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日本の皆様へ [2011年06月02日(Thu)]

「誰も知らないところへ行きたい」

うつろな眼で遠くを見て話す。避難所にいるAさん。


震災から2ヶ月以上が経ち、被災者の心に変化が表れ始めている。
夢から醒めたのだ。
今までは、どこもかしこも非常事態で、協力し合ってがむしゃらに前進してきた。
しかし、2ヶ月以上たった今、本当の意味で気づくのだ。

(あぁ、今回のことは現実なんだ)

その現実にぶつかったとき、キレイ事が通用しなくなる。
疲弊とともに、人間の汚さが出始めている。

そのキッカケとなったのは、仮設住宅の抽選だった。
仮設住宅の当選基準がクリアではない気仙沼では、避難所の人も戸惑いを隠せない。
(なぜ、ウチではなくあの家が当たるんだ・・・)
避難所の空気が一気に悪くなる。当たる人、当たらない人。
結束をぎりぎり保っていた避難所のコミュニティにヒビが入る。
当選した人も素直に喜べない。

抽選の際、登録の手続きの説明も曖昧だった。その不満の声も大きい。
「ウチは、じいちゃんばあちゃんも併せて1世帯として登録してくださいって言われた。でも、別のところでは2世帯に分けて登録してもいいですよって説明してたのよ」

ヒビが入ったとき、気づく。
(あぁこれからは一人一人で生きていかないといけないんだ)
そのとき、廃墟と化した町が、リアルになる。
避難所での生活が、仮設での生活が苦になる。

Aさんは言う。
「目標がないのよね。目標が。
何を目標にして生きればいいのか。
なーんか、唐桑を離れて誰も知らないところへ行きたい」

その言葉は、『唐桑を元気にする!』と謳っていた私にとって、ショックだった。

最近耳にするのは、愚痴ばかりだ。
4月にはあまり聞かれなかったもの。

(つづく)
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