小さい体 背負ってきた人生[2008年06月07日(土)]
朝日新聞朝刊連載の「ルポ学校・子どもを救え」KLに以下の記事が掲載されています。
ここには「気づきの目」、理解と支援について考えさせられる様々なことが含まれています。
以下引用です。
(6月6日K)かすれる声「おれ、いらんのや」
子どもが抱える問題を発見する「気づきの目」を心がける山風小学校の先生たちが、いま気にかけている子の一人が低学年の恵くんだ。
1日に1回は授業中に教室から出ていってしまう。ある国語の時間は、いなくなったと思ったら、上履きのまま校庭のジャングルジムの上にいた。担任でない「サポートの先生」が追いかけて「戻ろう」と言っても、「いやや」。授業が終わるまでジムを上ったり下りたりしていた。
感情の起伏も激しい。4月の身体測定。保健室へいく途中、同級生の男の子といさかいになり、胸を拳で殴りつけた。「だめ!」。サポートの先生が腕をつかんで止めても、恵くんは口をゆがめて「ウー」とうなり、同級生をにらみつけた。しかし1分もすると、目を細めて笑顔で先生を見あげ、体を寄せて甘えるそぶりをみせた。
別の日には、廊下で同級生の女の子をいきなり後ろから抱えて投げ飛ばした。「あかんやん」。サポートの先生の声に答えず、恵くんは階段を駆け下りた。先生が見つけたときは、校庭の隅にあるウサギ小屋の前でしゃがみ込んでいた。
恵くんは小屋に毎日きていた。2匹のウサギに「ゴン」「ルル」と名をつけ、いつも話しかけていた。
「あんなんしたら、あかんやろ」。並んでしゃがんだ先生が言った。「ゴン、食べ」。恵くんは先生を見ずにウサギに葉っぱをあげた。
しばらくして小さな声で話し始めた。「おれみたいなやつは、いらんのや」。だんだん声がかすれていく。「もう、学校に来たくない。おもんない。おれ、ごめんって言うた。ちっちゃい声で言うた」
先生には心の叫びに聞こえた。
(6月7日L) 小さい体 背負ってきた人生
「おれみたいなやつは、いらんのや」「学校、おもんない」
こんな言葉を漏らした低学年の恵くんは、同級生らにすぐ殴りかかる粗暴さの一方、先生に抱きついて甘える面もみせる。
「サポートの先生」が必ずそばにいて、担任とともに見守っている。
ある日の授業中、教室を飛び出した恵くんをサポートの先生が追いかけ、休み時間になってようやく連れ戻した。「先生、恵くんのこと、お願いします」。担任は恵くんの手を引いてイスに座らせ、ドリルを広げた。「さっき遊んでたから、勉強せなあかんで」
クラスの子にきちんと学習させるのが担任、子どもの学校生活を担任と支えるのがサポートの先生だ。
豊子校長が母親との面談を重ねるうち、恵くんが育ってきた環境が少しずつわかってきた。
離婚した父親は借金の取り立てにあっていた。「お前なんかいらん、出ていけ」と恵くんにどなることもあった。
離れて住む親類から恵くんが何らかの虐待を受けていた疑いも浮かんだ。落ち着けない様子から、発達上の課題もありそうだった。
「あの年で、あんな小さい体で、どんな大変な人生を背負ってきたんやろ」。先生たちは思いをはせた。
始業式から1カ月もたたないうちに、恵くんの支援記録はA4の紙10枚分になった。「困りごと担当」の絵里先生はスクールソーシャルワーカーの町子さんに見せ、意見を求めた。町子さんは一読し、出張中の豊子校長の携帯電話に連絡した。
「戻ってきてくれませんか。相談したいことがあります」
(つづく)





