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「驚きへの気付きの木」の芽吹きと大空への梢(こずえ)の広がり [2006年07月15日(Sat)]

 今回は、これまで書いてきた「驚きへの気付きの木」が芽吹き空に向け梢を伸ばす思考の生育過程に触れてみたい。

T 「不思議・可能性発見の公式」を発見するまで 
 5月の数学トークイベントでの電卓を使った数字遊び。1〜9の数字が5を中心にしてマトリックスで並んだ算盤で、マトリックスの周囲の数を3つずつ最後の数字が重なるように組み、いろいろな数字を出発点に1周ずつ足して比べてみると・・・・!。 普段目にする電卓から現れた結果の意外さ、驚きから、講師の方が言われた、「"アレ!"、"なぜ?"から不思議が"見えてくる"」との話が印象に残った。

 一方、中小企業の上場セミナーで、人材発掘会社の社長さんが、「人材=能力(skill:0〜100)×やる気(0〜100)×考え方(-100〜+100)」との式の話しをされた。この式の意味するところは、大型船の大企業と異なり、中小企業はチームパートナーで操船するヨットであり、この式の3つの要素、特に考え方が合う者同士の"操船"で始めて人材力が発揮されるということである。また、私は、農林水産物の輸出支援の仕事をしているが、香港での贈答用に、手塩を掛けて栽培し冷蔵輸送をした高級果物が、空港税関での検査の間、亜熱帯の現地の常温で放置され、傷んでしまうという話しを聞いていた。これらのことから、世の中の事象は、項目間の累積的影響を表現できる「掛け算」で表すことによって、うまく説明できる場合が多いのではと考えた。掛け算の式で、@最初の項目で無(ゼロ)から数字を立てることの難しさ、A立てた後に項目同士の掛け算による可能性の膨らみ、Bどこか1つでもゼロ(またはマイナス)があると、全体が無に帰する(またはかえってマイナスとなる)怖さ(リスク)、の3つを表すことができる。@は、「アレ!」と驚きに気付くことの難しさ(目に映っていることでも気付くことの難しさ)、ビジネス発想・閃きの産みの苦しみ、Aは、気付いた後に思考・発想・創造が膨らむ、またビジネスが広がる可能性の大きさ、Bは、ビジネスリスク(傷んだ高級果物を販売すると、贈答用のブランドイメージが傷つき、顧客不満足から将来収益のキャッシュ・フローの掛け算までマイナスにしてしまう)、とみることができる。

 これらのことと、「"アレ!"、"なぜ?"から不思議が"見えてくる"」との話から、「不思議・可能性発見の公式」:「アレ!×why(どうして)?×もしかして?・こうしたら?=不思議・可能性の発見↑」を思いついた。


U 「アレ!」の"驚きの種"の構造について
 次に、全ての端緒となる「アレ!」とは、どんな構造なんだろう、それが湧き出す仕組みが分かれば、より「アレ!」にぶつかる機会も増えるだろうと考えた。「アレ!」だけでは、小さな種を見ているようで、その中身が分からない。そこで、種を虫眼鏡で拡大してみるように、「アレ!」を文にしてみると、「○○のはずが△△」と(○○=予想または予想外・予想もしていない。△△=観察・認識結果)となっていることが分かった。この構造で「アレ!」と驚きに気付いて、「不思議・可能性発見の公式」を使う場面を増やすには、この"逆接の関係"を発見することが鍵となってくる。そして、この逆接の関係を立てるには、何よりもまず@「予想・仮説」(場合によっては予想外・予想もしていない)を立てることと、そして、Aこの関係の場面に出くわしたり(出くわす機会を多くしたり)、思考で場面を想定したりすること、そのためにB情報収集のアンテナを伸ばし感度を高め、人の着想・視点に学び、観察眼を磨いてメモ取り等で記録・知識を大事に蓄えてゆく、物事への謙虚な学びの姿勢が大切となってくる(この姿勢づくりの方法論については、別の「湧き水」で紹介します)


