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5/28<伝える能力を向上させるには><黒川温泉と旭山動物園のケースディスカッション> [2011年06月08日(Wed)]
今回も、塾生ききまさんのまとめメモを紹介します。
---------------------------------------------------
2011.05.28の大名塾では大きく2つのテーマが扱われました。

テーマ1.「伝える能力」を向上させるには?

福岡大学の魅力を伝える、という課題を学生にさせてみる。
→日常的な体験談に基づくものが多く、「それって福岡大学の魅力なの?」とツ
ッコミたくなる回答が続々とでてきたというお話。

なぜ、そのようになってしまうのか?皆で考えてみた。
以下、出てきた意見(仮説)。

・「自分の経験・体験からしか考えない」
  →視野が狭いことに気づいていない。塾生と比べれば、当然、学生たちには
圧倒的にデータ・経験がたりないという意味ではやや厳しい指摘か。
・他大学との比較という発想に欠けている
  →これも視野の狭さ?
・問われたことの意味が上手くとらえられていない
  →問題の分解が下手なのではないか。解決までの段取りを考えさせるプログ
ラムは効果があるかもしれない。
・より深いレベル、問題の抽象度を上げて考えきれない
  →前回(2011.5.14)の大名塾での議論につながる

なんとなく、高校までの教育、大学での教育の問題点が見えてくる感じがある。


テーマ2.黒川温泉と旭山動物園のケース・ディスカッション

黒川温泉のビデオをみたのち、旭山動物園のケースのビデオもみる。
2つのケースから学べることはなにか?

※実際には、まずビデオで紹介された事実関係を整理し、田村先生が用意してく
れていた書籍や参考データもみながら、ケースの中で印象的な部分を掘っていく
ことで議論が進んでいった。

あらかたポイントになりそうなところの材料が出そろったところで、田村先生が
ホワイトボードに議論を一気に整理するためのフレームを描いた。
それをききまなりにアレンジして表現してみたのが図1(添付ファイル)である。



図で表現されているのは以下のようなことである。
(1)ビジョンが存在し、活動に結びついていなければならない
(2)制約を上手く利用して活動に活かすことができなければならない
(3)ビジョンを実現する何らかの仕組み(組織・制度など)がなければ活動へ
と転化されない
(4)どの業界にも何らかの「成功の方程式」はあるが、その安易な導入は実質
的な思考停止を導き、結果として活動を失敗に導く。これは制約を強く意識する
ことで避けることができる


この図1の枠組みで黒川温泉と旭山動物園の場合で検証すると...

<黒川温泉>
(1)後藤哲也が自らの足で歩いて顧客の行動を観察して創り出した。そのビジ
ョンは後藤個人の旅館経営(洞窟風呂)には比較的早く反映されたが黒川全体に
反映されるには、「仕組み」が熟するのを待たねばならなかった。
(2)黒川が人里離れており、自然が多く残っていることを逆に利用した。
(3)温泉組合のなかの若手の旅館経営者たちが徐々に後藤のやり方を学び始め、
若手グループが形成される。彼らのアイディアで出た「入湯手形」の導入を契機
に黒川温泉の改革は加速した。
(4)温泉組合の多くの人が、熱海のような企業の宴会需要を受け入れる成功の
方程式の活用を夢見ている時期があり、当然、そのイメージに依存している間は
良い結果がでなかった。

<旭山動物園>
(1)小菅正夫を中心に動物園のメンバーがお客の声をききながら、話し合いを
重ね、「一匹一匹の動物の魅力を引き出す ⇒ 命の輝きを伝える動物園」へと
イメージをまとめていった。
(2)地方都市にある日本最北の動物園であり、職員の人数も少ない分、意思統
一もしやすかった。また、コアラやパンダなどの集客が見込める動物を持てない
分、既存の動物一匹一匹の魅力を引き出そうという発想に転化することができた。
(3)「理想の動物園のスケッチ」を作成していたこと、エキノコックス病騒動
⇒一時閉園ののち、再開に向けて旭川市から比較的大きな予算がついたことが大
きかった。
(4)パンダやコアラなどのスター動物を持つか、遊園地と併設して遊具やショ
ーなどで集客するという手法が、業界の「成功の方程式」としてあった。前者は
予算の規模的に無理であったし、後者に頼っている間もあったが、その間は維持
費・新たな設備の導入費用のために逆に動物園の予算を圧迫しつづけた。

かなりうまくあてはまっているようである。

また、図1の説明枠組みに付随するいくつかの論点について、当日の議論を活か
しながらまとめてみた。

◎ビジョンを発見するにはどうしたらよいか?
 ⇒成功の方程式に頼らないことがまず第一である。直接、お客さんの声や考え
を聞く努力を怠らないこと。自分の足で歩き回り、目で見る、話を聞くといった
取材段階の大切さは冒頭の「大学の魅力を表現をする課題」のところとも密接に
かかわっていそうだ。このことを言い換えれば、『成功の方程式に頼らずに「制
約」を掘り出すこと』と表現することもできそうである。つまりビジョンと制約
とは相互に影響を与え合う関係にある
と考えられる。

◎変化を起こそうとしたら、まずビジョンを作ることから始め、すぐに発表する
ほうがよい?

