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日中関係と日本の将来を考えさせられる好著 [2012年07月23日(Mon)]



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吉田重信著『不惑の日中関係へ』は「読み始めたら止まらない本」ではない。確かに途中まではぐいぐい引きこまれる。しかし、そのあとは「遅読」になってしまい、われながら困った。

はじめにお断りしておくが、著者は、恩師・橋本祐子先生の一門の兄弟子ゆえ、今回の小欄には敬意と遠慮と、それでも譲れない後輩の意地とが入り混じって、分かりにくい点があるかもしれないがご寛恕いただきたい。

本書の最初の部分はベテラン中国ウォッチャー(元キャリア外交官)の中国紀行文のようで、吸い込まれるように、あるいは鞄持ちでもさせていただいているような気分で快調に読み進むことができた。それなのに、後半からは、「◎」「△」「×」などが付きはじめ、「ハッ」と気付いたり、「ヒーッ」と悲鳴を揚げたり、「フー」と長嘆息し、「へへぇ〜」とひれ伏したり、「ほう」そうだったのかと感心したりするものだから、読みがアンダンテからさらにはラルゴになる。

著者は人生において私より5年ほど先輩だが、中国に関する知見の大きさ、高さ、深さ、とりわけ愛情は50年分ほどの差があり、若いころから一目も二目も置いてきた、日ごろ尊敬する人であり、多いに教えていただいてきた人である。

それゆえに真剣に正面に据えて読むものだから、時々、抵抗したり、立ち止まってしまうのだろう。

ただ、あえて小さい声で言わせてもらえれば、「これまでの日本人の中国人に対する知識や理解は、主として書物(漢籍)によるものであり、また、左右のイデオロギッシュな尺度による歪みもあった」、これからは「中国の実態について、直接的な見聞や調査等に基づく知識の習得や研究に力を入れるべきである」(P.217)ということには賛成するが、そのためには中国がより情報を開示し、より自由な研究や調査を認めるべきだという一節がほしい、と思ってしまう。さもなくば「中央電子台と人民日報という21世紀の漢籍」が主たる情報源になってしまうではないだろうか。

このあとに、「中国を日本の味方にするか敵にするかは、日本の出方にかかっていると言っていい」「北方4島の日ロ共同管理方式も夢ではなくなり、日ロ関係が一歩前進するかもしれない」とまで書かれては、畏れながら「この外交官はどこの国の人だったっけ?」となってしまいかねない(平身低頭!)。

私は、4島一括返還を貫くべきだと考えているし、それからみれば、日ロ共同管理方式の夢などは見たくもない。また、「われわれは親米であるのなら親中でもなければならない。逆説的に言えば、かつての日本のように、反中であることを望むなら反米でなければならない。それが独立国日本としての矜持である」となると、これでは同盟国アメリカの立場があるまいと思ってしまう。

これらはおそらく私の読解力の不足からくる早とちりか誤解であろう。その点はお詫びしたい。

しかし、とにかく1つひとつの文や章が読者をして考えさせられる本である。勉強させられる好著である。特に最後に、日本の将来への指針とすべき点を具体的に列挙しているのがすばらしい。個人的な賛否は別としてどの項目も若い人の議論のテーマとしては最適なのではないか。周辺の若手研究者と大いに議論する素材にしたいものだ。願わくば、若い人たちに読ませるべく、3部作の新書にでもしてほしかった。

元外交官の書というのは、自慢話か、肝腎の部分を隠したり、あちらこちらに協力を遣いすぎたりするものが多い中で、膨大な知識と経験に裏打ちされた率直かつ建設的な提言になっているのはすばらしい。

また、大きな章立てで、「中国よ、かくあれ」と力説してほしかった。