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今日の人148.野上達也さん [2015年08月11日(Tue)]
 今日の人は、富山大学医学薬学研究部和漢診療学講座助教で、大学附属病院の和漢診療科の外来も担当、J3のサッカーチームのチームドクターでもある野上達也さんです。
IMG_9189.JPG

 野上さんは1973年神奈川県で生まれました。3人兄弟の長男として育った野上さん。小学校1年生から空手、小2からはサッカーを習い、その他にも習字、そろばん、スイミングなど、一通りの習い事はやっていました。小学校の時から、とても活発でいかにも頼れる兄貴タイプといった感じだったので、自然に野上さんの周りには人が集まってきました。必然的に学校委員長をやっている、そんなタイプだったのです。けれど、好きな女の子にはスカートめくりをしていたずらをするという、いたずらっ子な面もありました。優等生っぽくないそんなところが逆に人気の秘訣だったかもしれませんね。
 その頃の夢は空手の師範かサッカー選手になりたいというものでした。空手は黒帯をもっている野上さんです。

 中学では、サッカー部に入って、ますますサッカー熱は高まりました。強豪ぞろいの神奈川県大会でベスト8に入ったことも。その時のサッカー部の監督が、「俺はサッカーを知らないからみんな一緒に強くなろう」という方で、野上さんはその先生にとても憧れました。そうして、将来は教員になって、サッカー部の監督になりたい!そんな風に思っていたのです。
 でも、中学に入ったころには不良グループの嫌がらせの対象になってしまったこともありました。机に生ごみを入れられたり、椅子に画びょうを置かれたり。その中心になっていたのが小学校時代のサッカーのチームメイトだったこともあり、胃が痛くなったりもしました。今になって思えば勉強やスポーツが得意なことを鼻にかけるような態度があったかもしれない、と振り返る野上さん。何をどう変えた、という自覚はありませんでしたが、中2になって、お互いが成長したためか、そのチームメイトもサッカー部に戻り、嫌がらせをされることもなくなったのでした。ゴールキーパーだった彼も含めてチームメイトと力を合わせて戦った中学サッカーは今では良い思い出になっているそうです。
 中3の時には、生徒会長にもなりました。そのときに、グラウンドにビックアートを描くというイベントをやりました。生徒ひとりひとりが色板を持ってグラウンドに葛飾北斎の富嶽三十六景の一枚、神奈川沖浪裏のイラストを描いたのです。一人でもずれると絵はうまく完成しません。かったるいと言ってやりたがらない子も当然いて、うまくみんなが並んでくれるようにするのはなかなか大変でした。そこを野上さんは、リーダーシップを発揮して、うまくみんなをまとめて、見事な神奈川沖浪裏を完成させたのでした。

 文武両道の野上さんが進学したのは、進学校としても名高い厚木高校でした。進学校にいても、やっぱりサッカー漬けの毎日。3年生の時には10番をつけてエースとして頑張りましたが、国体選手との練習や強豪校との対戦などを通じて、プロに行くような人はやはりレベルがちがうと実感することにもなったのでした。

 ほぼサッカー漬けとはいえ、本を読んだりするのも好きでした。特に歴史が好きで、三国志も全巻そろえていた野上さんは、東洋思想、そして東洋医学にも興味を持ちました。西洋医学のように全てを分析的に考えるのではなく、すべてを統合的に考える東洋医学に惹かれたのです。また弟さんが気管支ぜんそく持ちで、家族旅行に行った時に発作を起こしたりするのを見る度に、子ども心になんとかしたい、と思っていたこともあって、医学部を目指すことに決めたのです。

 でも、受験勉強に本腰を入れたのは高3になってからでした。受験雑誌で、漢方医学を学べる医学部を探したところ、国立では富山大学だけでした。立山町に小学生の頃にサッカーの遠征に来たことがあったり、親しい友人が富山出身だったりしたこともあり、野上さんは富山に良い印象を持っていました。そうした縁もあり、野上さんは富山大学医学部を受験し、見事現役合格したのです。

 こうして、初めての地、富山へとやって来た野上さん。大学ではサッカー部とスキー部に所属し、サッカー部では全日本医科学生大会で準優勝2回、競技スキー部では距離競技3種目制覇など部活動を中心に住みやすい富山での生活を満喫しながらの学生生活を送りました。

 卒業後の専門を決める時、実は少し迷いました。和漢診療学にはもちろん興味がある。しかし、ずっとスポーツをやっていた野上さんにはスポーツ整形の方に進みたいという気持ちもありました。実際、野上さんはパッと見は漢方医というより、外科医といった方がぴったりくる印象です。   
けれど、和漢診療科のある富山大学医学部においてでさえ、漢方医学の道へ進む学生はあまりいません。野上さんの学年でも全くいませんでした。そこで思ったのです。「俺がやらねば誰がやる」と。昔から全体のバランスを常に考える性格でした。そして、それは悪くない、そう思っています。