 ⇒よいビジョンに出会うには時間がかかる。一定の時間があればできるもので
はない。期限を切って無理に、言葉にしようとすると陳腐な表現に収まってしま
う(新聞の一面にビジョンだけ載せるのは費用の無駄、自らを無駄に縛るという
意味で愚の骨頂?)。それは誤解を生みやすいし、逆に中途半端に表現されたビ
ジョンが足かせになる可能性もある。ビジョンはできれば外部には「隠れている」
ほうがよいことが多いのではないだろうか。
 ⇒ただ、旭山動物園のようにスケッチを書いたり、試作品や企画書をつくった
りとかするのは、足かせになりにくそうな感じがする(なぜビジョンの文章的な
表現がダメで、スケッチや試作品を作ることが良い感じがするのかはもう少し考
えてみたい)。

◎仕組み(組織や制度)が変化の足かせになることがあるのでは?
 ⇒仕組みを直接、変えようとしても大きな抵抗にあうので相手にしないぐらい
のほうがよい。現状を変えようとする人たちだけで、小さくはじめていくのがよ
い。
新しいビジネスモデルを探るため、出会い系サイトのページを見続けていた
ら職務停止になったが、それでも続けてのちに新規ビジネスの立ち上げ(大幅改
良?)へと導いたケースもあるようである。つまり、仕組みとビジョンとは相互
に影響を与え合っていると考えられる。


◎仕組みといってもいろいろな形がありそう。どのような仕組みがベストか?
 ⇒関わる人々がお互いに協調しようとすることがよいとはいえない。高松のう
どん屋通りの例のように、協調ではなく競争が活気を生むパターンもあるからだ。
 ⇒ビジョンの作成段階でも試行錯誤はかならず必要なので、「失敗の経験を許
容・共有できること」はとても重要そうである。失敗から学ぶのはなかなか難し
い。実際に失敗の経験を共有させようとしても、「ヒヤりハッと」の段階での失
敗談を書きたがらない・話したがらない人が増えている(特に最近の若い人?)
という話が出た。事故になって言い逃れできなくなってからでしか書かない・話
さないのでは、人々の間で知恵を共有できない。「失敗から学ぶ」ことを通じて、
仕組みと制約は相互に関係しあっていると考えられる。

 ⇒ビジョンが浸透し活動が人々に広がっていく過程を考えると、「相互に学ぶ
体制」も仕組みを考えるうえで大きなポイントになりそ
うである。問題が大きす
ぎて検討しきれなかったが、西川純先生の「学びあい」の発想と研究は、参考に
なると思われる。

※黒川温泉と旭山動物園のケースについては、重要な事実の誤解・抜け落ちがあ
るかもしれませんので、そのような点があればご指摘ください。
5/14商いの原点から〜原点に意識を向けるには? [2011年05月20日(Fri)]
今回は、塾生ききまさんが、メモをとったものを整理してくれました。
以下原文まま掲載。太字は管理人(ひ)が装飾しました。
〜〜〜〜〜

前回のメモを整理してみました。

当日参加された方は読めば分かると思いますが、あくまで、ききまの主観的視点
による、ききま自身のまとめメモであり、議論の流れや発言などはほとんど見え
なくなっています。すみません。(メモを見返した時点で議論の再現はあきらめ
ました。メモをとるときには自分の中で引っかかった部分だけ残していたので…)


そのようなわけで、当日の記録としては役に立たないとは思いますが、ある参加
者がどのように議論をきいていたのか、という楽しみ方はできるのではないかと
思います。


以下、少し長くなりますが、どうぞ。

----------------
大名塾110514 まとめメモ

【本日のテーマ 商いの原点について】
楠木健『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社 2010年が売れている。

そこで語られているのは、「シンプルな原理・そもそも論の大切さ」である。
そこが練られていないと戦略は成功しない。

でも、そのことを本当に学生にわかってもらうのは難しい。原点を考えさせるこ
とすらうまくできない。

なぜだろう?いろいろな仮説が考えられる・・・学生たちに考えることの大切さ、
難しさへの実感がないからではないのか?
そもそも、人間とは何か?などの基本的な問題に意識を向ける取り組む意味はど
こにあるのだろう?
小さな問題、簡単に処理できるようなことならば、原点など考えなくても済む。
たぶん、大きい仕事、大きな課題、長期的な問題、課題を考え、適切な対応をと
れるには、大きな概念、本質論、原点が必要になる。
言い換えれば、自分自身の能力を高めていくために、原点をみつめることが必要
なのである。

「商いの」という部分を考える前に、「原点」にどうやって立ち返るかを考えて
みよう。


【どうやって原点を探るか?】
商学部らしい本を持ってくるという課題を学生に与えてみる・・・大変面白い課
題だがどうもうまくいかなかったとのこと。
同じような質問をしても、なかなか原点(真実・本質)を考えるという感覚を学
生たちに持たせることができない。
問題は、どうも事実を沢山集めても(与えても)、真実・本質へと意識が至らな
い、ということにあるようだ。

