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2015年07月09日

映画監督の黒沢清氏、川喜多賞受賞

日本映画の海外での評価というのは、昨今突如浮上した話ではありません。
有名なのは、黒澤明監督の『羅生門』がヴェネツィア映画祭で金獅子賞を受賞した話です。
これは、1951年、つまり昭和26年のことですから戦後占領下にあった時代の話です。

東和映画を設立した川喜多長政氏の夫人の故川喜多かしこさんは、東和映画での外国映画の日本への輸入の傍ら、海外への日本映画の紹介に尽力された方で、この『羅生門』がヴェネツィアで上映された一件にも大きく関わっていたようです。
その後も長年にわたり、かしこ夫人は日本映画の海外発信に尽くされました。
かしこ夫人の意思は、川喜多記念映画文化財団に引き継がれていて、海外の映画祭のディレクターたちが数多く、作品を探しに来日されています。
その川喜多財団主催による<川喜多賞>という賞があります。毎年7月に発表されるのですが、1983年の第1回の受賞者は、映画評論家で日本映画の海外への紹介に尽力されたドナルド・リチー氏でした。第2回が黒澤明監督、第3回が大島渚監督と続々日本を代表する監督に贈られたのですが、栄えある第1回がD.リチー氏という、黒澤明のほか、オヅ(小津安二郎)、ミゾグチ(溝口健二)といった日本の映画文化の担い手を紹介した人物に贈られている点が、川喜多賞に独特の重みを与えているように思われます。

さて、このほど今年の第33回川喜多賞が発表され、映画監督の黒沢清氏に贈られることになったそうです(贈賞理由等はこちら↓)。
 
黒澤明とは縁のない、たまたま苗字が同じだけの黒沢清監督は、今年5月フランスのカンヌ映画祭で<ある視点>部門の監督賞を秋公開の新作「岸辺の旅」で受賞されています。また、昨年から今年の春までは、おそらくご自身のキャリアで初めてだと思いますが、フランスで次の新作を撮られる、と多忙な日々を過ごされています。2012年にテレビドラマとして作られた「贖罪」は、5話で合計5時間ありますが、映画としても海外の映画祭で数多く上映され、フランスでは劇場公開もされて17万人も動員したということですから、押しも押されぬ日本を代表する監督です。

東京フィルメックスでは2002年に「アカルイミライ」を、2006年に「叫(さけび)」とこれまでに2回、黒沢清監督作品を上映する光栄な機会を得ました。
そうしたご縁で、当会の理事もお受けいただいています。

このたびはおめでとうございます。
黒沢監督の益々のご活躍を、心より応援しています(リンク先のお写真は、カンヌ授賞式の模様です)。
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