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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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公益法人行政:大阪府法務課公益法人グループがホームページを刷新 [2023年03月15日(Wed)]

このたび、行政庁としての大阪府が公益法人のホームページを刷新しました。



スクリーンショット (281).png

【主な特徴】

・利用者が、求める情報にワンストップで到達できるよう、トップページに目的別のリンク(入口)を設置



・府民に、大阪府所管の公益法人がどのような活動を行っているのか知ってもらうため、公益法人の事業内容を紹介するページを新設(トップページから、「公益法人の取組の紹介」をクリック)



・日本ファンドレイジング協会主催の研修内容を参考に事務局が作成した、「効果的な寄附集めのポイント」資料を新規公開(トップページから、「府所管の法人へのお知らせ」⇒「効果的な寄附集めのポイント」をクリック)



・よくあるご質問(FAQ)を新設



・公益法人を目指す法人、公益法人、移行一般法人のための 府への各種申請等手続き



・ウクライナ避難民支援における大阪府公益認定等委員会からのメッセージについて

等々 ものすごい充実ぶりです。ぜひ、ご参照ください。
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公益認定法上の収益事業等と税法上の収益事業 [2022年11月25日(Fri)]

公益認定法上の収益事業等と税法上の収益事業とは異なる概念。


公益認定法上は


目的(=別表該当性)と「受益」の範囲(不特定多数性)(=まさに「公益」)に着目して公益目的事業が定義され、それ以外が収益事業等。


言い換えれば、公益目的事業と(収益事業等=非公益目的事業)とがある。


つまり、公益目的事業と非公益目的事業


これに対して


税法上の収益事業は


営利競合に着目して収益事業が定義され、それ以外が非収益事業


言い換えれば、収益事業と非収益事業


したがって、公益目的事業であると申請してきているものに対して、これは「公益目的事業ではないから」収益事業であるという論理はありえても、


これは「企業も行っているから(=営利競合であるから)」公益目的事業ではないということは論理的にあり得ない。


行政庁が公益目的事業を否認するときには、精緻な論理が必要です。


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令和3年度下半期での公益認定等委員会の開催回数 [2021年11月04日(Thu)]

 今年度も折り返し点を大分過ぎてしまいましたが、9月末までの内閣府公益認定等委員会、都道府県の各合議制機関の今年度の上半期の開催回数をランダムに内閣府のホームページから拾い上げてみました。


 全ての都道府県を調べたわけではありませんが、今年の4月から9月末までの委員会開催状況を調べたところによると、以下のようになりました。


内閣府 13回

佐賀県  5回

大阪府  5回

北海道  4回

高知県  3回

静岡県  3回

東京都  2回

〇〇県  1回


 あくまで内閣府のホームページ上での数字ですので、漏れがあったりすれば実際の回数と異なる場合もあるかもしれません。


 そういったことから1回だけの県もありましたが、県名は伏せております。


 また、回数が多ければ良い、少なければ悪いというものでもありません。今年はコロナの影響も受けているので、数字だけで何事かをを見ることは危険かもしれません。特にコロナ対応で、どこの委員会も開催が難しかったこともあるでしょう。


 私が内閣府の公益認定等委員会委員をしていたときには、移行期間中でもあったこともあって、通常は週1回委員会があり、多い時には週2回委員会を行っていました。それから思うと随分少ないですね。


 新規の申請法人が多ければ公益認定申請が増え、また既存の公益法人が社会のニーズに対応すれば当然変更認定作業が増えますので、回数は多くなってくると思います。さらに一般法人へと移行した移行法人も変更認可申請がありますし、各法人への立入検査報告もあるのでかなりの業務が発生するはずです。


 逆に問題の多い法人が多くても回数は増加するでしょう。



 このリストを見てまず思うことは、佐賀県公益認定等審議会が東京都公益認定等審議会の2.5倍に当たるの5回の委員会を開いていることです。


 6か月で5回ですから、ほぼ月1回のペースですね。この程度は各都道府県で審議を行っているものと思っていましたので、佐賀県が特別多いという印象はありませんが、意外な結果となりました。コロナの影響も大きかったのでしょう。



しかし、社会の公益ニーズは非常に大きなものがあると思います。この頻度では、機敏な対応がなかなか難しいのかもしれません。

皆さんはどのようにお感じになりましたか?