V 「アレ!」の驚き発見の具体的方法について:「驚きへの気付きの木」の"ロジック ツリー" 
 この「アレ!」の構造・仕組みに加えて、この驚き発見の具体的方法としてどのようなものがあるか、それも分かればより「アレ!」にぶつかる機会も増えるだろう。その時、昨夏のクリティカル・シンキングの企業研修セミナーで、「ロジックツリー」について参加者でグループ・ディスカッションしたことが思い出された。このロジック・ツリーとは、1つの概念を出発点に抽象度の高い概念から低い概念まであらゆる可能性を挙げる手法の1つで、ビジネス思考・創造・発想法でよく用いられている。セミナーでは、売上げが落ちているコーヒーチェーン店を立ち直らせる手段について、まず「単価」、「販売数量」など抽象的な概念から、「セット販売」、「セールス」など具体的な概念・販売手法を連想ゲームのように出し合い、ポストイットを木の幹・枝に葉を付けるように模造紙に並べていった。

 また、思考・創造法についての銀行の企業研修セミナーでは、講師の方が、思考は「視点の設定と移動」に抽象的に集約できると話され、多種多様な思考を抽象度の高い概念に高める高次の視点が印象に残っていた。また、「知識創造企業」(野中郁次郎他著、東洋経済)で、「暗黙知」(客観的に言葉にしにくい主観的な経験知:自転車の乗り方など)、「形式知」(客観的・論理的な知識)間の相互変換の中から知識が創造されるとの主張等を知り、日頃から論理的思考に加えて、主観・感覚・感情の大切さ、論理的思考とこれらとの相互作用から何か知識が創造されるとの考えを抱いていた。

 そこで、「アレ!」との驚き発見の(1)具体的方法を"ロジック・ツリー"で、(2)その"根本から大本(おおもと)で分かれる幹"を、@「論理的予想」(この幹の大本の1つは、「視点の設定と移動」)とA「感覚的な驚き」で、(3)日頃私が「アレ!」と思っていること(例えば、駅の端に転がっている空き缶など→誰かが転んだら危ないのに駅員・乗客の誰も拾わない、そもそも飲んだ缶を放置する)を具体例の"ポストイットの葉"として、表すに至った。


W 「驚きへの気付きの木」の芽吹きと大空への梢(こずえ)の広がり 
 このようにして、「驚きへの気付きの木」が芽吹き、幹から枝を伸ばし、大空へ梢(こずえ)が広がり、葉を付けだした。この「驚きへの気付きの木」は、「不思議・可能性発見の公式」の重要な端緒となり、思考の普遍的なきっかけとなるものだけに、一断面だけの「ロジックツリーの平面図」だけで済むものではなく、あらゆる思考の可能性を探って"立体的に"幹・枝・梢を伸ばし葉を付け、さらにそれぞれの幹・枝・梢・葉の間の関連も考えていく必要がある。

 そのための1手段として、個性豊かなブログの見聞・交流が水脈となり、このツリーがより生育するきっかけになると考えている。また、当ブログでの"湧水のポリタンク汲み"(ロジック・ツリー等のファイルのダウンロード)で、あちこちでこの「驚きへの気付きの木」が芽吹き、苗木となりブログ社会で成長していけば幸いだと思っている。

白石裕隆
「アレ!」の驚きの"気付きの木"(logic tree)。不思議・可能性発見のために、驚きへの気付きの機会を↑するには? [2006年06月04日(Sun)]

 前回紹介した「不思議・可能性発見の公式」:「アレ!×why(どうして)?×もしかして?・こうしたら?=不思議・可能性の発見↑」では、掛け算の式で表すことによって、「アレ!」と驚きに気付くことの難しさ(目に映っていることでも気付くことの難しさ)と、気付いた後に思考・発想・創造が膨らむ可能性の大きさを示唆した。そして今回は、「アレ!」と驚きにいかに気付くようにするかというこの公式の核心について考えてみる。
 この「アレ!」の構造を分析してみると、「○○のはずが△△」と(○○=予想または予想外・予想もしていない。△△=観察・認識 結果)となっている。そこで、「アレ!」と驚きに気付いて、「不思議・可能性発見の公式」を使う場面を増やすには、この"逆接の関係"を発見することが鍵となってくる。そして、この逆接の関係を立てるには、何よりもまず「予想」(場合によっては予想外・予想もしていない)を立てることと、そして、この関係の場面に出くわしたり(出くわす機会を多くしたり)、思考で場面を想定したりすることが重要となってくる(この予想は、式の後の項での問い掛け、仮説設定とは別なもので、不思議・可能性発見の最初の端緒となるものである)。
 この逆接の関係の機会を↑するために、この機会の場面の可能性を考えてみる。その際、網羅的にこの可能性を挙げるため「アレ!」の構造をロジック・ツリーで挙げてみた(よろしければ汲み水をしてください)。ロジック・ツリーとは、1つの概念を出発点に抽象度の高い概念から低い概念まであらゆる可能性を挙げる手段の1つで、ビジネス思考・創造・発想法でよく用いられている。

