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ODRのルーツはeBay [2018年10月04日(Thu)]
9月21日に一橋大学主催で行われたODR国際シンポジウムの報告です。

シンポジウムのタイトルは「AI・ビッグデータ時代の紛争ガバナンス」。Dispute System Design(紛争システム設計)や裁判手続きのIT化など幅広い内容でした。その中からODR(オンライン紛争解決)について抜粋して報告します。(本シンポジウムとは別の機会に聞いた内容も若干含んでいます。)

前回の記事にも書きましたが、今回のメインゲストのお1人が、eBayとPaypalの紛争解決責任者として、eBayレゾリューション・センターの基礎となる仕組みを作ったコリン・ルールさんでした。

その後コリンさんは、2011年にODRサービス会社Modriaを設立し、現在は、同社を吸収合併したTyler Technologies社において、Eコマースに止まらず、様々な分野でのODRシステムを開発・販売されています。そのルーツは、やはりeBayにあるということでした。

eBayでは、ODRで年間6000万件の紛争を処理しています。その90%は、人間が介入せずにソフトウェアのみで処理が実施されています。グローバルにマーケットプレイスを展開するeBayのレゾリューション・センターには、日々多くの紛争の申告が寄せられます。年間6000万件ということは、1秒間に1.9件、紛争が発生する計算ですね。発生率の説明はありませんでしたが、もちろん取引件数は、その数万倍と想像します。

そのほとんどは数万円程度の取引。裁判はあり得ず、弁護士に依頼するのも費用倒れになる額です。つまりeBayでは、利用者が安心して取引に参加できるようにするため、low value high volume(少額で多数)の紛争を効率的に処理する必要を感じ、ODRのソフトウェアを開発した訳です。

もう一つ、クロスボーダーという点も重要です。eBayでは利用者の所在を問わず取引ができます。国境をまたがった取引の紛争について、どちらの国の法律が適用されるか?という準拠法の問題を意識せずにオンラインで解決できるということも、eBayにとっては必須だったそうです。

裁判外の手続きなので、執行は100%プライベートに行われます。決済システムと連動していることが「事実上の執行力」として機能しています。利用者は、結果に不満であれば訴訟を起こすこともできます(が、99.9%起こさないそうです)。

このような少額の紛争解決にユーザーが求めているのは、「速くて簡単な解決」「電話しなくて良い」「特典や景品なし」「交渉不要」「公正で一貫した取扱い」「プライバシー」だとコリンさんは言います。

ユーザーは、最終的には自分に有利な結論になったとしても、解決までに12日以上かかった場合は満足度が低く、たとえ不利な結論でも「迅速に決着する」ことに価値を感じる、とデータに現れているそうです。

また、ODRを経験したユーザーは、経験したことがないユーザーよりもリピート率が高い、つまりトラブルに遭っても、ODRを通じて、そのプラットフォームへの愛着(ロイヤルティ)が逆に高まるというデータもあるとのこと。

現在のeBayの状況が上記の通りかどうかはわかりませんが、日本国内でもいろいろ参考になる点があるように思います。私が体感する実ニーズとの関係やパネルディスカッションの模様については、日を改めて書きます。

ちなみにTyler TechnologiesのODRは、eBayのようなマーケットプレイスをはじめ、単体のEコマース、決済プラットフォームなどに提供されているそうです。このほか、自治体と個人の紛争(税額への異議申し立て)、保険金関連、製造物責任、オンブズマンによる特定事業分野(通信など)への苦情、プライバシー関連など様々な分野に活用され、もはやlow valueとは言えない紛争の解決手段になっているとか。

利用者は、日常使っているデバイスで紛争解決までできることに価値を見出しています。しかしメールやSNSは紛争解決のためのツールではないので、高額の紛争となれば、やはりセキュリティが担保されたODRシステムが必要ということだと思います。

更に同社のODRは、米国各州や英国、カナダの裁判所でも続々と(?)採用されているそうです。e-filing、つまり双方の主張や希望する解決をシステムに入力することで、法廷に出る前の論点整理が効率的にできるという活用方法が基本だと思います。加えて離婚訴訟などでは、ODRの段階で和解に至り、自動生成された書面を裁判所が認証するだけで手続きが終わるケースもあるようです。フロアからは、「IT化に後ろ向きな日本の裁判所にもこの話を聞かせたい」という声が上がりました。

訴訟大国アメリカでも、一般国民にとってはやはり裁判所は敷居が高く、紛争を抱えても97%の人は訴訟をしないというデータがあるとか。ODRは、そのような潜在的紛争にも「司法へのアクセスの機会」を提供するもので、決して「訴訟の代替手段(alternative)」ではないのだ、というお話が印象的でした。
Posted by 沢田 登志子 at 09:50 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
「Lアラート」は災害情報のプラットフォーム [2018年09月12日(Wed)]
大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号に続き今回の北海道地震・・・被害に遭われた方々には、謹んでお見舞い申し上げます。少しでも早く日常生活を取り戻していただけることを願っています。