                             出口正之
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速報 内閣府が公益財団法人日本プロスポーツ協会に初の命令 [2020年02月16日(Sun)]

 内閣府は2月14日に公益認定法第28条第3項の規定に基づく「命令」を公益財団法人日本プロスポーツ協会に対して行いました。


 同法人が評議員会の定足数を満たすことができない中でガバナンスの問題が発生していたところ、内閣府は昨年11月22日に勧告を行っていました。それに対して、同法人は本年1月31日付けで報告書 を内閣府へ提出したものの、勧告の内容に応えていなかったことから、さらに内閣府が命令を行ったものです。


 従来、「勧告」や「認定の取消し」はあったものの、両者の間になされる「命令」は初のケースです。手続き的に「命令」を飛ばしていた形でしたが、今回、法が求める監督の手順をしっかりと踏み、果敢な判断を内閣府において行ったものと思われます。行政手続法との関係も明瞭であり、「命令」の内容も具体的で法人にも分かりやすいものと思われます。


 公益財団法人日本尊厳死協会の判決内容やガバナンス有識者会議の議論の影響が良い形で出ているものと思われます。期限については、時刻の指定まであります。法人としては公益法人としての矜持がしっかりあれば、対応できる内容となっているのではないでしょうか。


 なお、他法人にとっても極めて有用な内容ですので、本「命令」書をよく読み、これをを契機に各公益法人の理事会、評議員会、社員総会において、もう一度それぞれのガバナンスのあり方について検討してみてはいかがでしょうか。


日本尊厳死協会の判決。内閣府は判決を受け入れ、これを奇貨としてはいかがでしょうか。 [2019年11月07日(Thu)]

 控訴審で争われていた一般財団法人日本尊厳死協会の不認定処分に対する裁判で、国の控訴を棄却する判決が出されました。 内閣府にとっては耳の痛い話かもしれませんが、こういうことを通じて制度は改善されていくのでしょう。この判決を受け入れることで、これを奇貨としてはいかがでしょうか? 小生は非常に多くの人とこの処分について話し合いましたが、ひとりとして内閣府の不認定処分が妥当だという人はいませんでした。


 パソコンのOSも社会の制度も、最初から完全に出来上がるものではありません。「バグ」が生じることは当然あります。大事なことはそのような「バグ」に素直に向き合うことだと思います。


 新しい制度は、法人も行政庁も試行錯誤の状態だったはずです。誰もが間違いをおかさない超越的な存在でないことは言うまでもありません。行政庁が間違えることも想定して最終的には司法の判断に委ねることになっていました。今回の判決は旧制度と新制度との裁量権の比較を明確にした上での判決で、素晴らしいものだと思います。



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公益法人監督川柳 [2019年08月24日(Sat)]

公益法人に対する監督があまりにもひどいという声を受けて、公益法人監督川柳を作ってみました。どれが一番お気に入りですか?よろしければ、本投稿のコメント欄またはdeguchi at minpaku.ac.jp(atを@に変えてください)まで投票ください。また、新作もお待ちします。



@上げ下ろし 箸はやめたよ  爪楊枝

「箸の上げ下ろしの指導」を止めると言って始まった公益法人制度改革。

それ以上の無意味な指導に公益法人が辟易としていませんか?

従来にすらなかった事細かな指導は「爪楊枝」の上げ下ろしとまで言われています。


A使い過ぎ 誰が止めるの 2号規制

  公益認定法の52号の「経理的基礎及び技術的能力」は監督上何にでも使える最後の奥の手です。内閣府ですら法令違反状態が長らく続いた状況があるほど公益法人制度は混乱状態です。それにもかかわらず、法人側に法令違反もないのに「技術的能力がない」と多用過ぎてはいませんか?

   上記以外の内閣府法令等違反


B三基準 これ何のため 誰のため

  収支相償、遊休財産、公益目的事業費率のいわゆる「財務三基準」は三つセットで、相互に連関しながら、公益目的事業費用の拡大を目指したものです。それぞれをバラバラにした微に入り細に入りの指摘とその上での彌縫策の指導は、却って公益法人の無駄使いや混乱を誘発していませんか?

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公益法人にはどれだけの規程類がいるか:公益法人絶滅危惧種論 [2018年04月07日(Sat)]
 トルストイの「人にはどれだけの土地がいるか」という民話があります。主人公パホームは、出発点までぐるりと回って日没まで一日歩いた分の土地を安く売ってもらえるという約束を村長とします。パホームは、この土地も、あの土地もと思いながら欲張って歩きすぎ、日没のときにとうとう息を切らして死んでしまうという内容です。より理想とする土地の広さを追い求めた結果、パホームには自らを埋葬する頭から足までのサイズの土地だけが与えられたというオチまでトルストイはつけています。


 パホームの心境は文豪の筆に委ねるとして、公益法人の指導監督にパホームの心境が重なって見えたような気がします。柔軟な活動が期待されているとされる、公益法人にはどれだけの規程類がいるか、と。


 ちなみに公益法人の職員の中央値(メジアン)は5名。言い換えれば、職員数5名以下の公益法人が50パーセントを占めています。



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