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2023年をふりかえって [2023年12月30日(Sat)]
コロナ禍による制限がほぼなくなった2023年。
こどもソーシャルワークセンターで関わる家庭の中には
社会の回復の乗り切れずしんどさを抱えている子がたくさんいます。
また今年は東近江市長の発言で注目を受けたように
不登校のこどもたちがすごい勢いで増えています。

「家庭や学校にしんどさを抱える」というキーワードに
当てはまる子どもたちが増えていく中で今年も
こどもソーシャルワークセンターは全力で駆け抜けていきました。

こども若者の居場所活動は安定して毎日受け入れ続けました。
特に新年度からは増えていく若者たちに対応すべく
土日をユースホームの居場所活動と週1回から週2回に
活動を広げていくことになりました。
また6年目を迎える「高校内居場所カフェ」が
大津清陵高校(昼間定時制)だけでなく
瀬田工業高校(夜間定時制)でもスタートしました。
このように若者支援が広がる中、2020年度から2022年度まで
休眠預金を活用した民間助成金(毎年約1000万円)が
その活動資金の中心でしたが、今年度は様々な事情で
若者支援について民間助成金を受けることがなかったため
寄付集めに力を入れる一年でもありました。
初のチャリティーイベントを開催したり
寄付を集める難しさと共に今まで寄付で支援してくれている
みなさんにささえられていることを強く感じた一年でした。

そのためのホームページのリニューアル化や
法人の5年間の成果を伝えるためのパンフづくりが
Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGsの
二年目の補助を受けながら行われてきました。
ついに先日新しくなったホームページが公開されました。
なお2022年度活動報告書を兼ねることになる
新しい報告書は年明けに発送させてもらいます。

センターの居場所活動などをささえるボランティアの
体制についても4月から働き始めた新たな職員を中心に
見直しをかけた一年でした。気がつけばコロナ禍で年間150人
近いボランティアが在籍することになっていましたが
一人ひとりが活躍する機会をうまく提供出来なかったことから
100名の年間登録を意識して子どもに関わるボランティアを
「居場所系ボランティア」「活動系ボランティア」にわけた
ことや月一回のボランティア交流会や研修会が復活したことで
ボランティアにとっても活動しやすい体制に
移行することが出来ていると感じています。

気がつけば居場所などで毎週利用するこども若者は約30名
配食や体験活動でつながるヤングケアラーのこどもが約10名
40名近い利用者をかかえています。
一人ひとりのしんどさに丁寧に向き合いながら
こどもソーシャルワークセンターならでは支援を
新たな年も提供し続けていきたいと思います。

2024年もこどもソーシャルワークセンターを
よろしくお願い致します。

NPO法人こどもソーシャルワークセンター
 理事長 幸重忠孝

※写真はコロナ禍もあけてセンターから週末によく見ることになった花火の写真です。
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チャリティークルーズへの最後のお願い [2023年11月21日(Tue)]
理事長の幸重です。今回は長文ですが、おつきあいお願いします。

昨日、学校での仕事を終えてこどもソーシャルワークセンターに戻ると、中学時代から利用していた十年近いつきあいになるヤングケアラーの若者が、はじめてセンターに電話をかけてきました。ここ二年は病気の家族や家のケアに追われていたこと、自分がセンターを利用する中で最年長になって気まずさもあったのかセンターの活動に来なくなっていたので、驚いて折り返しの電話をすると、先ほどケアしてた家族が息をひきとって、どうすればいいかわからずに電話をしてきたということでした。

一昨年、民間助成金を活用して彼をピアスタッフとして雇用するにあたって、今回亡くなった病気の家族と面談した時に、自分たち家族のせいで子どもをケアに縛りつけていることへの罪悪感、子どもには自分たちと同じ人生を歩んで欲しくないということを話していたことが脳裏に浮かびました。

21時過ぎに、ふたたび彼からLINEが入って今からセンターに来ていいかと言われたので、「もちろん待ってるよ」と返事をして、やってきた彼とこたつの中に入って今日の一連の出来事、ここ数年のケアのこと、これからのことを話しました。

民間助成金を活用して、彼をピアスタッフとして雇用した時、最終的には働くよりも家族のケアを選んでセンターに顔を出さなくなっていく姿を見ながら、家族のことよりも自分の人生を考えないとあかんのにどうするんやろう・・・と当時は思っていましたが、このようにその数年後に家族が亡くなったことを考えると、彼にとってはセンターで働くことよりも家族と過ごす時間は本当に尊い時間だったのだと今になって思い知らされています。

