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『雪の降る街を』は童謡か [2006年04月26日(Wed)]





2004年大晦日の紅白歌合戦で、バイオリニストの葉加瀬太郎が中島美嘉が歌う『朧月夜』(高野辰之作詞、岡野貞一作曲)を「この国に古くから伝わる」曲と紹介した。これはいささか腑に落ちない。いうまでもなく、この曲は1914(大正3)年に文部省唱歌として発表されたものであり、「この国に古くから伝わる」というのは、少なくとも数百年以上前から伝承した曲をいうのではないか。

一方、日本初の音楽博士・藍川由美が、日本の歌は、「唱歌、童謡、歌曲」などの定義があいまいだという問題があるとし、「《赤とんぼ》や《からたちの花》といった作品を、ある人は童謡と呼び、ある人は歌曲と言う。中には唱歌と呼ぶ人も居るかもしれない」としている(『これでいいのかにほんのうた』文春新書)。それであっても、日本の歌を大別することは出来るし、歌全体の理解を進める上でも決して無意味なことではないと考え、まず、私自身の次の体験をご紹介したい。

NHKラジオ第1放送に「ラジオ夕刊」というなかなかの人気番組がある(週日の午後6時5分から)。5、6年前のある日のこと、政局に関わる緊迫した報道の後、キャスターが気分を変えようと「ではここで、童謡『雪の降るまちを』(内村直也作詞、中田喜直作曲)をお送りします」と言った。

私はこの歌を童謡とすることには強い違和感を覚えたので、運転中だったが、携帯電話で(その頃は道交法でこれが許されていた)直接、スタジオに抗議した。何度も出演したことのあるスタジオなので、あまり違和感がなくダイヤルできた。

「はい、おっしゃることはわかりました。いろいろ解釈がありますので、ご意見として伺っておきます」。

正直言って驚いた。あっさり引き下がると思った私が甘かった。これではならじと、こちらも、運転そっちのけ?で「理論武装」に取り掛かった。

まず、歌詞。1〜3番まで同じメロディーのところに「遠い国から落ちてくる この想い出を この想い出を いつの日か つつまん」「ひとり心に満ちてくる この哀しみを この哀しみを いつの日かほぐさん」「誰も分からぬわが心 このむなしさを このむなしさを いつの日か祈らん」とある。こんな屈折した詩情が子供に解るはずはない、これが童謡の歌詞といえるものか、との思いに至った。

次に旋律。
イ短調で始まり、嬰ヘ短調に転調し、さらに次々に転調を重ねて、幻想的ともいえる独特の雰囲気をかもし出している。童謡にも『青い目の人形』(野口雨情作詞、本居長世作曲)や『ペチカ』(北原白秋作詞、山田耕筰作曲)のように転調の効果を巧みに使ってできた名曲もあるが、『雪の降るまちを』ほど、錯綜した転調を行っている童謡はまずない。戦後の歌でありながら、歌詞の中に文語の表現もある。

よ〜し、とひと声唸って、今一度、NHKに電話した。

「『雪の降るまちを』が童謡であるかないかは人によって違うと思います。生放送中ですので、これ以上は迷惑です。切らせてもらいます」。

 しかり、ごもっとも。ご迷惑をおかけしました。NHKドノ。

しかし、その後もおそらく全国の聴取者からかなりの数の抗議電話があり、専門家に訊いたりして内部調整したのであろう。翌々日の放送で「一昨日の放送の中で『雪の降るまちを』を童謡と紹介しましたが、童謡ではありませんでしたので訂正します」とのアナウンスがあった。注意深く聴いたが、「なぜ?」という理由の説明もなかったし、「では『雪の降るまちを』は音楽のどのジャンルに入るのか」という話もなかった。

『雪のふるまちを』は私の愛唱歌の一つである。童謡や唱歌ではなく、すばらしい「日本の歌」、あえていうなら戦後の日本を代表する抒情歌の1つだと思っている。



写真は、林試公園(目黒区)で遊ぶ子供たち。
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コメント
吹浦様
 昨日(06年11月4日)NHKテレビの「みんなの童謡」で、「雪の降る街を」が放映されておりました。
 そのため、貴見と同じ趣旨のことをブログ(一葉無限)とバンコク混声合唱団HP掲示板に書きましたところ、貴HPのことを教えてくださる方があり、訪問させていただいた次第です。
 同じ議論を引き起こすNHKの体質は、受信料負担者による議論の必要がありそうですネ。
Posted by: Leafman  at 2006年11月05日(Sun) 12:00