第122話 タケノコと地下茎[2009年04月02日(Thu)]
今店先には竹の子が出回っています。タケノコ掘りの季節です。タケノコとして掘り出さず竹として生長させると、1日中(24時間)に121cmという記録があり、タケノコは約3ヶ月で大人の竹になってしまいます。
日本で最大モウソウチクは直径20cm、高さ22mの記録があるそうですが、近隣の竹林の間伐作業で測定した結果では12mでした。
それにしても、このスレンダー(ほっそりしたさま。すらっとしたさま)な竹が、強風になびきながらも、10年近い古竹ならともかく、若竹で7,8年くらいまでは倒れずに立っています。よほど地下茎がしっかりしていないと自立できないはずです。
タケノコと地下茎の関係を調べてみました。資料として、主に世界的にも有名な竹博士・故上田弘一郎・京大名誉教授の著書「竹と暮らし:小学館創造選書」「竹のはなし:PHP研究所」「竹づくし文化考:京都新聞社」を利用しました。
タケノコの漢字「筍」の語源
上記著書「竹のはなし」によると、「タケノコのスピード生長については、中国人はさすがに昔からよく知っていたようだ。タケノコの漢字『筍』の語源は、二旬(十日間)で竹になる、の意味だといわれる。
たとえば、『筍の刑』というのがあるが、『たくさん出そろっているタケノコの上に、囚人を横にしてのせる。するとタケノコの力強い生長で、からだが宙にあがり、囚人はその痛さに耐えかねて白状する』ということ」と書いています。
タケノコの成長
竹が伸び盛りの時には、1日中(24時間)に1メートル以上伸びます。
この生長について上田博士は「竹はどの節間(節と節の間)にも節の上側に生長帯があって、どの節間も生長するので、タケノコの生長は各節間生長の合計となる。また昼も夜も1日中休みなく伸びていて、さらにタケノコの生長を助けるものに竹の皮(タケノコの皮)がある。なお生長の促進物質(チロシン、カイネチン、ジベレリンなど)があることも分った。タケノコのすばらしい生長は、これらの総合的な助けでおこるのである」と説明されています。

写真1上段:若竹も古竹もほぼ同じ高さのモウソウチク
下段:掘りたての大きなタケノコ
タケノコが伸びきると、稈(かん:稲・竹などの、中空になっている茎、出典・大辞泉)には形成層がないので、なん年たっても少しも太らない。先端の毎年の伸びも木と違い、稈としては伸びず、小枝のようにきわめてわずかなものが多いのです。
写真1上段のように、竹林の梢を見上げても、何年物の竹なのかは判断がつかない、同じような高さの竹がそびえています。
タケノコの生長
「こんなに伸びる植物は、永年生植物では竹以外にないであろう。竹はまさに世界一の伸びぶりといえる。ところで、植物の生長には、動物と同じように有機養分が必要であるが、こんなに生長するのに、どうして養分が吸収され、そしてすぐ有機養分をつくれるのであろうか」という問題提起をして上田博士は、
「ふつう、『竹』とよんでいるのは、地上に立っている地上茎のことである。日本の竹は、土中の地下茎(俗称、鞭根:べんこん)に連なっている。地下茎は土中にあるので、人の目に見えないが、大切な役割を果たしているのである。すなわち地下茎の節には一つずつ芽がついていて、この芽が地上に伸び出ると、タケノコから若竹に生長する。また土中に伸びたものは地下茎となる。なお地下茎には養分を貯えていてタケノコの生長を助ける。さらに地下茎の各節から数本の根を出し、この根は養水分を吸収する」と説明しています。

写真2:地下茎とタケノコとのつながり(09年4月1日撮影)
写真2は、「地下茎とタケノコとのつながりがどうなっているか」を撮影しました。
写真中央のタケノコの右下から地下茎に繋がっているのがわかります。タケノコの裏側の左右は地下茎の一部ですが、この地下茎が邪魔になって竹の子掘りを難しくしています。
写真3は「もうそうちくのおやこ:甲斐 信枝 作、福音館書店1980年5月1日発行」の絵本で、「たけのこは こどもをうむために ちかけいを つちのなかに のばしています、たけのこは そのちかけいからうまれてくるのです」とこの絵を説明しています。