こたつの中でこれからのこともたくさん話しました。独り身になったことで、いろいろな手続きや心の整理が出来たら、そろそろ「働きたい」と話していました。そのために力を貸して欲しいとも言われ、「もちろん」とその場では応えましたが、実際のところ三年間にわたって若者たちの支援は民間助成金に頼っていたので今年度は正直、若者支援の雇用プログラムはかなり縮小をしています(ピアスタッフとして雇用するのでその経費がどうしても今の寄付金頼みの予算では追いついていないため)。気持ちでは彼のサポートを行いたいと思っても、実際は活動資金が必要になる現実があることをNPOの代表として日々感じています。

「寄付をお願いします」と年中言い続けて、それで上半期が終わって約300万円。今年度必要な1000万円に足りないことから、今回新たな寄付の獲得方法として、法人としてはじめてチャリティーイベントを企画しました。今までと違う層にクルーズでの行楽や音楽を楽しんでもらうことで寄付にするという形を企画しましたが、あと三日になりますが、チャリティーチケットは20枚近く残っており、やっぱりイベント広告会社でもないのにこの手のイベントを企画しても、必要なところには情報は届かなかったか。とあきらめモードで、残り20枚のチケットは寄付にはならないけど、招待枠をさらに拡大して、今回は寄付集めの目的はあきらめて実質、生きづらさを抱える若者たちの体験活動にして当日を迎えるか。と、実は昨日のお昼まで考えていました。

しかし先ほど話した若者との思わぬ再会があって、チャリティークルーズの言い出しっぺが、寄付は集まらなかったけどと何をなさけないことを言ってるのかと考え、気持ちを切り替えて最後の最後までチャリティーチケットを買って参加する人を一人でも増やすためにあがくことにしました。
昨日、こどもソーシャルワークセンターを頼って10年ではじめて電話してきた意味はとても大きいと思っています。民間団体が地域にあることの意味、子ども時代から関わってきた大人のところにいざという時に頼れる意味。今回はうちの話でしたがこのチャリティークルーズを共にすすめる団体もまったく同じ役割をそれぞれの地域で担っています。

おそらくこの長文をここまで読んでくださった方は、すでにこのチャリティークルーズについてはご存じで、滋賀県までお遠い。予定があって参加出来ない。チケットを買う余裕がない方がほとんどだと思います。出来ればつながりのあるみなさんに参加して欲しいのですが、例えばみなさんの親や子ども、友達に秋の行楽としてチャリティーチケットを購入して楽しいクルーズの時間を親や子ども、友達にプレゼントしてあげることとか出来ないでしょうか?またクルーズに参加出来ないけどイベントを寄付で応援したいという声に応えて、急遽チャリティーイベントのクラウドファンディングサイトを立ち上げたので、クラウドファンディングで応援してもらえないでしょうか?

■クラウドファンディングのサイトはこちら
https://congrant.com/project/cswc/9170
もちろんこの熱い想いをぶつけた長文投稿をシェアで拡散してくださることも大きな助けになります。昨日、頼ってきた若者に力を貸すと言った以上、やれることからまずはじめていこうとSNSで発信させてもらいました。長文におつきあいいただき、本当にありがとうございました。残り20枚のチャリティーチケットが寄付に変わるようにつながりのあるみなさんの力を最後に貸してください。

NPO法人こどもソーシャルワークセンター 理事長 幸重忠孝

ビアンカチャリティクルーズ チラシ.jpg
Posted by こどもソーシャルワークセンター at 12:23 | 理事長のつぶやき | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
四年ぶりの講演行脚 [2023年08月09日(Wed)]
理助長の幸重です。この一週間は講演行脚で県外のあちこちで講演してきました。

8月2日 島根県隠岐の島
8月3日 兵庫県西宮市
8月4日 岡山市
8月7日 島根県松江市
8月8日 島根県浜田市

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というルートでした(週末は滋賀に戻ってました)。
県外の講演は移動にも時間がかかるので
(特に今回はフェリーでの移動もあったので)
体力的にもかなりハードで、出張先で仕事しようと
思って持っていきましたがほとんど手つかずでした。

あとはスーツケースにチャリティーグッズを満載して
各会場で寄付のお願いをしたところありがたいことに
この一週間だけで寄付箱に5万円近い寄付をいただきました。
夏休みの子どもたちの活動を支えるための資金が必要なので
このような講演による謝金、講演先での寄付は大きかったです。

今日からは県内での講演や視察対応が続きますが
お盆まで走り抜けたいと思います。
2023年度がはじまりました! [2023年04月03日(Mon)]
まさかのインフルエンザで年度末から一週間近くダウンしておりました。

さて4月1日より新たなソーシャルワーカーを加えて
NPO法人の7年度がスタートしました。
今年度はフルタイムのソーシャルワーカーが4名の体制に。
組織として大きく成長したなと思いながら
この組織体制を維持するために
今年は組織運営的には大きな変革の年になります。