この7月から、私は総務省の「今後のLアラートの在り方検討会」に委員として参加しています。そもそもLアラートって何だか知らなかったし、防災も情報伝達も地方行政も素人の私がなぜ??という感じですが、せっかくいただいた機会なので、住民代表というつもりで発言させてもらっています。第3回まで終了し、ようやく自分の言葉で説明できるまでに理解が進んできたので、中間報告をいたします。

LアラートのLはローカルの意味です。地方公共団体等が発出する災害関連情報(=アラート)を、様々なメディアに対して一斉に送信するために開発された共通情報基盤の名称です。

参考:Lアラートの概要

新潟県中越地震(2004年)や能登半島地震(2007年)等の経験を踏まえて2008年から検討が始まり、東日本大震災後の2011年6月に運用が開始されました。当時は「公共情報コモンズ」という名称でした。関係者のご努力により全国の自治体に普及し、2018年度末には、47都道府県全てが利用を開始するとのことです。今回の検討会は、Lアラートの更なる利用促進と高度化を目指すものと理解しています。

2004年頃、自治体が発信する災害関連情報は、電話、FAX、記者発表などアナログなものしかなく、メディアはその収集や確認に時間がかかり、迅速に報道することができなかったそうです。自治体側も、メディアからの確認の電話に忙殺され、本来の住民対応の手が取られていました。これを何とかするために情報の一本化が必要ということで、NHKの提案で検討が始まり、数年かけて共通情報基盤が構築されたということです。

現在、Lアラートを利用して情報発信を行っているのは、地方公共団体(都道府県・市町村)、消防庁や気象庁、通信やガスの事業者などです。庁内にLアラートに繋がる端末を置き、避難勧告や避難指示、避難所やライフラインの情報を入力すると、テレビ、ラジオ、新聞などのメディア各社がシステムからそれらの情報を拾って一般向けに伝達する、という仕組みになっています。システムは、一般財団法人マルチメディア振興センター(FMMC)が運営しています。

もちろん自治体は、それぞれ防災無線やウェブサイトで直接情報発信しています。メディアはそれぞれ独自取材も行っています。なので情報の受信者である私達は、どれがLアラート経由の情報なのかわかりません。いちばんわかりやすいのは、緊急時にテレビ画面にL字型で流れる文字情報でしょうか。このほか、リモコンのdボタンを押すと見られるデータ放送や、デジタルサイネージ、ヤフーやLINEなどの防災情報アプリにも、Lアラートからの情報が活用されているそうです。

大きな災害を経験するたびに報道や情報伝達のあり方が問われますが、日々改善が重ねられている裏側には、Lアラートの存在があったことを私は今回初めて知りました。

今後の課題は、文字だけでなく「地図データでの情報提供」と「多言語対応」と言われています。検討会開始早々、「今年度中に実証実験、2019年度に導入」とスケジュールまで決まっていると記事が出ていたので、「なんだ結論は決まってるのね(ありがちw)」と思いましたが、始まってみると、それ以外の課題もいろいろあることが明らかになってきました。

私のそもそもの関心は、情報の受信側の視点にありました。過去の災害時、メディアを通じて発信されたLアラートの情報(例えば避難勧告)が「必要な人に適切なタイミングで届いていなかったのでは?」あるいは災害発生後、「情報の内容や伝達方法に関し、被災者のニーズとのミスマッチはなかったか?」というものでした。

それは引き続き考えて欲しいのですが、回が進み、いろいろな関係者のお話を伺ってみると、自治体の情報入力の段階にも、フォーマットの標準化や正確性の担保など、かなりの課題があるようです。それぞれの自治体で防災に関する方針や環境が異なるところ、一定の水準を維持するのは相当大変なことだと思います。

10月13, 14日には東京ビッグサイトで「防災推進国民大会2018」が開催され、Lアラートについてもブース出展検討会座長による講演が予定されているそうです。ご興味ある方は是非ご参集ください。
Posted by 沢田 登志子 at 16:26 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
ODRの国際シンポジウムをなんと日本で! [2018年08月20日(Mon)]
一橋大学法学研究科グローバル・ロー研究センターの主催です。
AI・ビッグデータ時代の紛争ガバナンス - Online Dispute Resolution -
9月21日(金)13:00-17:00、一橋講堂で開催されます。私もパネルディスカッションに参加させていただきます。

私は1998〜2000年頃、経産省(当時は通産省)でEコマースの消費者政策を担当していました。この分野で最も重要なのは「行動規範(自主規制)とADR」という思いは、その頃からずっと変わりません。法律は技術の進歩に追いつかない。のみならず、各国単位の法規制は、国境を越える取引には実効性がない。だから事後的な紛争解決を手厚くして情報を蓄積し、自主的な行動規範や共通ルール整備にフィードバックさせる仕組みが重要。という問題意識です。

少額取引なのでもちろん裁判は現実的ではないし、距離も離れているので当然オンラインで紛争解決手続きを進めることになる。つまりOnline Dispute Resolution(ODR)が必須。