ALE!-logictree.doc

 この「アレ!」の"気付きの木"は、「論理的予想での予想外」と「感覚的な驚き」の2つにまず大きく枝分かれする。そして、前者は『Tあらゆる立場での視点の「設定」+U「変化」((1)設定した視点の移動(2)考察対象に変化を発生(変換)させる)との高次の抽象度の予想法を基に、予想を立てるための各種方法が枝分かれしてくる。一方、後者も幾つかの場面の枝分かれを設定することができる。そして、それぞれの枝について私の体験や講演・セミナーでの話しを葉っぱ(例)として付けてみた。このロジック・ツリーは、枝分かれの連鎖としているが、実際の「アレ!」の場面では、論理と感覚、各種枝分かれ間の方法が重なったり密接に関連していたりする。
  このツリーは、「不思議・可能性発見の公式」の重要な端緒となり、思考の普遍的なきっかけとなるものだけに、今回のツリーで全て枝を挙げきったり、枝と枝との関係を説明し尽くすことは難しい。今後、この泉で水脈を広く深く探していく試みの中でツリーの充実を図っていきたい。また、それぞれの枝について、大空に向けていろいろな方向に伸ばし、葉を付けていきたい。 
 この「アレ!」のロジック・ツリーの湧水は、ポリタンクに汲んでお持ち帰りの上(ファイルのダウンロード)、日常生活で使ってみてください。新しい枝や葉っぱを見付けたら、教えてください。
不思議・可能性発見の公式 [2006年05月28日(Sun)]

 最初の湧き水は、「不思議・可能性発見の公式」。「アレ!×why(どうして)?×もしかして?・こうしたら?=不思議・可能性の発見↑」という式である。この式は、「数字遊び」(算遊記)のトークイベント(注1)で、講師の方が数字遊びで「アレ!」と驚きに気付いて「why?」と思った途端、「目に映っていただけで気付かなかった」数字の不思議が"見えて"くるという話(注2)をされたことから発想したものである。
 この公式を使えば、数字遊びや自分の頭の中はもちろん、回りの光景・場面やいろんな人の考えの中に、思考・発想・創造の泉を見付けることができる。
 この公式は、足し算ではなく掛け算になっているところがミソ。最初の気付きの「アレ!」=0なら「Why?」と思う可能性がいくら大きくても、式全体は0になってしまう。でも最初の「アレ!」でごく小さな数でも立てることができれば、後の項の膨らませ方次第でいくらでも不思議・可能性発見の機会が高まることとなる。この掛け算の式は、「アレ!」と驚きに気付くことの難しさ(目に映っていることでも気付くことの難しさ)と、気付いた後に思考・発想・創造が膨らむ可能性の大きさを示唆している。
 私が最近、「アレ!」と驚きに気付いた中から例を4つ挙げる。@「数字遊び」(算遊記)のトークイベントでの予想もしない計算結果。A明治大学近くのセブン・イレブンで、学生の利用が多くいつも弁当が売り切れ(寸前)なのに棚が狭く、隣のアイスクリームケースは冬でも満杯(何度、「アレ!・残念」と思ったことか)。B通勤・通学路の東武鉄道「北千住駅」他でホームの端によく空き缶が転がっているが、駅員・利用客の誰も拾わない不思議(「アレ!、気付かずに足を乗せて転んだら?」)。C日本科学未来館(東京都江東区・青海)の「脳!内なる不思議の世界へ」展で、蜘蛛や蟻の微小脳(minimal brain)から人間まで生物の進化に沿って脳標本が展示されていた。昆虫のごく微小な脳だけをどのようにして取り出したのかも不思議だが、建物近くのベンチでおにぎりを食べていた時、蟻の巣が目に映って「アレ!」と驚きに気付いた。蜘蛛や蟻のように人間が蜘蛛の巣を架けたりトンネルを掘ろうとしたら、高度な知性(力学・強度計算・設計)を働かせる必要があるが、あの小さな脳(豆粒のかけらより小さい)に知性が宿っているものなのか?。本能的・機械的にできることなのか?
 このように、この公式を意識して使えば、不思議・可能性発見が↑となる。トヨタ生産方式で「何でもwhyを5回繰り返せ」と機械的にするのも有効だが、自身で「アレ!」と驚きに気付く機会・可能性を高めた上でwhyを5回繰り返したり、ビジネスhow toの仮説設定・実行・検証(PDCA(plan・do・check・act)サイクル)を行なった方が、より自身の体感・経験に根ざした実感のこもったwhyや仮説設定・実行・検証が可能となり、またその分思考・発想・創造の可能性が広がる。
 「不思議・可能性発見の公式」の湧水は、ポリタンクに汲んでお持ち帰りの上(ファイルのダウンロード)、日常生活で使ってみてください。何かgoodな発見がありましたら、教えてください。

