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第99話 ゲリラ豪雨[2008年08月29日(Fri)]


 今年の夏はゲリラ豪雨による痛ましい事故が相次いでいます。
 7月28日、神戸市灘区の都賀(とが)川では水位が10分間に1.3メートルも上昇し、小学生ら5人が濁流にのまれて亡くなりました。

 8月5日には東京都豊島区の下水道内で作業員5人が、退避する直前に予想を超える速さで迫った濁流に巻き込まれました。また、16日には栃木県鹿沼市で冠水した市道に車が水没、119番に助けを求めたが、ゲリラ豪雨で通信指令がパニックで正常な判断ができず助けられなかったという痛ましい事故が発生しました。

 2年前の2006年8月22日には豊中市で1時間に110ミリを記録、278戸が浸水したし、昨年の7月16日には富田林市で1時間に120ミリ以上を記録しました。

 集中豪雨という言葉が公に使用されたのは1953年(昭和28年)8月14日から15日にかけて京都府木津川上流で発生した雷雨性の大雨のときからですが、近年の集中豪雨は、(1)降雨の範囲が大変に局所的である(2)降雨時間が短い(3)単位時間当たりの降雨量が多いといった特徴から、ごく限られた範囲に集中して一度に降る都市型のゲリラ豪雨と言われているようです。

 都市部でおきるゲリラ豪雨について考えてみました。


1 時間降水量50ミリ以上(非常に激しい雨)

  数日前の毎日新聞によると、「局地的な『ゲリラ豪雨』、都心では平年の3倍も多い雷、そして突風被害−−。日本列島は今夏、例年以上の異常気象に見舞われた。地球温暖化の影響なのか、今年だけの現象なのか」と報道しています。   

 気象庁が平成16年11月25日に報道資料として発表した「平成16年夏から秋にかけての集中豪雨・台風等について」によると、
「平成16 年は各地で短時間強雨や大雨が頻発しました。今年11 月24 日までのアメダスのデータをみると以下の状況でした。




    図1−1時間50ミリ以上・日降水量400ミリ以上の発生回数

・ 1 時間降水量50 ミリ(※1)以上の短時間強雨を観測した回数は468 回にのぼり、アメダスが観測を開始した1976 年以降の29 年間で最も多くなりました(これまでの最多は419 回(1998 年))。
また1 時間降水量80ミリ〈※2〉以上を観測した回数は30 回に登りました(1976 年以降第4位)

〈※1、2〉1時間雨量50mm の降雨とは、「非常に激しい雨」で、滝のように降る(ゴーゴーと降り続く)ものです。1時間雨量80mm の降雨とは、「猛烈な雨」で、息苦しくなるような圧迫感があり恐怖を感ずるものです。

〈※3、4〉日降水量200mm の降雨では全国ほとんどの地域で大雨警報が発表されます。日降水量400mmはその2倍にあたります。


 図1をみると、90年以降、それ以前に比べて50ミリ以上、日降水量が確実に増えていることがわかります。

平成20年8月6日のゲリラ豪雨

  この日の夕方、箕面市内から南下して吹田市内へ入って山田あたりに差し掛かったころ、「非常に激しい雨」に見舞われました。気象庁が平成12年8月に作成した「雨の強さと降り方」によると、上記※1,2の1時間降雨量50以上〜80未満(mm)で、車に乗っていて「運転は危険」であり、ワイパーは利かずバスは一時停車したままでした。



地図調整 鰹コ文社2006年4月

図2−万博記念公園を挟んで北と南の雨の降り方

 ところが、地図に示すように万博記念公園の南、山田地区では、「非常に激しい雨」だったのに、箕面市小野原地区では全く雨は降っていませんでした。

 翌日の朝日新聞には「枚方で最多1時間71.5ミリ」の見出しで、「近畿地方の一部で6日午後、短時間に激しい雨が降り、浸水被害や交通機関の乱れが相次いだ。大阪管区気象台によると、大阪府枚方市では午後5時40分までの1時間雨量が観測史上最多の71.5_。大阪府内では、枚方市で数十戸、寝屋川市と茨木市で少なくとも数戸が床上まで水につかったほか、府北東部を中心に530戸以上が床下浸水した」と報じていました。


集中豪雨はなぜ発生するのですか?

