桜と雨と涙とため息 [2007年03月30日(Fri)]
剪画は石田良介画伯の特段のご厚意で掲載させていただいております。禁無断転載。 春雨のふるは涙か桜花 散るを惜しまぬひとしなければ これは『古今集』所載になる六歌仙の一人・大伴黒主の歌。今日は春雨、桜の花が散らないように願いたいもの。 しかし、この歌はなかなか巧みな擬人化ですね。 国文学者は、 こよひねてあふみへゆくとみし夢の かなしと袖にふるは涙か 源信明 あかなくにかへる雲井に春雨の ふるは涙か雁ぞなくなる 俊成卿女 曇る夜の月ををしまぬ人はなし ふるは涙か秋のむら雨 長嘯子 を黒主の和歌の派生歌としてあげますが、俗なる筆者は「出るは涙かため息か」という歌がこの歌から本歌取りしたのかもと思いをめぐらせてしまいます。もちろん、真偽は知らず、です。 |