<キャリア・生き方>木を植えた人[2010年08月31日(Tue)]
本書は、30分もあれば読めるとても短い本ですが、読み終わったあとに、自省、励まし、ビジョンと情熱、見返りを求めない、などいろいろな感情がじわじわとこみ上げてきました。40年前に書かれた本とは思えないほど、現代の私たちにも共感できるものがあります。
本の話を、主人公の羊飼いが荒れ果てた土地に、木を一本一本ただ植え続ける、愚直に自分の仕事を続けることが大切なこと、と片付けられるものではありません。
きっと読者によっていろんな見方ができるのではないかと思います。
「木を植えた人」には主人公のほかに、森林保護官が登場します。何十年も羊飼いの主人公がせっせと木を植え続けたおかげで、辺り一面、緑でいっぱいになるのだが、その森林保護官は、その羊飼いのもとをおとずれて、この”自然林”の成長を守るために薪を禁止する、と通達を渡したくだりがあります。
これは、今まで外の世界とは隔離して、平和に暮らしていた村に、いきなり先進国の輩がやってきて、私利私欲や都合の良い正義感をふりかざして、労働力や自然資源やを独占しようとする構図に似ています。その後、その村はどうなっていくのでしょうか。
あとがきの一節から、
ほんとうに世の中を変えるのは、権力や富ではなく、また数と力を頼む行動や声高な主張でもなく、静かな持続する意志に支えられた、力まず、目立たず、おのれを頼まず、即効を求めず、粘り強く、無私な行為です。
その通りと思うが、これが本当に難しいです。ある時点でそう思っても、時間が経つにつれ、また、その意志や想い、エネルギーが弱くなっていってしまいます。ぶれない生き方はいつになったらできることやら。
そして、本の帯には、
「質素。粗食。ぜいたくや華美の反対。規則正しく穏やかな仕事。人に知られぬところでの、力まぬ日常・・・。忘れているものを思い出す。」
とあります
本書とあわせ、木を植えること、森が存在することは、人間そして地球にとってどんな意味があるのかを改めて知るのに、「森は生きている」をいっしょに読んでもよいと思います。