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そっくりさんの名歌 [2008年02月02日(土)]






「早春賦」。挿画は石田良介画伯の特段のご厚意で
掲載させていただいております。禁無断転載。







 吉丸一昌の『早春賦』の詞に曲をつけたのは中田章(1886〜1931)もまた東京音楽学校の教授。韓国の皇太子に唱歌を指導したという話はあまり知られていないが、前回述べたように、『夏の思い出』『雪の降るまちを』『小さい秋みつけた』の中田喜直(1923〜2001)の父といえばだれでも納得する。

『早春賦』を聴けば私はウォルフガング・アマデウス・モーツアルト(1756〜91)最晩年(『魔笛』『レクイエム』を作曲した年)に作曲したピアノ協奏曲第27番(K595)』の第3楽章と『知床旅情』(森繁久弥作詞作曲)を思い出す。

 出だしがあまりに似ているからだ。前者は『Sehnsucht nach dem Fruehling』の歌曲となり、その原曲を青柳善吾が『春へのあこがれ』の題で訳詞し、1890(明治23)年発行の『明治唱歌』に採録されている。もちろん中田は知っていたはずだ。

 同じように、『上を向いて歩こう』(永六輔作詞、中村八大作曲)はこれまた導入部がそっくりなベートーベン作曲ピアノ協奏曲第5番『皇帝』を連想させる。
10年余り前、ベトナムの首都ハノイで、私は娘と『皇帝』を聴いたことがある。

 オーストラリアのピアニストとできたばかりの交響楽団によるものだったが、驚いたのは1911年にフランスが建てたコンサートホールと楽器。

窓を開けて暑さをしのぐので、コウモリや蚊が飛び交い、木管楽器は紐や輪ゴムをフル活用して鍵をつないでいる。

その様子を「ハノイで聴いたベートーベン」と題して『文藝春秋』に書いたが、その後、日本の援助で楽器は大部分新調されたという。こういう、文字通り心に響く援助は大いに拡大したいものだ。

 もう一つ、これはもう完全に元歌のあるのがザピーナッツの『情熱の花』、もちろん、ベートーベンの『エリーゼのために』からの編曲である。

 自動車で通勤していた一昨年の暮れまで、確か文化放送だったかと思うが、「名曲そっくり集」のようなのを、聴取者(リスナー)から応募してもらうという、興味深い番組があった。

 ときどき、「えっ!」とか、「参ったなぁ」というのがあり、とても楽しかった。