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「平和」と「和平」 [2006年03月29日(Wed)]





白川 静『字通』(平凡社)に拠れば、【和】は、禾+口から成る。禾(か)は軍門の象(かたち)。口はさい(この文字は、Uのなかに横一を引く)。盟誓など載書といわれる文書を収める器のこと。軍門の前で盟約し、講和を行う意。和平を原義とする字である。

やわらぐ、講和する、友好の関係となる、むつまじい、やすらか、たのしむ、なごむの意。

また、【平】は、于(う)+八。于は、金文の字形は手斧を用いる形。手斧で木を削り平らかにする意。平定する、たいらか、たいらかにする。やすらか。おだやか。

昨日も書いたように、日本語の「平和」を中国語では普通、「和平」という。「和平五原則」「日中和平友好条約」「和平共存」「国連和平維持活動」・・・。

小学館と北京・商務印書館の共同編集による『中日辞典』(1992年)によれば、中国語の「平和」には名詞の用法がないが、「和平」には名詞の用法があり、「戦争のない状態」をさすとのこと。「平和」の使用範囲は狭く、人の性格・言動や薬物の性質にしか使わない、形容詞としての「和平」は使用範囲が広く、それ以外に環境・雰囲気・状況などに広く用いられるという。日中両国語に通じる友人・楊桂香さんは「平和」は単に静かで昂奮しない状況を指す言葉で、あまり使わないと言う。

日本語の「平和」には、狭義には国家間のより長期的、継続的、安定的な状況を表す「peace」や 個人の心の静穏や社会の安定を表す「calm」のニュアンスが大きいの対し、「和平」には国家間や交戦団体間の「交渉の妥結」「和睦」「講和」の意味が強く、それまで戦火を交えていたものが「停戦(ceasefire)」し、仲良くすることをめざすといった一時的であっても1つの決着点や終着点を示すニュアンスが強いのではないか。また、日本語で「平和」は名詞と形容動詞、「和平」は名詞のみの使用であるといえよう。平和は「戦争の不在 absentia belli」、和平は「協定の締結pactum」ではないか、という考え方もある。

日本語の語感から考えると、中国でもっぱら「和平」なのは、古来あまりに戦乱が続き、継続的な「平和」の時期が少なかったからなのか。1つの単語からさまざまな想像が広がって行く。



 CM:拙著『平和の歴史』(光文社新書)をご参照ください。

「実相寺の桜」の挿画は、石田良介画伯のご厚意で掲載させていただいております。
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