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週末の災害ボラ報告 in 石巻(下) 〜 カステラ 〜 [2011年04月20日(Wed)]

(これは、私たちの災害ボラ・グループが清掃のお手伝いをした、ある喫茶店のマスターとの会話をメインに綴った備忘録です。脈絡のない読み物ですが・・・読んでもらえると嬉しいです。)

「ボランティアなんて、来てくれると思ってなかったから。ありがとう。」
玄関先の棚の中を泥拭きしていると、後ろから、おじさんが声を掛けてくれた。東北訛りのその言葉がやけに心に沁みた。
「そんな。本当にこんなに大変なんだから。おじさん一人で、ここまで泥掻きや後片付けをして、頭が下がります。私たちが来るのが遅かったくらいです。もっと早く来ていれば、もっとお手伝いできたのに。」
「他に何もやることもないから。両親とか、こんなとこまで来て、心配してるんじゃない?」
「ご両親に言わずに来ている人もいます。でも、みんな、TVで見て、本当に何かしたいって思って来たんだと思います。東京でも、いろんな人が東北の物を売っているお店に行ったりして、応援してるんですよ。」
「あぁ、アンテナショップな。」

「今度、やるお店の名前も、『あぷりこっと』のままですか?」
私はずっとお店のことが気になっていた。
「今度は『あんず』にしようかな」
ふっと、おじさんの顔に笑みがこぼれた。
「えっ、そうなんですか?店の名前、なんで『あぷりこっと』っていうんですか?」
「『あ』行にあったんだよ。」
「えっ、本当にそうなんですか?」
それ以上、おじさんは何も言わなかったけれど、「本当は別のもっと大切な理由があるに違いない」と思った。それを聞き出せるのは、おじさんにまた会いに行ったときかもしれない。
「コーヒーカップは、80%位は残ってるんだ。」
「あっ、本当だ。よかったですね。喫茶店を再開するとき必要ですもんね。」
おじさんの自宅の居間には、きれいに箱詰めして片付けてある多くのカップが並んでいた。

玄関先の総仕上げをしていると、おじさんが1パック6切れのカステラを差し出した。
「これ、食べな。」
「えっ、でも、今、物が無くて大変なんだから、取っておかないと。」
「甘いもんは食べない?」
「いえ、そんな。大好きです。でも。」
もう一度、差し出すおじさんに、私たちはそのカステラをいただくことにした。

別れ際、おじさんが何度も「ありがとう」と言ってくれるのに対し、私も「ありがとうございます。本当に元気で、気をつけて。」と言い、名残惜しかったが、おじさんに背を向けた。その瞬間、私はあることを思い出し、おじさんのほうに踵を返した。
「おじさん、またお店を出すときの名前は『あぷりこっと』ですよね?」
私は念を押し、もう一度、おじさんに同じ質問をした。
「だから、『あんず』、括弧で『あぷりこっと』って言ったじゃない。」
「本当ですよね?だって、また私たちがおじさんのお店に来ようと思ったとき、もし名前が変わってたら、わからないかもと思って。また、おじさんの作ったパスタを食べに来ますね!」
「そりゃ助かるわ。ありがとう。」
本当にもったいないくらいのその言葉を私は深く心に刻んだ。

作業後、テントに戻った私たちが口にした、おじさんのカステラは、私の疲れた身体を癒すのに最高の特効薬だった。

おじさんはその日の夜、避難している古い友人の家から自宅に戻ると言っていた。私の目には、今日もおじさんが前向きにあの場所を綺麗にしている姿がはっきりと浮かんでいる。
「一日、頑張ろう!」――その姿が私の気持ちを今日もぎゅっと引き締める。

(Written by H.H.)
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