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どうしたら匿名加工情報でなくなるのか [2016年08月30日(Tue)]
個人情報保護法施行令改正案と施行規則案のパブコメが行われています。本件、私自身は、専門家の方々が熱く議論しているのを横目で見ているだけで、ぼやっとしか追いつけていなかったのですが、改めて条文を見たところ、相談事例をリストの形で紹介することが匿名加工情報の第三者提供に当たってしまうのは困るなー。と思い至り、今更ですが、相談機関であるECネットワークの立場で、以下の意見を提出してみました。

「どこまで丸めれば匿名加工情報ですらなくなるのか?」という問題意識です。定義に関わる話なので、本当は、施行規則ではなく、法案の段階でもっと言っておくべきだったのかも知れません。(国会審議その他で同様の内容が話題になったこともあると後で伺いました。)

下記意見では、現行法上何ら問題ない(キリッ)と言い切ってますが、書いているうちに、本当にその理解で正しかったのか不安になってきました。我々の相談データでは、元データと照合するキーは「案件番号」ですが、個別の事例の内容をもっと詳しく知りたい等の要望があった場合にすぐに元データに当たれるように、業界団体との閉じた情報交換などでは案件番号を消さないことがあります。公開資料の場合は仮番号に置き換えますが、その場合でも、対応表は大事に持っています。(もちろん元データに当たれるのは我々だけですが。)これは提供元にとっての容易照合性との関係で、ほんとは(個別同意を取らないと)イケなかったんでしたっけ・・・?ここにも書いたように、我々としては統計データと同じくらい罪のない情報という認識だったのですが。。

上記を含め、なんかまだいろいろ勘違いをしていそうな気がするので、遠慮なくご指摘をいただければ幸いです。>専門家のみなさま

ところで我々は民間なので個人情報保護法が適用されますが、相談データ共有の件は、実は各自治体消費生活センターが持っているデータ及びそれを集約したPIO-NETが本丸ではないかと思っています。苦情実績が消費者関連法規制強化の根拠(立法事実)とされる以上、肝心のデータをオープンにして精査する必要があると思うのです。そうなると行政機関等個人情報保護法の問題になってくる訳で・・・そちらも勉強しないと。

プライバシーへの影響は各人が常に気にしつつ、きちんとルールを守って安心して有効な利活用ができるように、プロでなければ解釈できないマニアックな法文や曖昧な規定ではなく、明確で誰でもわかりやすいルールにしてもらいたいものです。


「個人情報の保護に関する法律施行規則(案)」に対する意見(2016.8.30提出)

第19条(匿名加工情報の作成の方法に関する基準)について

施行規則においては、「どのように加工すれば匿名加工情報となるか」の基準に加え、その究極の形として、「どこまで加工すれば匿名加工情報ですらなくなるか」について基準が示されるのではないかと期待していた。しかし今回提示された案では、加工元のデータベースが個人情報データベースである限り、どれだけ丸めても匿名加工情報として法36条から39条の義務がかかることとなり、制度の趣旨に照らして過剰な規制であると考える。

具体的な懸念事項は以下のとおり。

私どもECネットワークでは、インターネット取引に関連するトラブルについてオンラインで相談を受けている。相談事例のデータベースは、要保護性が非常に高い個人情報データベースであると認識している。たとえ相談者の氏名やメールアドレスをデータベースから削除したとしても、相談者自身がフォームに入力する相談内容は、当然ながら相談者のプライバシーに深く関わるものである。施行規則案第19条第3項にいう「特異な記述」が含まれる場合には、相談内容のみで特定の個人を識別できる可能性もある。したがって組織内部においては、統計データ等を作成するために氏名やメールアドレスを削除したデータベースも、匿名加工情報データベースではなく、あくまでも個人情報データベースとして管理する予定である。

一方、相談事例の内容や傾向を関係者と共有することは、消費者啓発や事業者への注意喚起に役立つ。トラブルの発生を防いだり救済を容易にしたりするための制度的対応の要否や方向性を検討するにあたり、有益な材料の一つともなり得る。これまで、講演や研修、研究会等で当方に寄せられた相談事例の紹介を求められた時は、積極的に情報を提供するよう心がけてきた。

このような場面では、トラブルのパターンから一般化できる論点を探ることが目的なので、特定の個人を識別できる情報はもちろん、事例ごとの特殊な事情は不要である。相談内容は、趣旨を損なわない範囲で相当程度要約して「相談概要」とする。これ以外に項目として残すのは、「発生年月」程度である。

このように加工して第三者に提供するデータは、特定個人の識別性は限りなく低く、個々の相談者にとってのプライバシーリスクはほとんどないと考えている。統計データではないが、もはや個人データでもないので、現行法の下では、第三者提供にあたり特段の制約はないと理解していた。しかし念のため、相談機関としては、利用目的の1つとして、「提供いただいた情報は、特定の個人を識別できる情報を除いて、相談事例として利用し、消費者が同様のトラブルにあうことを防ぐための情報提供等に活用させていただきます。」といった規定を置いている。

この運用に特段の問題があるとは思えないが、このようなデータについても、改正法第36条第4項の「加工後の情報に含まれる個人に関する情報の項目及びその提供の方法についてあらかじめ公表する義務」が等しくかかってくるとすれば、相談機関にとっては大きな負担増となる。相談者に無用の不安を与えることを危惧し、個別事例ではなく、統計データのみの提供に止める方向に動くのではないかと懸念される。