さて、どうやって原点へ意識を向けさせたら、いいのだろうか?
「未来への意識」、「ビジョン」、「志」などのお題を考えさせ、語らせるとい
うのはありそうだ。
大きな問題・長期的な問題に向かわせることは、少しでも「原点」を考えるきっ
かけになるにちがいない。
ただし、実際にこのような問いを投げかけても、人によっては「ビジョン=車を
買うこと」ぐらいの短期的で即物的なレベルでとどまってしまうこともあるとの
こと。

どうも「未来への意識」、「ビジョン」、「志」を考えられるようになるために
は、何らかの条件がありそうだ。
その条件とは、その人の「自我」が鍛えられていないといけないということであ
る。
鍛えられた自我をもっていれば、長期的な視点、広い視野を持って、原点へと向
かうことができる。
自我が弱いと、難しい問題・すぐには答えがでないことから逃げてしまうのであ
ろう。

自我の強さというのは、現代の若者の行動を読み解くことにもつながっていそう
だ。
現代の若者は、知っている友達としか仲良くなれない、集まってもフィーリング
の合う人たちだけで固まって交流が広がらないという傾向を見せている(あくま
でも仮説だが)。
…こうした傾向は自我の弱さから来ているといえないだろうか。

【自我を鍛える仕組みとは?】
視野を広げる、本質に迫るには、自我を鍛えることが鍵である、とするなら、自
我を鍛える仕組みについて考えれば先に進めそうだ。
対話の中ででてきたことを思いつくままに並べてみよう。

・他者との関係性を拡げる経験をすること。ただし、同質な相手ではなく異質
な相手と向き合うこと。

・相手と自分との関係をとらえるときに、既存の軸に頼らない。出身大学、年

齢、趣味・・・いろいろな制度化されたラベルを利用して相手を理解し、自分と
の距離を測るのは自然であるが、自我は鍛えられない。比較に頼らず、軸を意識
し、むしろ
自分なりの比較の軸をつくってみる。そのときに自分自身って何者?
という問いに立ち返るだろうし、原点にも意識を降ろしていけそうだ。

・書く、表現する。これも自分自身を見つめることになり、結果として自我を
鍛えることになりそうだ。

・聴く、待つ。聴くことに集中し、聴いた内容を自分に取り込む。相手の出方
を待つことも意識して行えば自我を鍛えることに効果を発揮しそうである。

・生死に関する体験をする。これは自我の成長に役立つ場合も少なく無いが、
自我を傷つけてしまう場合も考えられ、扱いが難しい。

・「丈夫な頭とかしこい身体」というフレーズがある。よい身体の動きを身に
つけることで、自我も鍛えられる。武道などでいう所作や型を身につけ、普段か
ら実践
していけば自我が鍛えられる(こう考えると型破り、型なし、という表現
も実に面白い。)

・相手の目線に降りて行き、相手の気持ちに半分同化することを意識する。「
1.5人称、2.5人称」という状態を意識してつくってみることで、他者の気持ちや
考え方をよりよく取り込み、自我を鍛えることができそうだ。

・共に原理に向かおうというパートナーを見つける。同志を持つ。周りに自我
を鍛え、物事の原点へと向き合おうという人がいれば刺激になる。

・海を見る、山に登るなど、集中できる環境をつくるための自分なりの儀式を
持っておく。


・痛みを伴う経験をし、違和感を感じることで、自分自身へと向かう問いを立
てる。
「違和感」を大事にするとよい。

・他の人を育てること。ただし、育てようという意識が強すぎると相手が潰れ
るし、自我の成長もない。

どれも普段の仕事・生活の中で取り入れることはできそうである。
普段だったら何気なくこなしてしまうことを一つ一つ丁寧にすること、そのよう
にすることが、自身の心の強さや成長へと結びつけるぞという意識をもって取り
組むこと
で、自然と「原点」を考えることができるようになれるということでは
ないだろうか。

※おまけ〜商と経営〜
今回はほとんど扱われなかった「商いの」という部分についてであるが、漢語辞
典を調べてみて、「商」に含まれるいろいろな意味の中で、一番しっくりきたの
が、「評価する」という意味である。
商いは何か儲けることではなく、相手と自分、物やサービスの価値、世の中の事
象を「評価する」ことなのである(と自分なりに納得した)。
商売はきちんと「評価」できてこそ、うまくできるのである。目先の利益にとら
われず、世の中を見る、今回の話でいえば、自我を鍛え、原点をみる力を養うこ
とでこそ、商売人として大成できるということなのであろう。
ちなみに「経営」は(専門的な定義は全く無視して)それぞれの文字の意味を追
っていくと、「土台をつくり家を立てる」というようなイメージが浮かび上がる。
これはこれで「商」と対照的で大変興味深い。

おしまい

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