第125話 竹の開花現象[2009年04月30日(木)]
昨年千里丘陵の竹やぶで間伐していたところ、モウソウチクに花が咲いたあとの稲穂のような竹が見つかったそうです。このことを箕面だんだんクラブのNさんに話したところ、2、3年前に能勢でモウソウチクの花が咲いているのを見たというのです。
上田弘一郎博士は「マダケでは、記録などから見ると120年前後と推定できる。60年周期説もあるが、この場合、同一人の目で確認できるはずだが、その報告のないことが気がかりである。ここで気をつけたいのは、開花した竹林の中で、そのとき咲かなかった一部のタケが後になって開花したとき、もとの大開花との間隔年数は周期といえないことである」といわれています。
マダケの開花が60年周期としても、花が咲くのは珍しいことです。竹の開花現象について調べてみました。
モウソウチクに花が咲いた!
モウソウチクは10メートル以上の高さに葉が茂っていますから、花が咲いたといってもなかなか見つけられるものではありません。たまたま竹林の間伐作業をしたところ、その間伐した竹の中の1本は写真1のようになっていて花が咲いたあとのようでした。

写真1上段:間伐したモウソウチクの全体
中段:近づいてみた竹の花
下段:接写した竹の花
竹の花と稲穂で検索してみると、三田市の農家の敷地内に「2007年6月中旬にマダケの花を咲かせているのを発見。同月下旬には、花が稲穂のような形で節々から横方向に伸び、満開」になり、兵庫県立人と自然の博物館で展示されていたと神戸新聞に掲載されていたようです。
モウソウチクの花
世界大百科事典で「竹」を調べてみると、「花の形態からはイネ科に所属されるが、栄養器官の特殊性を重要視する意見によれば、タケ科として独立させられる。タケは単子葉植物でありながら、稈(茎をさす)が木質で多年生になる特異な生活型を有し、また葉に葉柄があって葉鞘(ようしょう)につながり、主として地下茎で無性的に繁殖し、開花はきわめてまれである」と書いています。
「花の形態からはイネ科」とあるので、イネの花を「イネの一生」(守矢 登 著 あかね書房)から引用しました。

写真2:イネの花(イネの一生から)
モウソウチクの花は「もうそうちくのおやこ」(甲斐 信枝 作、福音館書店)の絵本から引用しました。

写真3:モウソウチクの花(「もうそうちくのおやこ」から)から
上田博士の「竹と暮らし(小学館創造選書)に、「竹やササの花は、たいてい6〜7月ころに咲き、イネの花に似て花弁がないので地味で、雄しべが外にぶら下がり、なかに雌しべがある。
日本に広く育っているモウソウチクは、二百数十年まえに中国から渡来したといわれている。この竹の開花には、今まではマダケのような一斉的な全面開花とちがい、部分的に点々と咲く程度であった。
ところが大正元年(1912年)にモウソウチクの部分開花のとき、横浜市郊外で種子をとって播き、生えた実生苗を植えつけ、その後に京都大学演習林の上賀茂試験地に分植したところ、その子孫が昭和54年(1979年)に、横浜市郊外の親元と共に、同時に、すべての竹に花が咲いて枯れたのである。
竹林の竹のすべてが咲いたのは、はじめての珍しい現象で、この間隔が67年に当たる。これが周期といえるかどうかは、今のところわからない」と書いておられます。
マダケの花
上田弘一郎博士の「竹のはなし(PH研究所)」によると、「竹に花が咲くとたいてい枯れてしまう。これは竹にとって大きな災難といわねばならない。竹はふだん地下茎の芽が大きくなって竹になり殖えていく。
つまり、からだの一部分がふくれて竹になり、無性的に殖えていくのである。だから花を咲かせなくても子孫を殖やしていけるのに、稀に花を咲かせ、しかも枯れてしまう。じつにミステリーに富んだ出来事である・・・・・・
日本に広く育てられている有用なマダケは、過去の記録から見ると、およそ120年目に1回花を咲かせることになる。昭和40年から43年ごろにかけて全国のマダケ林がみんな一斉に花を咲かせて、竹も地下茎も枯れてしまった。枯れたマダケの数は、じつに7億本をこえ、大きな災害であった。そして花が咲いても実をむすばなかった。
これでは子孫全滅かと心配された一大事件である。ところが幸いに再起が見られたのである。すなわち花が咲くと、地下茎は2〜3年間生きていて、そのあいだに、小さいササのような若竹を出し、それがもとになって、だんだん太り地下茎と花の咲かない大きな若竹を出してよみがえり子孫が殖えてきた。そして十年もたたないうちに、もとの大きさの、花の咲かない竹林に復活した。
いわばマダケの一斉的な開花に伴う枯死は、竹にとっては、たいへんな災難であったが、地下茎をもとにして、花の咲かない竹を出して再び立ち上がることができた。この再起力には心をうたれるものがある」と書いておられます。
そのマダケの花が朝日百科「世界の植物・種子植物[」にカラー写真で掲載されていましたので、引用しました。
「円筒形で、長さ4センチから10センチ。10片前後の重なりあった包のなかには、数個の小穂がある。雄しべは3個」と解説しています。