 この質問に気象庁のホームページ・気象等の知識の中で、「集中豪雨は、活発な積乱雲がもたらします。活発な積乱雲の発生に共通した気象条件としては、大気の状態が不安定である、すなわち、地表面付近の空気が比較的暖かく湿っており、上層の空気が比較的冷たく乾いている状況です。梅雨前線や太平洋高気圧の縁、台風の周辺などにおいては、多量の水蒸気が継続して流入することがあり、大気の状態が不安定となって集中豪雨が発生することがあります。また、地形の影響を受けて、水蒸気がある狭い地域に集まることが集中豪雨を引き起こす原因となることもあります。

 集中豪雨をもたらす、個々の積乱雲の寿命はせいぜい1時間程度です。しかし、積乱雲が同じような場所で、あたかも世代交代をするように次々と発生→発達→衰弱を繰り返して、激しい雨が数時間から十数時間も継続することがあります」と答えています。

 積乱雲は上昇気流で発達していきますが、起きるおもな原因として
@気流が山を越える
A低気圧や台風に風が吹き込む




     図3−上昇気流の起こるおもな原因(@、A)


B前線が接近した
C地面が熱せられた
D上空に冷たい空気が流れ込んだ




図4−上昇気流の起こるおもな原因(B、C、D)


 鐃村 曜(よう)著 「イラストでわかる天気のしくみ:新星出版社」のイラストを借用しました。実際には、これらのいろんな原因が組み合わされています。

ヒートアイランド現象

 今月14日の朝日新聞「ニュースがわからん?『ゲリラ豪雨』なぜ起きるのじゃ?」の中で、「ゲリラ豪雨は都市部の方が起こりやすいのか?に対して、都市部はアスファルトやビルに覆われており、暑くなりやすい。いわゆるヒートアイランド現象だ。また、ある研究結果によると、高層ビル群の上空を風が通ると、紙やすりの上で滑りが悪くなるように、空気が滞る。行き場を失った空気が後から来た風に押し出されて上昇し、雨を降らすという」と答えていました。

 上記8月6日の万博記念公園付近のゲリラ豪雨をみると、吹田市の以南は写真1下段のように、高層マンションなどが立ち並ぶ千里ニュータウンから大阪市内にかけてはヒートアイランド現象が起こりやすいところです。万博記念公園には写真1上段のように、全体260haの中心をなす99haの敷地内には、約250種50万本の樹木が植樹された広大な緑地が広がっていて比較的温度が低くなっています。そこへ熱せられた空気がぶつかり行き場を失って後から来た風に押し出されて局所的に上昇気流となり、局所的にゲリラ豪雨が発生したのかもしれません。





写真1上段:古江台展望台から東方向(万博公園)を見る
    下段:古江台展望台から南方向(大阪市の方向)を見る

 今回のようなゲリラ豪雨ほどではないが、万博公園を挟んだ北と南では雨の降り方が極端に違うことは何度も経験しています。

地球温暖化が進むと集中豪雨が頻発する

 温暖化が進むと、気候が極端化すると言われています。集中豪雨などが増え洪水が頻発したり、あるいは逆に雨が極端に少なくなり干ばつが起こるなど、異常気象の被害が大きくなると予想されます。

 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書統合報告書: 観測結果・地表面及び大気中の気候変化」をみると、「陸域は海洋よりも速く昇温している、大雨の頻度は大いに増加した、気候の温暖化に伴って極端な気温の発生も変化している、北極域の平均気温は、過去100 年の世界の平均気温の上昇率のおよそ2倍の速さで昇温している、対流圏の水蒸気は増加している」など、地球全体が温暖化していることを強調しています。

偏西風の蛇行

 気象庁は今月8日に2008年夏の異常気象分析検討会の結果概要では、「西日本を中心に続く今夏の高温や少雨などの異常気象を受け、気象庁の分析検討会は8日、7月下旬以降に偏西風の蛇行が見られ、西日本上空を中心に高気圧が強まりやすい状況になったことなどが要因とする」見解を発表しました。

 また、2004年、年間を通じて記録破りの豪雨になったことについて、船瀬俊介著・気象大異変(リヨン社:2004年7月発行)によると、「2004年7月の豪雨では高気圧が梅雨前線を押し上げ停滞させて集中豪雨をもたらした(気象庁)。しかし、これではなぜ高気圧が北寄りに居座ったのか?その理由の説明がない。明言すれば、つまりは温暖化で海水温が高まり、太平洋高気圧の勢力が強くなり北へ張り出したのだ。それに押されて偏西風が蛇行を始め、高気圧はそのくぼみにはまりこんで居座ってしまった。これからの異常気象は……温暖化→偏西風蛇行→高気圧(あるいは低気圧)のはまりこみ……を無視しては語れない」と書いています。

 洞爺湖サミットでも取り上げられた地球温暖化問題は、異常気象とともに今後とも注視していくべき大きな問題です。

(平成20年8月29日)

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