになる。
(2)他人から借りる
他人や他の企業から借金してお金を集める方法もある。企業に対するお金の貸し手の代表例は「銀行」。もちろん、借りたお金は利子をつけて返さなくてはならない。儲かろうが大赤字だろうが関係なし。
会計の専門用語では、(1)の自分で集めたお金のことを「資本」、(2)の他人から借りたお金のことを「負債」と呼ぶ。企業は「負債」と「資本」との合計金額を元手にビジネスを行うのだ。ただし、ビジネスというのは簡単にうまくいくものではない。儲かるときもあればそうでないときもある。借りたお金は貸し手の都合でいつ返済を求められるかわからない。だからなるべくなら、企業は負債を少なくしておいたほうが安定的である。借りた金が返せなくなれば「倒産」ということになってしまうのだから。
論理的には、集めたお金のうちの半分以上が「資本」であれば、その企業は「安全である」と言える。もし、(まずありえないことだが)すべての貸し手が同時に全額返済を要求しても、返済できるだけのお金が残っていれば倒産しないからだ。
集めたお金のすべて(「負債」+「資本」)のうちの「資本」の割合のことを
「株主資本比率(あるいは自己資本比率)」と言う。
「株主資本比率」が高ければ高いほどその企業は「安定的(=倒産しにくい)」であるが、一応の目安として、株主資本比率が50%以上であることが企業の安定性の目安となる。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
図書館のデータベースで
「eol DBタワーサービス(有価証券報告書)」というのがある。ここで見てみたい企業の名前を検索画面に入力し、貸借対照表を見よう。
トヨタ自動車の貸借対照表を見ると、同社の負債合計は
3,013,181(百万円)、資本合計は
6,057,810(百万円)である。したがって、株主資本比率は、6,057,810÷(3,013,181+6,057,810)=
0.668となる。トヨタ自動車について言えば、集めたお金のうちの3分の2が自分で集めたお金である。さすがは優良企業、安定感ばっちりである。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「eol DBタワーサービス(有価証券報告書)」には、条件を絞り込んで企業を検索する機能もある。実は、トヨタほど有名でなくフツーの学生は誰も知らないような企業でも、トヨタ以上に安定感ばっちりの企業はいっぱいある。時間があるときに、こういう企業を探してみるのも面白い。
図書館は学生諸君の勉強を支援するだけでない。図書館に所蔵されている書籍・雑誌やデータベースは卒業後の進路を考える目的でも利用可能なのだ。図書館は、頼りになるかもしれない......。