写真4 マダケの花穂(撮影 矢野 勇)
メロカンナの実
昨年7月の「さとやまSTEP UP研修」の竹林の講義の中で、京都大学フィールド科学教育研究センター柴田昌三教授が、インド・ミゾラム地方に出向いて、インド原産の竹類、メロカンナの開花の調査をされたときの話を聞きました。
今回「竹の花」の資料を調べた中で、上記「朝日百科」の中で上田博士が、インド原産のタケ・ササ類のメロカンナのことを書いておられましたので、引用してみました。
「この種は、花はめったに咲かないが、開花したときには穂に種子はつかず、その枝の別な部分にイチジクの実くらいのいわゆるむかごがつく。これが成長して、やがて地表に落下し、根を出して若竹となるのである。地下茎の伸び方は連軸型だが、1メートルも伸びるので、地上では稈がばらばらに立つ。
1959年インドのアッサム、そして1961年に東パキスタン(現バングラディシュ)のカルナフーリーを旅したが、このときメロカンナ・バッキフェラの開花その他をつぶさに調査する機会に恵まれた。
日本のマダケに似ていて、稈の肉が薄く、直径は3センチから8センチぐらいだが、葉は大きく、筍は連軸的に夏ごろ出る。インド、バングラディシュのほか、ビルマの奥地つづきに広く分布し、パルプ材として利用されている」。

写真5 メロカンナの実(朝日百科より)
竹の花が咲くと不吉の前触れか?
上田博士は、先の著書の中で「竹やササに花が咲くと、たいてい枯れるので、開花病だといったり、不吉の前ぶれだと、今でもいうものがある。あるいは病気と早合点してあわてて薬剤を散布したとのエピソードがある・・・・・・。竹の開花枯死は生理現象であるのに、これだけ誤解のあることは放任できない」といわれています。
また、「ものと人間の文化史10『竹』(室井 尺〈博〉法政大学出版局)のなかで「昭和45年は関西、四国、九州のネザサの大開花があり、全面的に開花枯死した。この奇現象をめぐって各新聞、テレビ、ラジオなどを通じて豊凶の両説がとび出したが、いったいどういうことであろうか。
古く延書式などでは豊年の兆といったが、後には凶作の前兆というように傾いてきた。
しかし、昭和45年度はあれほどネザサが開花枯死したのに有史以来4番目の豊作ということであるし、さらに、2、3年らい各地にマダケがさかんに開花するが、ここ数年らいまれにみる豊作である。こうしたことから凶作説も薄らぎ、むしろ豊作説へかたむいたことであろう」と書いておられます。
竹に関する文献を引用しながら、めったに見ることのできない竹の開花現象についてまとめてみました。
上記に書いたように、竹の花が咲くとたいてい枯れてしまいます。竹の開花現象をまとめたのを機に、私が担当してきたブログも枯れて(閉じて)しまうことにしました。
マダケの枯れた竹林が10年も待たずに元の竹林に復活したように、いつの日か再起したいと考えています。そのときは、今まで書いてきたような長々とした記事でなく、簡潔で枯れた味わいのある記事が書けるように励みたいと思っています。
いままで、公開した記事を読んでいただいた皆さん、さらにコメントまでいただいてきた方々、大いに励みになりました。
また、下書きの原稿に意見をいただき、話題や資料等を提供していただきたりして、何とか第125話までたどり着きました。
心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
(平成21年4月30日)
追伸
5月5日から、個人ブログの方で四季折々の話題を書き始めました。
箕面だんだんクラブの個人ブログのタイトルは「四季折々」です。
アドレスは「http://blog.canpan.info/masataka/archive/2」です。
よろしくお願いします。