経産省の委託事業として実施された3年間の実証実験を経て、2006年、相談&ADRの独立機関としてECネットワークを設立しました。実際には、業務の99%が相談です。消費者から申立て可能なADRの相手方が会員に限定されているという制度設計上の問題もありますが、外部から委託で受けている業務を含めても、ADR/ODRの実績は非常に少ないです。上記シンポジウムのパネルディスカッションでは、日本人の「相談好き」=やや他力本願的な体質が、自律的な紛争解決手段であるADRの普及を妨げているかも?といった話もさせていただこうと思っています。

シンポジウムには、eBay/PaypalでODRシステムを一から開発し、その後も独立してODRビジネスを推進しているコリン・ルールさんも参加されます。コリンさんのこの本は、私にとってODRの教科書でした。ECネットワーク設立にあたり、メール等でもいろいろ教えていただきましたが、私自身はお会いするのは初めてで、ちょっと緊張します。

アメリカからはもうお一方、Dispute System Design(DSD)を専門とする、スタンフォード大学のジャネット・マルティネス先生も登壇されます。「デザイン」とは「問題解決のアプローチ」のことだそうです。まずニーズの把握からという考え方はとても納得できます。

(参考)一橋大学法学研究科 渡邊真由先生のプレゼン資料(2018/07/27, 日本ADR協会)

さてEコマースの分野では、2005年頃から、越境取引のトラブルが目立ってきました。日本ではまず相談体制の整備が必要と考え、ECネットワークとしてはODRの提案は封印し、EUの制度(ECC-Net)をモデルに、苦情処理国際連携の構想(ICA-Net)を作りました。経産省のバックアップのもと、2007年頃から様々な場で提案してきた結果、2009年に設立された消費者庁がこの提案を一部取り入れて、2011年に越境消費者センター(CCJ)を開設しました。この構想を策定した検討会の座長として、また海外向けスポークスマンとして、終始議論を牽引してくださった早川吉尚教授も上記シンポジウムに登壇されます。ODRに関連する様々な国際的ルール整備の状況などのお話が聞けると思います。

消費者庁の実証実験という位置付けだったCCJは、2015年に国民生活センターに移管され、越境取引でトラブルに遭った消費者が安心して相談できる先が確保されました。この延長線上にODRが実現すると更に良いと思います。他方、それとは異なるODRニーズも浮上しています。

C2C取引です。かつてはインターネット・オークション、今はフリマアプリとシェアリングエコノミーに広がり、市場規模は拡大の一途を辿っています。2016年のOECDレポートでは、これらをまとめてPeer Platform Marketと呼んでいます。peer to peer(P2P)のファイル交換という言葉もあるように、peerは「同等の者」という意味ですね。

プラットフォーム関連では、競争法的な観点を含め様々な論点がありますが、利用者保護や信頼性確保という文脈では、ODRは有効な選択肢の一つとされています。情報量・交渉力の格差を前提とする消費者保護の考え方は、「同等の者」間には馴染まないという背景があるのだと思います。パネルディスカッションでは、そんな議論も出てくるかも知れません。

このほか、海外で実用化されているODRの紹介、紛争解決システムへのAIの活用、B2Bの視点など、興味深い内容が予定されています。参加無料です。同時通訳も用意されていますので、奮ってご参加ください。申込みフォームはこちらです。


(本ブログでの関連記事)
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Posted by 沢田 登志子 at 09:12 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
オンラインプラットフォームにおける取引の在り方とは?? [2018年07月04日(Wed)]
5月から消費者委員会に「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会」が設置され、ECネットワークからも原田が参加しています。

これまで3回の会合が開催されました。議事録はまだ載っていませんが、配布資料は公開されています。

初回(5/15)に事務局から検討項目案が提示されましたが、非マッチング型(SNS的なもの)にも対象を広げるべきとの意見が出たり、複数の委員がプライバシーの問題に関心を示すなど、ややカオスな感じで終わりました。

第2回(6/15)では、消費者相談の状況について3専門委員からの発表の他、違法情報媒介責任や広告とプライバシーの問題など非マッチング型を含むプラットフォームの法的問題全般について森亮二先生がプレゼンされました。検討対象を拡大するかについて十分な議論をする時間はなく、結論は出ませんでした。

第3回は、プラットフォーム事業者3社(楽天、メルカリ、ヤフー)の取組みの発表と、EUで検討中のルールについて現状の紹介でした。解説された京都大学大学院カライスコス准教授の日本語が完璧であることに圧倒されました。

EUの動きで注目されたのは、「オンライン仲介サービスに関する規則提案」(REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on promoting fairness and transparency for business users of online intermediation services)です。

EU域内のビジネスユーザー(ベンダー)が域内の消費者にモノやサービスを提供するのに利用する仲介サービス(検索エンジンを含む)の義務について定めるもので、EU域外のプラットフォーム事業者に対しても適用される、という提案です。

規則として最終決定されるのはまだ先のようですが、実現すれば、域外の事業者に対してGDPRと同様のインパクトがあるとの説明でした。

ただしこの規則案は、通信ネットワークやコンテンツを所管する部署が提案しており、つまり消費者保護を目的とするものではなく、単一市場としてのEUの競争力を高めることが目的のようです。規制内容も、B2Bを念頭に「仲介サービス事業者はビジネスユーザーに向けて○○の透明性を確保せよ(規約に記載せよ)」といったものが多い感じです。

