空き地に、一台の軽トラックが入ってきた。ピーマン、人参、なすびなど、車体には色とりどりの野菜が描かれている。仙台の社団法人ReRoots(リルーツ)のプロジェクト、若林区とれたて野菜お届けショップ「くるまぁと」の移動販売車だ。
ReRootsは、東日本大震災直後の2011年4月に発足。大学生主体で、津波被災が大きかった若林区を中心に復興支援、地域おこしなどの活動に取り組む。
毎週土曜の午後、七郷中学校脇の空き地と、荒井東公営復興住宅敷地内の2ヶ所に、店を出す。扱うのは、被災を乗り越え農業を再開した地元農家の野菜だ。
この日は大学生6人が売り子を務めた。開店からほどなく客が集まり、一輪車に乗った女の子が大学生と遊び始めた。
「生産者、消費者双方の意識が変わる必要があると思うんです。野菜の向こうに人が見えれば、生産―販売という仕事に、新しいつながりと価値が生まれる」。大学2年生の大里武さん(19歳)は語る。
活動日の午前中に生産者を訪ね、集荷する。野菜の特徴や栽培の労苦などを聞き、買い求める人に伝える、客の反応を、生産者に毎週レポートしている。
出荷農家の一人、佐藤久一さん(60歳)は農薬の使用量を全体的に減らした。
「コミュニティ作りは、まず顔見知りになることから始まる。つながりが生まれ、地域の人が地元の問題を自分たちの力で解決するようになったらうれしい」
14年8月からの活動で一番嬉しかったことは「店頭で震災後初めて再会したおばぁちゃんたちの笑顔を見たこと」と振り返る。
大きな痛手を受けた被災地を、若者たちの小さなトラックが駆け回る。野菜を通してかける橋が、地域の力を引き出そうとしている。
▲販売車の前に立つ大里さん(右から2人目)らReRootsのメンバー。生産者と消費者をつなぐべく、手にした野菜には生産者の名を冠している。
(仙台市青葉区 前川珠子)