写真3:もうそうちくのおやこ(甲斐 信枝 作)から
地下茎と根
モウソウチタや、ハチク、マダケは、ふだんは土中の地下茎(根でない)の芽が伸びて、竹と地下茎になります。だから子孫繁栄のもとは土中の地下茎にあり、地下茎は大切な繁殖器官なのです。
タケノコを掘っていくと、その付近には網の目のように地下茎が広がっています。この地下茎は、写真4のように地面に顔を出していることもあります。

写真4 地面に顔を出している地下茎
地下茎は写真4に見られるように、節がありますが、竹の稈のような中空になっていません。
ふつう地下茎の太さは、稈よりも細く、稈の太さの2分の1から3分の1です。しかし、なかには地下茎はふつうの太さなのに、稈のほうが細いものがあるが、これは老齢の地下茎の芽が竹となって伸びたものです。
地下茎の芽は、どれも同じような形をしているのに、ある芽は地上に伸び出て竹となり、ある芽は土中に伸びて地下茎となります。
京都大学フィールド科学教育研究センター柴田昌三教授は「さとやまSTEP UP研修」の竹林の講義の中で、「地下茎の芽は、2年目は553、3年目402、4年目で220、5年目は156、6年目51、7年目で23、8年目には31もある」と文献の資料を紹介されていました。
この数字から見ると、2年目から5年目くらいの親竹からタケノコが多く出てくるようです。なお、竹林の中の地下茎は6年生以上のものは差し支えないが、それ以下のものは、タケノコを生む力があるので、切り取ると若竹の生産力が低下するので気をつけたいとも言われています。
竹の地下茎は毎年先へ先へと枝分かれ状に伸び広がります。寿命は10年(竹)〜6年(ササ)くらいですが、毎年生死が繰り返されるので、毎年同じぐらいの生きた地下茎が広がり、この延長は竹の種類や土質などで違うが、土中の地下茎を解きほぐして、つなぎ合わせてみると、その延長は、100平方メートル(1アール)当たり、稈の太い竹の林では少ないところでも250メートル、多いところでは1,870メートルに及び、地表下80センチの深さに広がっているそうです。
根は地下茎の節から出ている細いもので、長さは1本で短いのは30センチ、長いのは2メートルぐらいあります。稈の根元から出ているのも根であり、多いのは、竹1本に1400本もあります。
写真5は稈の根元から出ている根を写しました。

写真5 稈の根元から出ている竹の根
地下茎と根の役割は、地下茎は養分を貯えてタケノコを生むが、根は養水分を吸い上げ青葉におくる役目をしています。
竹林による防災
上田弘一郎先生の「竹のはなし・竹筋コンクリートで防災する」のなかで、「竹林では、竹は地上では1本1本独立しているように見えるが、じつは土中の地下茎にからだつづきに連なっている。そして地下茎は毎年枝分かれして伸び広がり、一方、地下茎の芽が地上に伸び出して竹になり、年齢の違う地下茎がからだつづきで家族的な集団となっている。だから1本1本が別々に離れて立っている木とは、まったく趣を異にする。
かつ竹林では、いくつもの家族が同居し社会生活をおくっている。試みに土中を掘りおこしてみると、地下茎が連帯的な広がりとなっている。一つの家族分は、マダケ林で地下茎の延長が100〜150メートルあり、他の家族と交錯して土中に深くネットを重ねたようになっている。いわば永久に壊れない分厚い竹筋コンクリートの体制となる。こうして、人工ではとうてい防げない大きな山崩れなどの災害を最小限度の被害にくいとめるのである。この力は、竹と地下茎による強い連帯協同力にほかならない・・・・・
根が竹稈の土中基部と地下茎の節から出ている。その数は竹梓では土中の基部から一本当たり300〜1400本で、その根の1本の長さ50〜220センチ。また地下茎には各節に7〜25本の根がついている。こうして、土中は多数の地下茎と根でみちていて、土をしっかりつかんでいる」と書いておられます。
写真3の絵では、1本の親竹にその地下茎と根が描かれていますが、竹林では土中で多数の地下茎と根が網目状に広がっていて、親竹と堅く結びついているとともに、地下茎のネットワークで雨水を土中にしみこませて土砂の流出を少なくするほか、土砂崩れを防いでいるのです。
(平成21年4月2日)