他方、消費者保護指令の見直しの動き(New Deal for Consumers)も別途始まっています。消費者保護指令はオンライン以外の取引も対象とする広範な内容ですが、今回の見直しでは、プラットフォームにも焦点を当てていると思われます。

これまでのところ、会議に参加している消費者委員会委員と専門委員、それぞれが思い描く「オンラインプラットフォームに関して検討すべき課題」にバラつきがあり、どんな方向に進むのかまだ見えません。もしかしたら今後の検討は、これらEUのルールを日本にも、という提案の形で出てくるのかも知れません。それはそれで興味深いですが、EUのルールをそのまま持ってきたとしても、第2回で紹介された消費者トラブルから示唆されることや、事務局が計画中の消費者アンケートから導き出される(であろう)課題に対し、そのままハマるソリューションにはならないような気がします。

EUのルールの中身なども勉強しつつ、引き続き注視して参ります。
Posted by 沢田 登志子 at 17:22 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
違法サイトと戦うための法整備を期待します [2018年05月01日(Tue)]
結局、政府としては、3つの海賊版サイトについて、ISPに対しブロッキングを「要請」するのはやめ、4/13に、「要件を満たせば違法性が阻却される」とだけ言って「あとは民間で自主的によろしく」と判断を委ねる感じの「緊急対策」を決定しました。

その後、有識者が改めて反対の声を上げる緊急シンポジウムが開催され、問題の海賊版サイトがGoogleの検索結果から削除されたかと思えば、NTTグループ3社が「ブロッキングします宣言」をして、うち1社が訴訟を提起され・・・と、話題が尽きない状態が続いています。

「緊急対策」によれば、次の段階として「知的財産戦略本部の下で、関係事業者、有識者を交えた協議体を設置し、早急に必要とされる体制整備を行う」のだそうです。

ここでいう「体制整備」やNTTグループが希望する「法制度整備」の内容はわかりませんが、「こういう場合はブロッキング(=通信の秘密を侵害)しても良い」という基準を立法化する方向だとしたら反対です(立法もなく実施するのはもっとマズいですが)。

ブロッキングはあくまで最後の最後の手段であり、権利を侵害された人がまずやるべきことは、違法サイト自体をシャットダウンさせ、権利侵害の主体を突き止めて直接戦うことであるはずです。自分の権利を守るための喧嘩に、関係ない他人(ISPや一般人)を巻き込んではいけません。喧嘩相手が海の向こうだという理由で、戦うための手続きが行き詰まるのであれば、そこにこそ立法措置が求められるのではないでしょうか。

それは「知財本部の下で」つまり知財侵害との関係だけで議論すべきではないと思います。名誉毀損、プライバシー侵害、詐欺、わいせつ、麻薬・・・様々な違法サイトと国境を超えて戦うための手続法の整備は、各分野に共通の課題です。それぞれの分野での蓄積と英知を結集して、解決の方向を探るべきです。

その中で「通信の秘密」についてもアンタッチャブルとせず、児童ポルノの時の検討をベースに、国民目線を交えて改めて議論をすれば良いと思います。ブロッキング以外の手段(とその限界)について共通認識ができれば、「緊急避難」の要件に該当するかどうかもわかりやすくなり、知財侵害以外の場面での適用可能性も見えてくるかも・・・というのは甘いですかね。
Posted by 沢田 登志子 at 15:37 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
海賊版サイトブロッキングで新たな消費者被害の予感?! [2018年04月11日(Wed)]
漫画や雑誌が無料で読める「海賊版サイト」が問題になっているようです。政府が犯罪対策閣僚会議を開いて、そのような著作権侵害サイトへのアクセスを遮断する「ブロッキング」をISP(インターネット接続プロバイダー)に要請するらしいとの報道もあり、ネット上もワヤワヤしています。

もちろん、漫画のタダ読みはいけないことです。出版社や作家さんが、自分達の商売を脅かす海賊版サイトを目の敵にするのもよくわかります。しかし、政府が乗り出すとこ、そこですかね・・・??

インターネット上には、消費者被害を引き起こす様々な詐欺的サイトが存在します。その撲滅は関係者全員の悲願です。撲滅が無理でも、ユーザーがアクセスできないような措置を無理やり採れば、もちろん被害は避けられます。だからと言って、一般人の通信内容(通信の宛先)を第三者が監視するブロッキングは、それを正当化するよほどの理由がない限り、認められるべきではありません。

これはインターネット関連の消費者被害に関心を持つ関係者全員の共通理解だと思います。海の向こうの正体不明のサイトに対し、実効性のある対策はなかなかない・・・と日々実感しつつ、行政当局や司法当局には、海外当局との執行連携や訴訟手続きの見直しなどを通じて、日本国民に被害をもたらす海外サイトへの行政処分や民事訴訟が容易になる施策をなんとか考えていただきたいと思っています。サイトには手が出せないから国内のISPのところで止めてよ、というやり方は、あまりに安易です。

数々の違法サイトから消費者が保護されていない状況の中で、「著作権者の利益を守るために」一般人のプライバシーを犠牲としても良いという理屈は全くわかりません。そこに政府がひと役買う理由もわかりません。優先順位がおかしくないですか?