 「アレ!」と驚きにいかに気付くようにするかというこの公式の核心については次の湧き水で。

(注1)'06,5/4(木) ジュンク堂書店トークイベント(池袋)
「Why?数の不思議あそび」北川恵司先生著 サイエンティスト社
 読者が考えながら読み進めるよう、「付かず離れず」で書き方を工夫した、いろんな数遊びの問題が載っている。
(注2)
数字遊びの例:
 普段目にする電卓。1〜9の数字が5を中心にしてマトリックスで並んでいる。このマトリックスの周囲の数を3つずつ最後の数字が重なるように組んで任意の数字から1周、足してみる。7から始めて789+963+321+147=?。今度は2から始めて214+478+896+632=?。同様に他の数字から始めたり、真ん中の5を一筆書きの要領の順で同様に組んで足してみたり。みんな大きさの違う数字の足し算だが、「アレ!」ということが起こる。そして、この公式の出番が出てくる。
思索の泉・開泉 [2006年05月23日(Tue)]

本湧水の趣旨
 個々人の情報発信から、知と創造のネットワークの形成が期待されるブログ社会の今日、金太郎飴ではない各ブログの個性の輝きが、ネット世界での話題の質の向上や個性の連鎖の輝きをもたらし、ひいては人々の心の糧の増加や社会の発展に繋がることとなる。ネット社会は現実社会での出来事・思考を反映する鏡でもある以上、このネットの連鎖の輝きを増すには、現実世界での各人の日常体験・現象や様々な人との交流・対話における思考を、鋭い洞察で照らす必要がある。
 この洞察には、手掛かりとなる思考・発想・創造法を道具として利用するのが有効で、その上でさらに各自の明かりを開発・改善したり、ネットで共有を図っていくことが望まれる。
 そして、この洞察の手掛かりとなる思考・発想・創造法について、単にhow to・マニュアル物として伝えるのではなく、それを思い至った背景、体験・感覚の状況説明、その思考の過程や本質、さらにはその閃き自体の本質の探究、他の分野・思考法等への応用可能性の考察(例えばビジネス思考法を技術開発手法に応用するなど)を伝えることによってはじめて、他の人に説得力と応用可能性のある情報伝達となる。
 ところで、ネットで「思考・発想・創造法」等でブログ検索(日本語)をしてみると、ビジネスhow toもの、特定分野(将棋等)が散見されるだけで、上記趣旨の情報を載せたブログは見あたらない。
 そこで、自身の考えを整理し新たな考えを汲み出すことはもちろん、先述のネット社会におけるブロク発展等への一助(∞の1くらい?)となることを期待し、木漏れ日を受け淡く輝く本ブログを開泉する。