<Ontario 湖に隣接する家。湖の水が冷気で凍り家の一部が氷の世界でした>
幼稚園や小学校の絵本・おはなしの読み聞かせで,日本語の文を読みそれをクラスメイトと意見を交わしながらその内容を学習するといったことは,日本じゅうどこの学校でもある風景です。一方で,手話で表現されたお話をクラス内で議論しあうクラスはどうでしょうか。パワーポイントで日本語を入力・作成したものを黒板や白板に映し出して,それを手話を使って進めるのは,手話の授業ではありません。日本語を一切使わないで手話のみでストーリーや議論を進めていくクラスです。このクラスを取り入れているろう学校は,一体全体,日本でいくつあるのでしょうか。文部科学省のデータによると,日本には118のろう学校 があります (2014年現在,分校含む) 。その10%の11校にも満たないか,それぐらいのろう学校が取り入れているとなると残りの90%のろう学校は,手話より日本語が上という “位置づけ” という考え方になりますね。手話は日本語に劣らず,他の言語と同じ位置づけにあります。
今年は4月に雪が降りました。Rochesterは気温の上下があいかわらず激しく,5~10度の日の2日後に一気に25度まで上がり,そこからまた2日間で10度ぐらいに下がることもしばしば。
<20度前後の春が来るのは5月上旬でしょうか>
さて本題です。
『オオカミ少年』という話をご存知でしょうか。村にある少年がいて,その少年は退屈な日を過ごしていました。退屈な彼が思いついたのは, “『オオカミがでた!! 』 とウソを叫んで,慌てた村人を見て笑って楽しむ” ことでした。少年は2回,このウソで村人をパニックにさせ,それを見て楽しんでいました。しかし,2回目のあと,本当にオオカミが現れて,『オオカミが出たー! 』と叫ぶが,村人たちは今までのことでそれが嘘だと考え,少年の助けに応えませんでした。その結果,少年はオオカミに襲われてしまったというストーリーです。このストーリーに似たものが手話で表現されたものがあります: “The Wolf Who Cried Sheep” by Ben Bahan の動画のURLを下に用意しておいたので,鑑賞して下にある質問に答えてみてください。
8分の手話の動画ですが,これをクラス内で議論しました。この議論中に出た,先生からの質問は
- 1. 登場するのは何?
- 2. どんな風景設定で,何がどこに住んでいて,その場所は? (手話で指さししながら)
- 3. 手話で (札幌 に似た表現) これは何?
- 4. ヒツジ村はどんな村?
- 5. 手話 (上から村を見るシーンからパーにした両手で窓を表すシーンに移行する) これはどんな動き?
- 6. ヒツジ村の登場人物はだれ? それぞれの仕事は?
- 7. Mayor ってなに?彼の仕事は何?
- 8. Mayorの仕事場に来るヒツジの手話 (何かをつかむしぐさの手の形から, “1” の手の形に切り替わる) は何を表している?
- 9. Mayorの家に突然やってきたヒツジの特徴は何? 性格は何?
- 10. 何が起こったのか? 対応法は何?
- 11. Whisperer って何?どんなもの?
- 12. オオカミ村の設定にうつり…どんな所に位置している?
- 13. オオカミの登場人物は何人? どんな特徴? どんな仕事? どんな性格?
- 14. “Sheep!!” と叫んだオオカミの仕事は何?
- 15. なぜ “Sheep!!!” と叫んだ?
- 16. “Sheep!!!” という叫び声を聞いて,問題13のオオカミたちはどうした?
- 17. 問題14で叫んだオオカミのところに,問題13のオオカミがたどり着いたときに見たものは何?そしてとった行動は何?
- 18. 今の状況の設定はヒツジ村?オオカミ村?
- 19. なぜ2回目 “Sheep!!!” と叫んだ? 1回目の叫びとは違う理由?
- 20. 2回目のウソが発覚したときのオオカミの反応は?なんて言った?何をした?
- 21. 問題20の対応を見て, “Sheep!!” と叫んだオオカミは何を感じた?
- 22. 再びヒツジ村に戻って…新たにだれが出た?どのように村にやってきた?どんな特徴?
- 23. どこでそのヒツジと村人みんなで会議をした?
- 24. その会議の内容は何?
- 25. Whisperer は今まで何をしてきた?
- 26. オオカミ村に戻り…何が現れた? Whisperer はどのように表れた? ナゼそのような手の形で表現しているのか?
- 27. オオカミ村で3回目の叫びのときの他のオオカミの反応は?
- 28. オオカミたちが見たものは何? 誰が運転していて誰がのっていた?
- 29. オオカミの子どもがさらわれたとき,オオカミ村の人たちが “ Sheep!!!” と叫んだオオカミのいるところで,見たものは何? それを見て何と言った?
- 30. なぜWhisperer は耳栓をしたのか? なぜ甲高い声で叫んだのか?
- 31. その甲高い声 Baaaaaaaaaaaaa 1回目のオオカミたちの反応は?
- 32. その後どうなった?
- 33. どのように倒れてしまった?
- 34. その後Whisperer はどうした?
- 35. ヒツジ村に戻って… オオカミの赤ちゃんたちをどうした?
- 36. 問題9でやってきたヒツジは,オオカミ赤ちゃんにどんな対応をとった?
と約8分の動画の中に,こんなにたくさんの情報が盛り込まれていました。上の問題のうち,3つは生徒からの質問ですが,それ以外は先生から出された問題でした。それに答えるのも,なるべく生徒に応えさせる。先生はこれぐらい質問を引き出せないと,生徒は十分に学習できません。生徒が理解できていないということは,100%先生に責任があるのですから,そこは真摯に受け止めてもらいたいです。流れは,
全体を見る(ストップなし)
↓
状況ごとに区切って動画を見る
↓
その手話は何?一語一語を聞く
↓
状況ごとの動画を見て部分復習
↓(くりかえし)
最後に,全部をもう一度見る
です。Chris教授は,生徒に学習させる際,単語や文の内容をまず学習させるのは大変な間違いであると,下の絵をみんなに見せてくれました。
まず全体 (IDEA) から学習すべきであるとおっしゃっていました。書記言語が身についていなく,手話言語が身についている生徒には,
1. 上の手話言語(SL) のアイデア (IDEA) から入って
2. その中間の文など部分的なところ (PARTS) を学習させ
3. 手話単語 (VOCABULARY) を学習させる
その後
4. 下の書記言語のVOCABULARY に橋わたしする
5. その後,下,下へといき
6. 最後に書記言語のアイデアを学習させる
ことが大事と言っていました。成人である私たちが1時間もかけて議論したのですから,ろうの子どもたちは数時間かけて議論していく必要があります。
ちなみに, 「オオカミ少年」を英語でいうと “The Boy Who Cried Wolf” なのですが, cry は叫ぶという意味です。題名を日本語に翻訳すると “cry” が省略されるのはなぜでしょうか。(2015年11月の生活記録の今回のひとことも参照)
今回の一言 <アメリカのダメだこりゃシリーズ>
(今回は長いため おやすみ)