「どんな目的のためであれば通信内容を見られることを許容するか」は、インターネット・ユーザー(つまり国民)全員の問題です。国会できちんと審議すべきと思います。

懸念はそれだけではありません。私がサイバー犯罪者なら、漫画をただ読みしたい若者たちを狙い撃ちにして、「こうすればブロッキング回避して前みたいにサイトにアクセスできるよ」と囁きかけ、偽サイトに誘導したり、怪しげなソフトを売りつけたりするビジネスをすぐに始めるでしょう。

「あなたのパソコンがウィルスに侵されています」に引っかかるのは高齢者ですが、「レイバン超格安」「iPhoneが当たりました」「動画見放題」に反応するのは若年層です。漫画にお金を払わないイケナイ子達だとしても、そこから巻き上げたお金が犯罪者集団に流れていくのは食い止める必要があると思います。
Posted by 沢田 登志子 at 08:45 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
シロウトは売ってはいけない [2017年11月30日(Thu)]
農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室さんからご依頼をいただき、この記事を書いています。

農薬取締法」という法律をご存知でしょうか?農業関係の方には馴染みがあるかと思いますが、恥ずかしながら、私は全く知りませんでした。

農水省の解説ページがこちらにあります。「農薬コーナー」という名称がちょっと素敵です。関連条文もこちらで参照できます。私が理解した主な内容は、こんな感じです。

・「農薬」には、殺虫剤や殺菌剤、成長促進剤や発芽抑制剤、天敵(例:寄生バチ)などが含まれる(1条の2)
農薬を製造・加工・輸入する場合は登録が必要された農薬以外は、製造・輸入・加工・販売は禁止(害がないことがわかっている「特定農薬」を除く)(2条)
 (注)「加工」には「小分け」も含まれる。

・農薬を販売するには、都道府県知事への届出が必要(8条)
・販売に際しては容器(または包装)に表示義務・・・登録番号、農薬の種類・名称、有効成分・含有量、内容量、使用方法、注意事項、製造地、最終有効年月など(7条)
・販売を禁止する農薬を省令で指定(9条2項)・・・人畜への被害、環境汚染の恐れがある場合等

この法律は、農薬販売を「業として営む者」に限らず、個人にも適用されます。

例えば家庭菜園で使うために個人で購入した農薬が余ったといった場合でも、それをインターネットオークションやフリマアプリで販売するには届出が必要ということです。届出せずに販売した場合は、罰則(6ヶ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金)がかかります。手持ちの容器に移し替えることは「加工」に当たるので、届出をした販売者でも、ラベルを貼るかどうかに関わらず、やったら違法てラベルを貼らずに販売すると、表示義務にも違反することになります。

「法律を知らずに、ついうっかり売ってしまった」というケースであれば事件化される可能性は低いのかも知れませんが、130件も販売したりすると、次の記事のように検挙されます。

ネットで農薬販売 無届け容疑の男書類送検 「生活費稼ぐため」(産経ニュース2016.11.28)

「無農薬」「無添加」が価値が高いとされる昨今、農薬がそんなに売れるとは知りませんでした。

毒性の低い少ないスタンダードなものに限れば、届出なしで個人が売買できるよう規制緩和しても良いのではないかと思うところもある(そういうものは他にもありそうです)一方で、安全性が確認されていない未登録の農薬や、登録が失効したもの、有効期限切れの農薬などが出回るのは、消費者としては安全性をどう判断して良いかわからないので、ちょっとコワイですね。

ヤフーオークションでは、農薬についても注意喚起を出しています。ただ、削除となると、出品画面を見ただけで違法か適法かを判断するのは難しい場合もありそうで、プラットフォーム運営側としては、厳密な違法ラインよりも少し広めに規約で禁止範囲を定めておかない限り、対応はしにくいかも知れません。むしろユーザーの意識向上が不可欠と思います。

ちなみに農薬取締法11条では、購入側に対しても規制がかかっています。
・容器(または包装)に決められた表示がない農薬や特定農薬以外の農薬は使用禁止
・省令で販売禁止された農薬は使用禁止

購入禁止ではなく使用禁止なので、買ったからすぐに罰金、ということにはならないかと思いますが、販売するのも使うのもダメなものを買っても仕方ないので、まあ、買わないでくださいということですね。農水省から購入側への注意喚起はこちらです。

ヤフオクの注意喚起にもありますが、農薬もさることながら、毒物や劇物については、安易に流通しないよう、更に監視を強める必要があるかと思います。こちらは厚生労働省所管の「毒物及び劇物取締法」という法律で、より厳しく規制されています。

今回、農水省では、農薬取締法の規制内容について、できるだけ多くのECプラットフォームに説明をし、協力を求めたいとのことでした。直接ご説明を受けたい事業者さんがいらっしゃいましたら、沢田あてにメッセージをいただければお繋ぎいたします。