現在問題なく行われている利活用が後退することなく、示唆に富む相談事例を安心して社会の共通財産とできるよう、施行規則において、「特定個人の識別性が十分に低減されて匿名加工情報ではなくなる」基準が示されることを強く希望する。
Posted by 沢田 登志子 at 12:43 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
オンラインで紛争解決(Online Dispute Resolution) [2016年08月03日(Wed)]
先月(2016年7月)開催された国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)総会で、「国境を超えたEコマースのためのオンライン紛争解決」に関する文書が採択されました。テクニカル・ノートという位置付けで、少額の越境紛争に対応するODRが満たすべき諸原則等について述べられています。

2010年に設置されたWorking Group III(ODR作業部会)で検討されていたものです。諸原則の主な内容は早い段階で合意されていたようですが、最終化までに足掛け6年もかかった背景には、例によって米国と欧州の法制度の違い=消費者との取引において仲裁の事前合意を認めるか否か=がありました。事前の仲裁合意が有効であれば、紛争が起きても裁判に訴えることはできないので、米国事業者は、クラス・アクションを避けるためにもできるだけ仲裁に持っていきたい。米国には、それを妨げる法律はありません。一方、欧州は、消費者の裁判を受ける権利を奪う仲裁合意は認めない、という法制です。(日本の仲裁法も同様で、附則第3条に消費者は仲裁合意を解除できると規定されています。消費者契約法見直しの議論でも、不当条項リストに仲裁条項を挙げる提案がしばしば出されています。)

ODR作業部会では、双方の法制と矛盾しない統一ルールとすべく、あれこれ模索を重ねてきましたがいずれも実らず、最終的には、EUが、ADR指令とODR規則を採択して域内の権限を集約したことを背景に強硬姿勢を強め、消費者仲裁を含むグローバルな統一ルールをUNCITRALで合意することは断念されました。・・・と、自分で見てきたように書いていますが、この間の事情は全て、本作業部会に日本代表として参加し、両陣営の調整役としても活躍された立教大学の早川教授からお聞きしたものです。今年1月にも、NPO法人消費者ネットジャパン(じゃこネット)のセミナーで講演していただきましたので、こちらも是非ご参照ください。

仲裁のようなカッチリした手続きは(時には裁判以上に)コストもかかり、Eコマースの紛争には馴染まないと個人的には思っています。なので上記のような米欧の対立は、理念としてはわかりますが、なんだか不毛だなーと感じていました。それよりも、実質的に役に立つ&外国語の不得意な日本人でも使いやすいODRを日本でも実現させる契機として、国際ルール化を待っていたところがあります。拘束力があろうとなかろうと、諸原則が明確になったのは良かったです。

かれこれ15年ほどEコマースのトラブルに関わってきましたが、主張が真っ向から対立しているとか、感情的にこじれきっているなど、当事者間の交渉ではどうしても解決できず、ここから先は利害関係のない第三者の関与が必要・・・と思う場面がたびたびありました。「中立」や「公正」という言葉は定義が難しいので使いたくないのですが、最低限、「どっちの味方でもない」という第三者の判断が欲しい場合があります。相談を受ける立場は、相談者の味方になって助言をする(時には相談者の代理として交渉する)役割なので、もちろんその有効性は十分に認識するところですが、ADR/ODRでいう「第三者」とは異なるものと考えています。

しかし、「利害関係のない第三者」がボランティアで他人の紛争に関わってくれるとは考えにくく、そこには報酬が発生します。必要が生じた時に第三者にすぐに依頼できる体制の整備や、記録保存などの事務費用も必要です。つまりADR/ODRにもコストはかかる訳ですが、消費者の関わる少額紛争では、紛争当事者から高額の手数料を取ることはできず、「運営費用を誰が負担するか」が永遠の課題です。

国際消費者連盟(Consumers International)等の提言では、消費者救済に役立つADRは、消費者には負担を負わせず、かつ中立で、専門的で・・・といろいろ注文がついています。しかし、これを実現するには、公的資金をどーんとつぎ込むか、紛争解決の仕組みを持つことにメリットを感じる事業者が費用負担するしかありません。費用をできるだけ節減するためにも、オンラインでの手続きが必須です。将来的には、企業のカスタマーサポートで既に活用されているように、定型的な紛争には、第三者の役割の一部をAIで代替できる可能性も高まるでしょう。

そんなことを検討したく、昨年から今年にかけ、前述のNPO(じゃこネット)でODRをテーマにした研究会を実施し、主査を務めました。と言っても初年度は、これまでどのような議論や取り組みがされてきたかを整理するにとどまっています。主に相談を受けてきた立場から、越境Eコマースだけでなく、シェアリングサービスなどC2C取引、オンラインゲーム、インバウンド等々、ここにODRがあったら良いのになー、という場面をあれこれ夢想していますが、それらはごく入り口の検討に過ぎず、これから本格的にみんなで考える場を設けませんか?という提案をするところで終わっています。(報告書は近々公開します。)

提案をしただけではなかなか動かないので、今年度も研究会は継続します。関係する少しでも多くの方に興味を持っていただけるよう、また続報を書こうと思います。
Posted by 沢田 登志子 at 12:45 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
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