阿蘇大橋(南阿蘇村)(朝日新聞/熊本)
[2011年12月18日(Sun)]
2011(平成23)年12月18日(日)
朝日新聞
asahi.com>マイタウン>熊本>火の国をゆく
【火の国をゆく】
阿蘇大橋(南阿蘇村)
http://mytown.asahi.com/kumamoto/news.php?k_id=44000371112180001
阿蘇の交通の要路にある阿蘇大橋(南阿蘇村)。
地元の人たちは「赤橋」と呼ぶが、
どう見ても赤色ではない。
呼び名への疑問をたどっていくと、
投身自殺を食い止めるための様々な取り組みに
行き当たった。
2つの国道が合流する阿蘇大橋。
いつも多くの車が行き来している=南阿蘇村河陽
○
阿蘇市に向かう国道57号と、
高森町に続く国道325号との合流点。
黒川が流れる谷間に全長205メートルの
阿蘇大橋がかかっている。
橋の真ん中から下をのぞくと、約80メートル下に
深緑色の滝つぼが広がっていた。
大型トラックが通るたびに足元が揺れる。
手すりは所々さび付き、剥がれた灰色の塗装の下から
オレンジ色がのぞいていた。塗り替えられる前の色だ。
橋を管理する熊本県の道路保全課によると、
塗装をし直した目的の1つが周辺の美しい山々との調和。
そして、もう1つが自殺防止対策だ。
○
1971年の開通以来、高さがある橋から
身を投げる人が相次いだ。
阿蘇広域行政事務組合消防本部によると、
記録が残る81年以降の発生は59件。
インターネットには「熊本の心霊スポット」といった
興味本位の書き込みがあふれる。
○
熊本県は1990年、橋の両側から水平に張り出す
幅約1・5メートルの柵を設置。
94年には
「刺激的な色が影響している可能性がある。」
との意見を受け、約5,000万円かけて
地味な色に塗り替えた。
さらに、2002年には手すりを乗り越えられないよう
高さ約2メートルのフェンスも新設。
こうした対策もあり、2002年以降は
計4件にとどまっているという。
○
橋のたもとには「まてまて地蔵」と刻まれた
50センチほどの地蔵が立つ。
相次ぐ身投げに心を痛めた住民が、
思いとどまってほしいとの願いを込めた。
今も切り花やカップ酒が供えられる。
「昔は毎月のようにあったけど、
最近はあまり聞かなくなった。」
と言うのは、集落でスナックを営む女性(66)。
開通した頃は投身の一報が入るたび、
地元の消防団員が険しい谷を捜し回った。
ショッキングな現場を目の当たりにし、
食事をとれなくなった人もいたそうだ。
○
現在は阿蘇広域消防本部がクレーンを備えた
「救助工作車」を投入。
橋の中央から特別に3倍の長さに伸ばした
約100メートルのワイヤで捜索用資材を下ろし、
発見した自殺者を引き上げる。
水中での捜索となると、3時間以上かかることもあるという。
同本部の上野幸晴・熊本県警察南部分署長は
「救助には困難な現場だが、
我々は常に転落者が生きているという前提で
行動している。」
と話す。
○
自殺防止の電話相談に取り組む
社会福祉法人「熊本いのちの電話」の
池田幸蔵常務理事はこう指摘する。
「容易に実行できない環境という意味では、
色よりも柵の方が効果が大きいのではないか。
自殺を減らすには一瞬でも思いとどまらせることが重要。
1つずつこうした対策を取る場所を増やしていくべきだ。」
(岩崎生之助)
朝日新聞 2011年12月18日(日)
朝日新聞
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【火の国をゆく】
阿蘇大橋(南阿蘇村)
http://mytown.asahi.com/kumamoto/news.php?k_id=44000371112180001
阿蘇の交通の要路にある阿蘇大橋(南阿蘇村)。
地元の人たちは「赤橋」と呼ぶが、
どう見ても赤色ではない。
呼び名への疑問をたどっていくと、
投身自殺を食い止めるための様々な取り組みに
行き当たった。
2つの国道が合流する阿蘇大橋。
いつも多くの車が行き来している=南阿蘇村河陽
○
阿蘇市に向かう国道57号と、
高森町に続く国道325号との合流点。
黒川が流れる谷間に全長205メートルの
阿蘇大橋がかかっている。
橋の真ん中から下をのぞくと、約80メートル下に
深緑色の滝つぼが広がっていた。
大型トラックが通るたびに足元が揺れる。
手すりは所々さび付き、剥がれた灰色の塗装の下から
オレンジ色がのぞいていた。塗り替えられる前の色だ。
橋を管理する熊本県の道路保全課によると、
塗装をし直した目的の1つが周辺の美しい山々との調和。
そして、もう1つが自殺防止対策だ。
○
1971年の開通以来、高さがある橋から
身を投げる人が相次いだ。
阿蘇広域行政事務組合消防本部によると、
記録が残る81年以降の発生は59件。
インターネットには「熊本の心霊スポット」といった
興味本位の書き込みがあふれる。
○
熊本県は1990年、橋の両側から水平に張り出す
幅約1・5メートルの柵を設置。
94年には
「刺激的な色が影響している可能性がある。」
との意見を受け、約5,000万円かけて
地味な色に塗り替えた。
さらに、2002年には手すりを乗り越えられないよう
高さ約2メートルのフェンスも新設。
こうした対策もあり、2002年以降は
計4件にとどまっているという。
○
橋のたもとには「まてまて地蔵」と刻まれた
50センチほどの地蔵が立つ。
相次ぐ身投げに心を痛めた住民が、
思いとどまってほしいとの願いを込めた。
今も切り花やカップ酒が供えられる。
「昔は毎月のようにあったけど、
最近はあまり聞かなくなった。」
と言うのは、集落でスナックを営む女性(66)。
開通した頃は投身の一報が入るたび、
地元の消防団員が険しい谷を捜し回った。
ショッキングな現場を目の当たりにし、
食事をとれなくなった人もいたそうだ。
○
現在は阿蘇広域消防本部がクレーンを備えた
「救助工作車」を投入。
橋の中央から特別に3倍の長さに伸ばした
約100メートルのワイヤで捜索用資材を下ろし、
発見した自殺者を引き上げる。
水中での捜索となると、3時間以上かかることもあるという。
同本部の上野幸晴・熊本県警察南部分署長は
「救助には困難な現場だが、
我々は常に転落者が生きているという前提で
行動している。」
と話す。
○
自殺防止の電話相談に取り組む
社会福祉法人「熊本いのちの電話」の
池田幸蔵常務理事はこう指摘する。
「容易に実行できない環境という意味では、
色よりも柵の方が効果が大きいのではないか。
自殺を減らすには一瞬でも思いとどまらせることが重要。
1つずつこうした対策を取る場所を増やしていくべきだ。」
(岩崎生之助)
朝日新聞 2011年12月18日(日)