【12/4追記】
私の理解が不十分だった点につき、農水省さんからコメントをいただいたので、上記の通り訂正しました(青字部分)。後日、別記事でもう少し詳しく書いてみたいと思います。

Posted by 沢田 登志子 at 09:57 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
ECサイトのセキュリティ対策とショッピングカート [2017年10月16日(Mon)]
割賦販売法改正の件、続きです。9月に政省令案のパブコメが行われました。最終版は、追ってこちらで公表されると思います。

EC加盟店の義務となったクレジットカード情報の漏洩対策は、何度もお伝えしている通り、「非保持」が基本です。カード番号を保有したり自社サーバを通過させたりする場合には、PCI-DSSなどのセキュリティ対策が必須となります。

そうは言っても、EC加盟店が、一から十まで自分でシステムを構築し、管理しているケースはあまりないと思われます。独自ドメインの店舗では、ASPでショッピングカートを利用していることが多いのではないでしょうか。

EC加盟店としてはカード情報を「持っていない」と思っていても、これまで、PSP(決済代行会社)に決済情報が流れる過程で、カート事業者のサーバにクレジットカード情報が残ってしまう場合があったようです。そこへの不正アクセス等で顧客のカード情報が漏洩する、という事態が最近も話題になりました。

今般の改正法では、このように、カート事業者のセキュリティが不十分なことによる漏洩も、EC加盟店の責任となります。法律をきっちり守るためには、外注先をきちんと選んでくださいね、ということです。

オープンソースのECパッケージソフトや開発会社が作ったシステムを自社サーバにインストールしてECを運用する場合も、それらのシステムの脆弱性等に起因する漏洩については、一義的にはEC加盟店が責任を負います。「責任」というのは、割賦販売法における義務履行の責任と、顧客に対する民事上の責任の両方の意味と思ってください。

システム自体に問題があった場合は、開発元に対する損害賠償の問題となり得ますが、開発元からアップデート情報が提供されていたのにEC加盟店がスルーしていたりすると、損害賠償は難しくなってしまいます。

大手のPSPは、自らはPCI-DSSに準拠した上で、EC加盟店が「非保持」を実現するための仕組み=「リンク型決済」あるいは「JavaScriptによるトークン決済」をメニューとして用意しているはずです。カートのシステムがこれらに対応していない場合は、そのカートを利用しているEC加盟店は「法律を守れない」状態となってしまいます。(ECサイト自身がPCI-DSSに準拠していれば別ですが。)

実は、クレジット取引セキュリティ対策協議会が策定した「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画2017」では、プレイヤーとしてEC加盟店とPSPは出てきますが、カート事業者が全く登場せず、位置付けがよくわからないのです。現在、「実行計画2018」に向けて改訂作業が進められているとのこと、その中で、カート事業者の役割や位置付けが明確になることを期待しています。

また、法律上、カート事業者が「クレジットカード番号等取扱受託業者」(改正法第35条の16第3項)に当たるのか、という点も明確にしていただきたいと思っています。何故なら、カート事業者がこれに該当する場合、EC加盟店は、「経済産業省令に定める基準に従い」、カート事業者に対し「必要な指導その他の措置を講じなければならない」とされ、委託先の管理という、結構重たい義務がかかることになるからです。

(追記)
この点、経産省では、カートと加盟店との契約内容などを踏まえて判断する必要があるので、現時点では、カート事業者が「クレジットカード番号等取扱受託業者」に該当するかどうかは保留、とのことでした。

実務がどうなっているか、契約関係を含めて経産省に詳しくご説明いただける事業者さんがいらっしゃいましたら、沢田あてにメッセージをいただければ幸いです。
Posted by 沢田 登志子 at 12:58 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
フツーの消費者がヘンだと思う消費者契約法 [2017年09月13日(Wed)]
2016年改正の第二弾として、昨年11月から消費者委員会消費者契約法専門調査会において消費者契約法の見直しが検討され、8月に報告書が公表されました。

今回規定しようとする内容に関しパブリック・コメントが募集されています。沢田は見直しに反対する立場から、個人として以下の意見を提出しました。

消費者問題は、もっと多面的に、俯瞰的に、データに基づいて検討すべきなのに、大事な視点がごっそり抜け落ちて「消費者契約法改正ありき」の議論になっていた、というのが私の反対理由です。

意見の理由(詳細)

消費者契約の望ましいあり方を検討するにあたり必要と思われる視点は次の通り。

1) 「情報通信技術の発達」により消費者取引に生じた変化
 消費者契約法専門調査会(以下「専門調査会」)報告書「はじめに」では、法見直しの趣旨(専門調査会設置の背景)として、「情報通信技術の発達や高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化への対応等の観点」が挙げられている。しかし、社会経済状況にどのような変化が見られ、それが消費者取引にどのような影響を与えているかの分析は全くされていない。
 「高齢者の増加」「成年年齢引き下げ」=「高齢者や若年層をターゲットとする悪質事業者の横行」とのみ捉えるのは、あまりにも表層的・一面的であると考える。