まずこの三年間、民間助成金(休眠預金)に頼り切った
資金繰りになっていましたが、
今年は採択されなかったことをきっかけに
「寄付」で応援してもらえる団体に変化していきます。
ご存じの通り、寄付は集まられなければ
事業が計画通りに進まないというリスクはありますが
この二年間あまりにここをおざなりにしすぎてきました。
職員の意識改革も含めて、改めてみんなに応援してもらえる
NPO法人こどもソーシャルワークセンターを目指していきます。

もちろんほぼ完成を迎えている子ども若者の居場所活動と
ヤングケアラー支援事業も、毎日子ども若者たちに提供しつつ
このような活動を社会に広げていくための
ソーシャルアクションを高めていきます。

では2023年度のこどもソーシャルワークセンターも
よろしくお願い致します。

理事長 幸重忠孝
2022年をふりかえって [2022年12月31日(Sat)]
2022年最後にコロナウイルスに感染して
一週間近くお休みのまま年末を迎えてしまった理事長から
2022年を振り返っての投稿を。

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まさにこの年末に象徴されるように
2022年は職員やボランティアを中心として
より強固なマンパワーで子ども若者たちに
活動を提供することが出来る組織になったことを実感しています。

そのように組織基盤が強まってきたきっかけとなるのは
2022年に「組織基盤整備強化事業」が行われたことが
とても大きいと感じています。
Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGsの
助成を受けることで、外部のコンサルテーションを
受けながら毎月、職員全員と組織診断を行ったこと
また副理事長が職員会議に毎回参加することや
定例の理事会以外に意見交流をもちながら
この数年で大きく拡大した組織がバラバラにならないように
体制づくりを固めながら活動をすすめていきました。

そして活動についてはこどもソーシャルワークワークセンターで
ニーズが強くなっている若者支援を強化するために
休眠預金を活用した助成金を受けることが出来たことから
若者支援を統合して「ユースホーム事業」に進化させました。

さらに新たな展開として、滋賀県と共同して
「ヤングケアラー支援事業」も夏からはじめることとなりました。
昨年、大津で起こった事件に心を痛めていたこともあり
このような形で行政と民間が協働して事業をスタート出来たこと
そして何よりもセンターが大事にしている
「当事者の子ども・若者の声」で作り上げる活動づくりを
今回のヤングケアラー支援でも実践することが出来ています。

すっかり活動として安定期に突入している
「トワイライトステイ」「ほっとるーむ」の子どもの居場所活動は
ほぼ毎日子どもたちに活動を提供することが出来ましたが
実は、活動を利用している子どもたちが次々と
家庭で暮らせない状態になってしまった一年でした。
コロナによる厳しい生活も三年目に突入し
一番しんどい層がいよいよ生活を保てなくなってきている
ことを感じながら、センターで出来ることを精一杯提供しています。

最後に行動制限がなくなってきたことで
講演活動がかなり回復してきました。
理事長だけでなく職員が講演する機会も増えてきており
センターで見えている子ども若者の姿や
地域のつながりで作る居場所活動を紹介して
大津や滋賀県から今後も社会発信を続けていこうと思います。
(新聞・テレビなどマスコミで取り上げられた回数も
 過去最大の数となりました)

さてすっかり遅くなっている2021年度活動報告書ですが
実は12月前半からの体調不良、コロナと作業時間が
とれていないまま年を越すことになってしまいました。
何とか1月末に賛助会員・寄付者のみなさんのもとに
送ることが出来るように年明けからブーストかけていきます。

2023年もこどもソーシャルワークセンターを
よろしくお願い致します。

NPO法人こどもソーシャルワークセンター
 理事長 幸重忠孝
滋賀県外での講演もぼちぼち復活 [2022年09月11日(Sun)]
この週末は滋賀県では職員のみんなに
中学生のヤングケアラーの日帰りキャンプをまかせ
理事長は東京での講演活動へ。
(職員の一人は湖南市で講演)

こどもソーシャルワークセンターにとって
大事な子どもたちの活動の収入源である講演活動。
またセンターの子どもたちの声を届ける貴重な機会。
コロナに翻弄されて、県外での講演がすっかり減っていましたが
この秋からぼちぼち依頼が来ています。

来週は理事長の地元岡山で講演二連チャンです。
オンライン講演も増えていますが、
自分で言うのも何ですが対面のライブで聞いた方が
伝わるタイプだと思っています。

全国のみなさん、講演依頼お待ちしております。

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あすのば若者合宿に参加してきました [2022年08月19日(Fri)]
8月15日から18日まで、センターを職員たちにまかせて
理事長の幸重はこどもの貧困対策センターあすのばの
若者合宿に参加してきました。
その前の週が「ケアピアびわキャン」だったので
二週続けての合宿になりましたが、いい刺激を受けてきました。

