東日本大震災の被災地に思いを寄せて現地を訪れる外国人たち。彼らが言葉の壁を越えて状況を正しく理解できるように、被災した人の言葉を丁寧に汲み取り通訳しているのが、「仙台ボランティア英語通訳ガイドグループGOZAIN(ございん)」の面々だ。副代表の関訂(せきただし)さん(74)=青葉区=は、「事実に基づいた正確な通訳を心掛けている」と伝えることに慎重な姿勢を見せる。
「ございん」は地元の方言で「どうぞおいでください」の意味。2007年の結成以来、50カ国以上の在日外国人との交流会で各国の文化を学び、観光で海外から仙台や松島を訪れる人たちを案内してきた。メンバーは20−70代の男女50人。「市民の国際親善」を第一に、英語に自信がなくても誰でも参加できる。
被災地での通訳を始めたのは発災間もない2011年4月。外国人ジャーナリストの通訳ガイドを依頼されたのがきっかけだ。大きな津波被害を受けた仙台市若林区の荒浜地区や市内の仮設住宅を巡り、話を聞いた。家や家族を亡くして辛い思いをしている人に「将来への不安はあるか」と問う外国人の質問も、通訳してそのまま伝えた。「心ない質問で、被災した人をさらに傷つけた」と関さん。当時は「伝える」という使命感でいっぱいで、配慮に欠けていたことを今でも後悔している。
震災から4年過ぎた今、観光と被災地訪問の通訳ガイドの割合は半々。観光とはいっても、「震災を抜きに語ることはできない」のが実情だ。関さんは、被災地を案内する仲間に、線香を必ず持っていくように伝えている。外国人にも「被災した人の立場に立ち、慰霊の気持ちを忘ないでほしい」と伝えてから現地を訪れ、一緒に手を合わせてもらっている。
「まだまだ復興したとは言えない状況。日々変化していく被災地の状況や人々の心境に心を配りながら、伝え続けなくては」。被災地と世界の人々をつなぐ通訳は、心の壁をも取り払いながら、地域の復興に寄り添い続ける。
(佐藤莉乃 仙台市青葉区)
▲2014年11月、津波被害を受けた仙台市宮城野区南蒲生地区を外国人に案内する関さん(左)