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B2Bでも台湾法適用の可能性 [2010年07月13日(Tue)]
EU編に続き、台湾で裁判が行われる場合のことを書きます。事例は引き続きB2B。オーダー品を作りかけたらキャンセルされてしまった、という事案を当てはめてみます。検討会報告書の台湾法部分は、弁護士の宍戸一樹先生にご執筆いただきました。原文を調査し、現地の弁護士(律師というそうです)に確認し、と、大変丁寧にご調査いただきました。宍戸先生、ありがとうございます。

台湾には、EUの「ブラッセルI規則」に当たるような国際裁判管轄の単独法はなく、現行民事訴訟法の特別管轄権の規定をもとに、台湾の裁判所に管轄権があるかどうかが判断されます。日本の事業者が台湾の事業者を台湾で訴える場合は、被告の住所地ということで、台湾に管轄が認められます。

台湾の事業者から台湾の裁判所に訴えを起こされてしまった場合は?EU法と同じく、管轄合意は原則として有効です(電子的でもOK)。なので日本を裁判管轄地として合意しておけば大丈夫。では合意のない場合は?電子商取引については、「被告の差し押さえるべき財産の所在地」や「債務履行地」に管轄を認めるべきとの主張も(学説上)されているそうです。被告(日本企業)の財産は台湾にはない前提なので、台湾に管轄権なしと判断される可能性もあるかも知れませんが、債務履行地を「メールサーバまたはウェブサーバの所在地」とする学説もあるそうです。となると、台湾に管轄が認められる可能性もゼロではないと思われます。これはEUの場合とは違うところです。

では準拠法は?日本の「法の適用に関する通則法」やEUの「ローマI規則」に当たるのが「渉外民事法律適用法」です。最近、大改正が行われ、本年5月に公布されましたが、施行は1年後とのこと。検討会では、現行法に基づいて分析していただきました。同法によれば、準拠法についても合意は有効ですが、合意がない場合、「当事者の国籍が異なる時には行為地(契約締結地)」「行為地が異なるときは申込通知を発した地」「相手方が承諾時において申込通知を発した地を知らないときは申込者の住所地」と、ややこしい規定になっています。結局、電子商取引の場合はどうなるの??と考えると、どちらにも解釈できて、よくわからない・・・現時点では、参照できる裁判例も見当たりません。EUと違って、台湾では、「サーバ所在地」という概念が、準拠法の判断に若干の影響を与えそうですね。

という訳で、きちんと合意していなかった場合は、買主の訴え提起を受け、台湾の裁判所で、台湾法に基づいて裁判が行われる可能性が否定できません(注:台湾はウィーン動産売買条約に加盟していないので、同条約の適用はありません)。となると、台湾の法律の中身が問題になってきます。つまり、契約の成立について、台湾の民法がどのように規定されているかを見る必要があります。

本事案では、オーダー品をウェブで販売しています。これは日本法と同様(売主になる側が承諾しないこともあり得るので)、「申込の誘引」とみなされるでしょう。買おうとする側(台湾企業)からの注文が「申込」、本邦事業者は、それに対して「承諾の通知」をします。台湾の民法では、ネットで完結する取引は「非対話者取引」と分類され、意思表示は「到達主義」が採られています。本事案では、台湾の企業あてに発信した「承諾の通知」の到達が確認されているので、売買契約は成立しています。「注文キャンセル」の連絡は、申込の意思表示の撤回とは認められず、本邦事業者は契約成立を主張することができると考えられます。

この事案では、ほぼ、日本法と同じストーリー展開でした。めでたしめでたし(もちろん、もっと応用編になった場合はわかりません)。

Posted by 沢田 登志子 at 20:10 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
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