 こうして和漢診療学の道を選び、今は現代医学ではよくならずに半ばあきらめた人たちが、和漢に出会ってから元気になっていくことに何よりやりがいを感じる毎日です。患者さんに、ありがとうと言ってもらえることに喜びを感じます。

 けれど、「なんで漢方やっているの?」と言われることがあるのも現実です。漢方医学が何か怪しいもののように思われていると感じることもあるといいます。日本の伝統医学をそんな風に言われるのはとても悔しい。漢方医学を正しく普及していきたい。和漢診療学という現代西洋医学と漢方医学の長所を生かす学問を究めて、現代医学の中でいかに漢方医学を活用するかを追求することが野上さんのテーマです。
 例えば西洋医学の対症療法で行くと、例えば咳が出て、めまいもしてというと別々のクスリが処方されてたくさんの薬剤を服用することになってしまうことが多いけれど、漢方はそうではありません。漢方では、咳もめまいも根は一つと考え、その根本に効く漢方薬を1種類、多くても2種類ほど処方することで患者さんの体調全般を整えることを目指すのです。
 周知のように、今日、1人の患者が多数の薬剤の処方を受けるpolypharmacyが問題になっています。一人の人間が何十種類もの薬を飲んだらどんな副作用が出るのか?はあまり研究されていないのが実情です。polypharmacy の問題は1人1人の医師が自分の専門領域を一生懸命治療する結果ではあるのだけれども、本来は必要最低限の薬剤で最大の効果を出すことが正しい医療。和漢診療学にはこの問題を解決するヒントがあると野上さんは考えています。
 また、漢方薬は高価、という印象が一般にはありますが、実は漢方薬はとても安いのです。漢方薬をうまく使っていけば、医療費を大幅に削減できる可能性があることを示した報告もあり、この点でももっと着目していくべきと考えます。日本にもともとある漢方医学と西洋医学をうまく連携させることで、これからの超高齢社会に備えることができる、いや、そうしていかなければならない。そのために野上さんは和漢診療学ができる医師を育成していくことも自分の役割だと思っています。

 漢方医学は実はプライマリケア向きだという野上さん。プライマリケアとは簡単に言うと国民のあらゆる健康上の問題、疫病に対し、総合的・継続的、そして全人的に対応する地域の保健医療福祉機能です。高度な医療機器を必要とせず、五感を活用して診療に当たる漢方医学はプライマリケアの現場にぴったりな医療です。最初にかかってなんでも相談できる地域の医師が漢方薬を使いこなして、多くの患者さんを治せたらとても素敵なことだと思います。プライマリケアの現場で、漢方医学を正しく認識してもらい、きちんと使ってもらうことが大切だと野上さんは考えています。
 でも実際は、今、富山大学の和漢診療科にこられる方は、多くの医療機関で治療を受けて十分な効果が得られなかったという場合が少なくありません。もっと早くに漢方治療を行えていたら・・・という思うこともしばしば。そんな患者さんを一人でも減らすことが野上さんの役割の一つだと考えているそうです。

 ただ、今、漢方薬の原料は国産のものはとても少なく、大部分を輸入に頼っているのが実情です。しかも、その輸入も、今、心もとなくなってきています。日本の各都道府県に適した漢方薬の原料を育て、国を挙げたプロジェクトとして取り組んでいければ…。それを実現させて、かつ、プライマリケアに和漢診療を取り入れていければ、高齢社会に突き進んでいく日本の医療を支えることができるのではないか・・・。
野上さんの漢方にかける情熱はとても大きくて、そして深い。そしてこれは素晴らしいプロジェクトになるのは間違いないのです。これは決して絵空事にしてはいけない、そう思います。

 そんな大きな志を胸に抱きつつ、日々のささやかな暮らしの中に感じる幸せを大切にしていらっしゃる野上さん。7歳と5歳の男の子のお父さんでもいらっしゃるので、今は子育てが何よりも楽しい時間です。何しろ子どもたちの成長は目を見張るほどです。1週間前にできなかったことが、できるようになるのですから。
そして、もうすぐ3人目のお子さんも生まれる予定です。これで、ますますお父さんの出番が多くなりそうですね。

 そして外来の仕事をしていると、患者さんがよくなっていく姿が目に見えることにとても幸せを感じる時間です。やはり、野上さんは人に接する時間がお好きなのだとつくづく思います。スポーツマンで人情に厚い、とっても素敵なお医者様。私も野上先生に漢方薬を処方してもらいに行きたくなりました。
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