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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。このブログでは、内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


期待される助成財団を目指せーー助成財団センターの催事に出席して [2018年02月10日(Sat)]
公益財団法人助成財団センターの「公益法人制度改革後の法人運営の課題と展望‐期待される助成財団を目指して-」に出席してきました。

公益財団法人山田科学振興財団の坂本達哉専務理事、公益財団法人電通育英会の小林洋一専務理事、公益財団法人セゾン文化財団の片山正夫常務理事、公益財団法人キリン福祉財団の太田建常務理事の四人の方から素晴らしい事例の報告がありました。どの財団も、創意工夫を重ねていることがよく分かります。
 いずれも企業とかかわりが深い財団ですが、「企業財団」と一括りにできない多様性があります。創業者の個人資産をもとにした財団もありますし、企業のリソースを積極的に生かしていこうとする財団もあります。言い換えれば「課題と展望」の解は一つではありません。それぞれの財団の行動に影響を与える「たくさんの要素を総合的に組み合わせながら自財団の公益の拡大のために最適解を探ろうとする努力」を四財団すべてから感じることができました。現場の理事さんに大いなるエールを贈りたいと思います。

他方で、制度改革前の指導監督、とりわけ財産運用についての指導監督に言及していた財団が複数あったことに驚きました。それと同時に、なぜ今このことを取り上げようとしているのかを噛みしめることが大切だと思います。

企業財団が数多く設立されていた80年代までは、国債で6−8%の利回りが普通でした。当時の指導監督は、公益法人の名称、定款(寄附行為)、事業のプログラム、理事やスタッフの人事、財団ならば基本財産の規模、社団ならば会費収入の規模まで事細かに指導(=お節介、過干渉)がありました。当時は、8%の金利を前提とした指導があったと思います。8%の金利というのは、今から思えば夢のような話ですが、他方で当時はインフレ・リスクを心配する方が普通でしたが、指導は将来のリスクまでは考慮せずに行われていました。

それで身動きができない形で多くの企業関連財団は船出を行っています。いくつかの例外を除けば、判で押したように、理事や職員は、助成の公募をして、申請書を集めて、コピーをしてホッチキスで止め、選考委員に送り、選考委員会で決めてもらいます。創意工夫の余地があるのは分厚い申請書を如何に上手にホッチキスでとめるかというくらいです。シーンとした静寂が流れる職場は、ホッチキス財団とか基本財産を守るだけの墓守財団だとか言われたこともあります。

そこへ低金利時代がやってきます。いくつもの要素を総合的に判断しなければならない現場とは異なり、指導監督は常に局所的に一つの要素だけの最適解を強要します。将来の環境変化も考慮されません。
当時は、財団の財産は、基本財産と運用財産というものに分けられていました(設立時は基本財産だけでスタートしたところも多かったと思います)。

【基本財産】
基本財産の管理運用は、安全、確実な方法、すなわち元本が確実に回収できるほか、固定資産としての常識的な運用益が得られ、又は利用価値を生ずる方法で行う必要があり、次のような財産又は方法で管理運用することは、原則として適当でない。(中略 適切でない例 外貨建外国債権)

【運用財産】
運用財産の管理運用は、当該法人の健全な運営に必要な資産(現金、建物等)を除き、元本が回収できる可能性が高くかつなるべく高い運用益が得られる方法で行うこと。
 【「公益法人の設立及び指導監督基準の運用指針」(平成八年十二月十九日公益法人等の指導監督等に関する関係閣僚会議幹事会申合せ)】


8%台を前提として、事務所の賃借料を支払うことを余儀なくさせられた財団が設立後10-20年程度経たところで低金利時代に遭遇したわけです。基本財産は「取り崩すな、元本保証」、運用財産は「元本が回収できる可能性が高くかつなるべく高い運用益が得られる方法」の絵空事を指導されていたわけです。また、定款(寄附行為)には、「安全かつ有利」な運用ということが指導で入れさせられていました。

役所のこの指導を守る方法はあります。「金利が下がれば事業を縮小すればよい、事業を縮小しても誰も怒らない。独立した孤立財団だから、出捐企業は事務所も遠く誰も関心を示していない。基本財産の額面だけ守っていれば、誰からも文句言われない。役所の指導に従っているだけだから……。何もしない何もしない。それが一番だ……。」中にはこう考える財団もあったでしょう。役所の指導に従う最も合理的な方法だからです。墓守財団の由来でもあります。

しかし、気骨のある財団も多くありました。主務官庁が具体的に指導していたという証拠まではありませんが、個人資産をもとに設立された財団の多くは6−8%の国債が満期を迎えた後、コンサルタントなどは「円建て外債」を勧めていました。墓守に徹する以外は、それしか選択肢がなかったのかもしれません。やる気のある財団はこうした「円建て外債」や「仕組債」に挑戦していました。

やる気のある財団は指導監督基準にしたがった中で、金融危機に直面しました。いくつかの国のデフォルトの影響から回復しておらず、さらにリーマンショックが襲った直後に、公益法人制度改革を迎えています。その間の御苦労は如何ばかりかと思います。

少なくとも財産運用については改革によってこの呪縛から解放され、現場の創意工夫を思う存分に発揮されています。かつてホッチキス財団や墓守財団と揶揄されたものとは大きく異なり、それぞれが最善策を考え、それぞれが違った解決策を提示してくれています。当然ですが、解は一つではないのです。

リスクを取ることを放棄しては、民間公益セクター(政府税制調査会)の存在意義はありません。政府にできないこと企業にできないことをしてほしいという期待感が税制度に表れているのです。「民間が担う公益の拡大」のために、挑戦している四財団の理事の方々に改めて拍手を送りたいと思います。「期待される助成財団を目指して」というサブタイトルに込められた思いにとても合致していました。

企業のCSRやCSVの動きも活発化し、企業関連財団を気にしてくれるステークホルダーが増えたことも環境要因としてはプラスに働いていると思います。

ちょっと世界に目を向けましょう。「フィランソロピーの黄金時代」を迎えています。財団の仕事はとても面白く、やるべき課題がたくさんあります。民間ならではのプログラムを作り上げ、多様な手段による多様な解を示していくことに大いに期待したいものです。
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