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川北秀人on人・組織・地球

「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を目的に、市民団体(NPO)・社会事業家(ソーシャル・アントレプレナー)や社会責任(CSR)志向の企業のマネジメントの支援や、市民・企業・行政の協働の支援などに奔走する、IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者の毎日の、ほんの一部をご紹介します。


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持続可能性を高める経営者を育てよう [2015年12月03日(Thu)]
今年も早くも12月。例年この時期にはエコプロダクツ展に合わせて併催される
環境・社会報告書シンポジウム」について紹介させていただく
時期でもある。が、主催者の方針が変わられたとのことで、非常に残念だが、
昨年までで終了となった。
世界で初めて、環境・社会報告書について「読者」の側から見た調査であるとともに、
イギリス、ドイツ、中国をはじめとする海外との比較も行った、類例のないものだった。

それにあわせて、ということではないのかもしれないが、同じく「緑のgoo」で
2000年春から担当させていただいてきた「環境・社会コミュニケーションの
考え方・進め方
」という連載も、突如、終わることになった。

9月下旬に、毎月末の締切に合わせて準備を進めていたところ、
長く制作をご担当くださった(別の)会社(=代理店さん)の方から、
「『今月で終わることになった』という連絡がきた」というご連絡を
いただき、あわてて下記の原稿を書いた。

しかし、サイト運営会社側から、掲載を拒否されたため、「最終回」を
迎えることができないままに、2か月余りが過ぎた。
もう、同社に義理立てせねばならない「時効」は過ぎただろうと思うので、
その原稿を、ここで紹介させていただくことにしたい。


         最終回 持続可能性を高める経営者を育てよう

 2000年4月から担当させていただいてきたこの連載が「終わることになった」と、制作をご担当くださっている会社の方からご連絡いただいたのは、1週間ほど前(※注1:上述の通り9月下旬)。その少し前に「(サイト運営会社は)引き続きお願いしたいというご意向」と伺っていたので、心づもりも備えもなく、最終稿を書くことになった。
 現時点で、サイト運営会社の方からは、まったくご連絡いただいていないので、経緯や理由はわからない(※注2:その後、10月2日にご担当者から同社内の事情を記された20行ほどの電子メールが届いた)。そんな経緯なのに、このテーマには無理があるとお感じかもしれないが、しかし、本連載を読み続けてくださった方への「遺言」は、これしかないので、どうかご容赦いただきたい。

 改めて、この連載で取り扱ってきたテーマを、ご覧いただきたい。今では当たり前のように受け止めていただけるようになったことがらについて、見通しをもとに、必要性や背景と、実施するうえでのポイントを述べ続けてきた。内容のご評価は読者のみなさまに委ねたいが、テーマの選択に間違いはなかったと信じている。

 最後に取り上げるべきテーマは、持続可能性を高める経営者を育成する必要性が、かつてないほどに高まっている、ということだ。

 本連載でも繰り返し述べているように、内側から見ても、外側から見ても、これからの日本が置かれる状況は、これまでより厳しくなる。
 国内では、1990年代の半ばに始まった「高齢化社会」が、65歳以上が増加する第1幕を終え、今後は「4人に1人が要介護3以上」という85歳以上が加速度的に増える第2幕に突入した。1995年には、85歳以上を支える15歳から64歳までの生産人口は55人いたが、2015年には15人、2035年には6人にまで減ってしまう。その2035年時点での85歳以上は1000万人を超え、人口の11人に1人は85歳以上、3人に1人は65歳以上という社会が訪れるまで、あとわずか20年しかない。

 世界市場から日本を見ても、1960年代半ば、前回の東京オリンピックの際に約5%だったGDPの世界シェアが、1980年には10%、90年には13%と着実に拡大し、1994年には18%にまで達して世界全体の2割近くまで占めた。しかし2010年には「世界第2位」を中国に奪われ、同年8%のシェアは今年6%を切り、次回の東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には5%にまで下がる。つまり世界における日本のシェアは、2回の東京オリンピックの間に、一度は3倍以上にまで大きくなったものの、もはや元の水準に戻ってしまっており、今後、それが回復できる見通しはない。
 世界を市場とする日本企業にとって、70年代と80年代は「日本でつくって世界で売る」という「市場の国際化」、プラザ合意を経て円高が進むと90年代と2000年代は「世界でつくって世界で売る」という「事業の国際化」、そして国内市場の成熟化と途上国での中流世帯層の拡大を受けて、2010年以降は、世界の多様な市場で買ってもらい続けるために「世界で考えて決め、世界でつくって世界で売る」という「価値と組織の国際化」が求められていることは、改めて指摘するまでもないだろう。

 つまり、国内では「子育ても介護もしながら働き続けられる組織・地域」であり続けるために、ホワイトカラーやサービス業(特に行政職員!)の生産性を高める、特に、会議など意思決定に要している時間を、ICTを活用するとともに、手続きも思い切って簡素化することで、大幅に削減する必要に迫られている。一方、世界市場におけるシェアを守り、拡大したいと望むなら、成熟した国内ではなく、競争が厳しさを増す海外での売上を増やし続けるために、世界の多様な人材を、経営層を含む組織のすみずみで活かせる風土を育てるしかない。

 これらはなにも、特定の国の政府や国際機関、あるいは団体から求められて対応すべきことがらではなく、企業としての成長を持続可能なものにするために、必須の基本的要件であることがおわかりいただけるだろう。
 筆者をはじめとするNPOが、環境や人権への取り組みの進化を求めるのも、センチメンタリズムではなく、その会社と社会(正確に言えば、地域から世界まで)が、目先の利益を得るだけでなく、中長期的に持続可能であり続けるための要件だからだ。

 優れた経営者として評価の高い方にお会いすると、こういった考え方や進め方を細かく説明する必要なく、共有し、次に求められる具体的な施策について、各論でお話しすることができる。
しかし、その会社の中で実績はおありなのかもしれないが、業界団体や国際社会から見て、名を残せないままで終わられてしまう経営職層の方たちは、残念ながら、それが法令化されても、同業他社が動き出しても、「なぜそんなことをせねばならないのか」と平然と口にされる。それは、その会社自身にとって、持続可能性の向上を損なってしまっていると、とても残念に感じる。

 社会責任(Social Responsibility)への取り組みは、制度的・義務的に迫られた責任に受動的に応じるのではなく、制度化も義務化もされていない期待に積極的に応えることから始まる。その姿勢は、経営層を担うようになってからといって身につくものではなく、それまでに感じ、実践から学び、力を育てるものに他ならない。
だからこそ、企業のみならず、行政でも、私たちNPOでも、セクターを超えて普遍的に、自らの 組織と社会の成長の持続可能性を向上できる人材が経営層を担えるように、育て続ける必要がある。CSRの主管部門にとって、最も重要な仕事は、アンケートに回答することでも、全社会議の事務局として「外圧」の説明と対応のお願いをすることでもなく、社内外の持続可能性を向上できる人材を育てることだ。
 奇しくも国連で、日本にとっても最も厳しい時期である2020年代を俯瞰した「2030 agenda for sustainable development」が採択された。developmentは「開発」と訳されてしまっているため縁遠く感じる人が多くて困るが、「成長」と訳せば必要性の理解が高まるだろう。あなたの組織が、自身のみならず、社会にとっても、持続可能性を高める存在であると評価され、顧客に支持され続けるために、経営層を育てよう。

 これまで15年以上の長きにわたって、ご愛読くださったことを、重ねて深くお礼申し上げたい。本当にありがとうございました。
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