「親子で劇場に行くのって本当に大変。そこを変えていきたい」。
宮城県に拠点を置く劇団「おはようシアター」代表の川熊美貴さん(33)は親子がもっと舞台芸術に触れることができるように活動している。
上演を行うのは、県内の児童館や幼稚園、保育園など。
子どもたちの生活リズムに合わせると、自然と上演は午前中になるから「おはようシアター」なのだ。
劇団は東日本大震災の年の2011年6月に川熊さんを中心とした3人のメンバーが結成した。今年で活動5年目。
最初8人だったメンバーは、現在は12人。20代から50代までが所属している。
被災したとき、避難所で小さな子どもを連れた母親たちが居心地の悪そうにしている姿が心を打った。
「子どもが騒ぐのを必死に抑えるお母さん、そのストレスが一番辛そう」。
当時、児童館職員をしていた川熊さんは、避難所など、多くの人の集まるところに親子の心休まるところがないという現実に突き動かされました。
「演劇に何ができるだろう」。と考えて始まったのが「おはようシアター」だった。
まずは避難所生活を続ける親子たちを元気にしようと、各地の避難所を回り上演を続けた。
おはようシアターの特徴は、様々な子どもたちが楽しめる工夫をしていることだ。
結成当初からの演目、「おはようシアター☆おもちゃ箱」は、姫やカエル、魔女などの役者が舞台から飛び出して、客席の子どもたちとふれあいながらストーリーが進む。
子どもの年齢や性別に合わせて、小さな子どもにもわかる手遊び、わんぱくな子が思い切り動ける体操遊びなどを組み込み、多くの子どもが楽しめる工夫をしている。
役者とのふれあいを通し、歌ったり踊ったり大喜びする子どもの姿を見て、びっくりするのは大人たちだ。
「静かにしなさいと言わなくても上演時間中ずっと集中するとは思わなかった」。
ある児童施設の先生は驚きを隠せない。
母親が子どもの手を引いて行ける公園のように、劇場が親子が気兼ねなく楽しめる場になったら。おはようシアターは今後も活動を続けていく。
▲「おはようシアター☆おもちゃ箱」上演の様子。役者と子どもが一緒に踊り出す。
(仙台市青葉区 原 知哉)