 私見では、ここ十数年の社会経済状況の変化として最も大きいのは、情報通信技術の発達を背景とする「国際化の進展」であると考える。消費者取引にも確実に国際化の波が押し寄せている中で、国内法である消費者契約法上の消費者の権利を拡大したとしても、海外事業者が相手方の取引において、当該消費者の権利を実現させる現実的な紛争解決手段が存在しなければ意味がない。
 法の適用に関する通則法により、消費者は、海外事業者との取引においても自国の消費者保護法の強行規定の適用を主張できることとなったが、現実には、訴訟を起こさない限り、相対交渉の過程でこの主張が通ることはほとんどない。

2) グローバル・スタンダードへの目配り
 また、日本は情報化先進国の一つとして、消費者関連法のハーモナイゼーションを目指し、国際的に議論をリードしていくべき立場である。国内だけで通用する独自の価値観に基づく法制ではなく、法律以外の施策を含め、海外事業者にも容易に理解できる普遍的・合理的な制度を提案していく必要がある。
 この点、専門調査会では、ごく限られた国の契約条項規制の紹介にとどまり、国際的な視点、日本の消費者契約法の規律がグローバル・スタンダードとなり得るか、という観点での議論が全くされていなかったのは残念である。

3) 「普通の消費者」のあるべき姿
  消費者被害を起こさないために最も重要なのは、相手が海外事業者であれ国内事業者であれ、勧誘を受けても「意に沿わない契約はしない」という決断と明確な意思表示ができる消費者、また、契約内容を事前にちゃんと読んで理解し、違約金が高過ぎるなど納得できない条項があれば契約しないという判断ができる消費者を、一人でも多く育てることである。

 この点、今回提案されている第4条第3項への規定の追加は、「事業者の言葉を鵜呑みにする騙されやすい消費者」「契約する気はないとはっきり言えない気の弱い消費者」を救済するものとなっている。
 平均的・一般的な消費者、すなわち「普通の」消費者は、このような勧誘を受けても契約はしない(それでも契約する場合は自己責任)と思われるところ、あらゆる消費者取引に適用される一般法である消費者契約法に救済規定を設けることは、普通の消費者の自己責任の意識を著しく阻害する。自分の判断や行動に責任を持つことのできる普通の消費者に対して、消費者はその程度の意識・存在で良いのだという「誤ったメッセージ」を与えてしまうことを強く懸念する。

 また、不当条項規制の無制限な拡大は、自らに不利な点も含めて契約条項を理解し、価格その他の兼ね合いも考慮した上で、提示された条件に同意して契約している普通の消費者の意向を無視するものである。
 納得して契約したのであれば「消費者といえども一方的な取消しはできない」という原則を明確に打ち出すべきである。次代を担う消費者が自らを守るために最も重要なメッセージは、「安易な契約をしない」ということである。事業者から提供される情報を活用し、自らも情報を収集した上で、契約内容について十分に理解して意思表示することのできる消費者の育成にこそ力を入れるべきと考える。

4) 取消権以外の被害救済策
 平均的・一般的な消費者には自己責任を問うべき事案であっても、現実には、様々な事情で合理的な判断をできない消費者が一定程度存在し、被害に遭いやすい状況にあることは否定できない。しかしこれは消費者側の特別な事情であるから、そのような特性を持つ消費者が一部に存在することを理由として一般的な権利を設けるという方向は適切ではない。消費者側の事情に着目した、特例的な救済措置を検討すべきである。

 例えば、消費生活センターの手に余るケースであっても、弁護士が介入することにより、民法の公序良俗や暴利行為などを主張して法的に争うことが可能な場合があると思われる。しかし消費者にとって弁護士費用の負担は重い。そこで、「当該消費者は契約時に判断能力が不足していた」ことを何らかの形で認定した上で自治体が弁護士費用を補助するなど、民事法律扶助のような制度を創設することが考えられる。事業者の悪質な行為については、現行法を最大限に活用して「消費者がきちんと戦える」環境を整備することが重要である。

 また、国際取引の紛争に関しては、どちらの当事者にとっても訴訟という解決策は現実的ではない。このため海外では、消費者救済策の一環として、低コストで迅速に紛争解決に導くオンラインADRの仕組みを政府主導で導入するケースが増えている。日本においても、このような手続き面での環境整備を検討すべきである。

5) 事業者への行為規制
 他方、専門調査会においては、前回改正及び今回提案の内容にとどまらず、「消費者が合理的判断をできない事情を利用して契約を締結させる」類型について手当が必要という意見が繰り返し述べられてきた。
 消費者の特殊事情に「つけ込んで」契約させる行為は確かに許されるべきではない。しかし事業者にそのような行為を「やめさせる」ためには、何をしてはいけないか(どんな行為が「つけ込む」に当たるか)を具体的に定義し、まず(条例ではなく)法で明確に禁止し、違反に対しては厳正に法執行を行うべきである。
 事業者が「つけ込んだ」ことを消費者がどのように証明するかの見通しもなく取消権のみを付与することは「消費者契約法改正ありき」の議論に他ならず、判断力の不足した消費者を悪質事業者から保護するにあたり、真に有効な施策を検討する姿勢とは言えない。

6) 「消費者・事業者間の情報の質及び量並びに交渉力の格差」などデータによる検証
 「情報通信技術の発達」は、従来の「消費者」概念にも大きな変化をもたらしている。インターネット・オークションやフリマ・アプリ、シェアリング・ビジネスなどを通じて、消費者が財・サービスの供給者側に立つことが容易になった現在、「事業者」「消費者」という二元的な捉え方、及び「事業者と消費者の構造的な格差」という消費者契約法の大前提がそのまま当てはまる場面は、限定されてきている。

 PIO-NET等に集約される相談事例は、日々締結され問題なく履行される膨大な量の消費者取引のうち、ほんの一部に過ぎない。消費者取引がどのように変化し、現在どのような状況にあるのか、全体を俯瞰できるデータをもとに、真の課題はどこにあるのかを議論すべきである。
Posted by 沢田 登志子 at 14:59 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
不正購入対策はいろいろ合わせ技で [2017年06月14日(Wed)]
割賦販売法改正でEC事業者に課されたもう一つの義務、「クレジットカード番号等の不正な利用を防止するために必要な措置」についてです。以前ぐちゃぐちゃした記事を書きましたが、今回は条文ベースではなく、「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画-2017-」の内容をご紹介します。

カード会社(アクワイアラー)及びPSPは、不正使用被害が顕在化している加盟店のうち、「カード番号+有効期限」のみで決済を行い、何らの不正使用対策も講じていない加盟店に対して、本実行計画で整理した具体的な方策を中心とした不正使用対策の導入を促進することとする。
また、すでに何らかの不正使用対策を講じているが、不正使用被害が顕在化しており、不正使用に対する十分な抑止効果が見られない加盟店に対しては、従来の対策を見直し、必要な追加策を講じる等の対応を求めていくこととする。


カード不正使用(ショップにとっては不正購入)については、カード会社は原則リスクを負ってくれないので、ショップ側で既にいろいろ自衛手段を講じていることと思います。それでもまだ不十分ということで割賦販売法に規定され、「不正使用被害が顕在化している加盟店」は、漏えい対策と同様に、アクワイアラーから対策を求められることとなりました。まずは、ご自身のショップが「不正使用被害が顕在化しており、不正使用に対する十分な抑止効果が見られない加盟店」に当たってしまうかどうか、ご契約のPSP(決済代行会社)やカートさんに確認していただくのが先決かも知れません。不正使用被害が多い「特定5業種」として、「実行計画」では、デジタルコンテンツ(オンラインゲーム含む)、家電、ECモール、電子マネー、チケットが指定されています。(ECモールって「業種」なんですかね??)

さて、その上で、必要に応じ「対策を講じる」訳ですが、

それぞれの方策に課題等があるため、加盟店の業種及び商材等に応じた有効な方策を講じることが重要であり、それぞれのリスクの状況に応じて、以下の方策を基本としつつ、追加的な対策をとることを含め、多面的・重層的な対策を講じていくことで不正使用防止効果を高めていくことが求められる。

のだそうです。具体策がいくつか並べられているものの、どれも万能ではなく、何をやるべきかについては一律に決められない。それぞれ自社の状況に合った方策を組み合わせて実施してね、という、なんとも歯切れが悪いというか曖昧なルールになっています。以下、「実行計画」に挙げられた各方策に関する記述(メリットや課題)を要約してお伝えします。勝手な要約なので、正確なところは原文を見てください(p.39-43あたり)。

□本人認証(3Dセキュアや認証アシスト)
・課題は「カゴ落ち」(販売機会の逸失)
・パスワード未登録のカードは通ってしまう
・パスワード使い回しや漏えいで効果なし
→「動的(ワンタイム)パスワード」
 「指紋等の生体認証」に期待
*認証アシスト
・カード会員の属性情報を照合する方法
・パスワード失念の懸念はないが、漏洩リスクは同じ

□券面認証(セキュリティコード)
・注文者がカード会員本人かまでは確認できない
・番号とともに「セキュリティコード」が窃取されたら終わり

□属性・行動分析
・デバイス情報、過去の取引情報等に基づくリスク評価(スコアリング)
・小規模加盟店が独自でモデル構築は困難
 →サードパーティのサービス利用に期待

□配送先情報
・取引成立後でも配送を止めて被害防止
・大手加盟店は独自のデータベースを運用
・カード会社複数社での共同運用サービスあり
・過去のブラック情報を提供するサービスも存在
・しかし配送を伴わない取引には利用できない
・ブラック判定されていない住所への配送は止められない

□その他
・カード利用時にイシュアーから利用確認メール
・メール等受信に関するカード会員の同意が必要
・メールアドレス管理等、イシュアーの負担

以上、不正購入対策には(これ一つでOK!というものはないですが)いろいろな方法があるようです。外部サービスを使うにしても、結局は、ショップ側での不正判断ノウハウの蓄積や体制構築がキーになる感じですね。ご自身のサイトに課題が残っているか、更にできることがあるかについて、「非通過」の件と併せ、ご契約のPSP、カートさんにご相談いただくと良いのではないかと思います。
Posted by 沢田 登志子 at 15:54 | 沢田登志子 | この記事のURL | トラックバック(0)
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