あすのばとは、子どもの貧困対策キャラバンin滋賀や
まちなかほっとるーむの立ち上げでいろいろと
共同させてもらっている関係です。

今回は滋賀県からの若者の参加はなかったものの
近畿圏からの参加は結構多かったので
新たな若者たちとのつながりが出来ました。
貧困課題はもちろんのことヤングケアラーの
若者も多かったので、秋からのセンターの活動でも
力を貸してもらうつもりです。

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2021年をふりかえって [2021年12月31日(Fri)]
毎年恒例の大晦日の振り返り記事です。

今年もコロナの影響を強く受けた一年でした。
そんなコロナで苦しい状況の中で
ケア型の要支援家庭の子どもの居場所として
活動を続けてきた結果、ついに大津市から
国の「支援対象児童等見守り強化事業」として
週5日間の子どもの居場所事業としての
委託を受けることがこの夏からはじまりました。

これによって大津市で5年間訴え続け活動続けた
「子どもの居場所」事業がついに制度として
一つの形となりました。

「何かいろいろイヤなことがあっても
 あそこ(センター)に行くだけで消せるからな
 イヤなことあっても何かあったっけみたいになっちゃう」
と居場所活動に来ている中学生が
TVのインタビューに答えてくれました。

さらに助成金を活用して新たなモデル事業づくりも
少しずつ形になってきました。

「まちなかほっとるーむ」として高校生や若者世代の
居場所活動から、「子どもの貧困対策キャラバンin滋賀」や
マスコミの取材などで自分たちの抱える社会課題を
世の中に発信することに挑戦をしたり
地域のボランティア活動に参加したりと
アクティブな活動が増えました。

「生きづらさを抱える若者たちによるアウトリーチ事業」は
全国的にも注目される取り組みとして
マスコミに何度も取り上げられました。
この活動を通しての緊急対応も何度もありました。

そしてこれらの毎日行われる居場所活動や
新たなモデル事業づくりを支えてくれる職員や
ボランティア・寄付者などのセンター応援団の力に
支えられた一年間でした。

年末には全国放送で活動を紹介され
年明けにも全国放送の取材が予定されています。
センターで受け入れる子ども若者の数は
もう受け入れが難しい規模になっているからこそ
ソーシャルアクションやネットワークづくりで
社会の中で「子どもソーシャルワーク」を広げることに
これからより力を入れていきたいと思います。

遅くなりましたが年明け早々に2020年度法人活動報告書を
賛助会員や寄付者、ボランティアなどセンターを応援している
みなさんの手元に送り届けます。

2022年もこどもソーシャルワークセンターを
よろしくお願い致します。

NPO法人こどもソーシャルワークセンター
 理事長 幸重忠孝
大津市内での小学生死亡事件について その4 [2021年08月20日(Fri)]
★理事長の個人のSNSで発信した記事の内容を転載します。

読売新聞から今まで報道各社の取材記事をまとめた総括的な記事が出されました。報道内容によると、その1やその2で危惧していた通りの児童相談所の支援内容であったことにがっかりしました。措置解除され自宅に子どもたちが戻ってから事件が起こるまで児童相談所のワーカーが亡くなった小学生や事件を起こした兄と結局一度も面談をしてなかったということです(3回の家庭訪問と5回の電話連絡はすべて母親との面談のみ)。特に7月21日未明にコンビニから警察に連絡があって警察が自宅に子どもたちを送り届けた段階でも親が不在だったにも関わらず、結局一度も子どもに話を聞いていないということに驚きました。亡くなった妹は夏休みになるまでは、学校での日々の見守りや担任の先生を中心とした声かけが効いていたと思います。しかし夏休みによってその日々の見守りがなくなりました。また高校に行ってなかった兄はまだ17歳でありながら、この4ヶ月間どこにもつながっていないということは、誰も彼のSOSに気がつかなかったということになります。

この件について、多くの人が「家に戻らず施設にいた方が幸せだった」と話しますが、兄については高校に行ってない17歳なので、基本的にはもう児童福祉施設を利用することは難しい状況だったはずです。そして日本ではこの世代をサポートする支援が本当に手薄です(大津市に関していえばほぼ皆無)。そして唯一その兄とつながりがあった児童相談所を責める声も聞こえてきますが、児童相談所のワーカーが一人100ケース近くを担当していることはあまり知られていません。最新の滋賀県のデータでは、昨年度滋賀県で児童虐待の相談対応件数は8201件、そのうち一時保護所に保護したケースは年間でたった188件。つまりこの事件は特別、手薄な対応ではなく(実際に最初の報道で児童相談所からは手続き通りに対応してきたとコメントしています)、今の児童虐待の支援は、今回の事件が起きた家庭のように、月数回の電話や訪問による見守り支援であり、特に今回の事件のように子どもの声をワーカーが聞いていないということは多々あります(というか最近のスクールソーシャルワークや児童相談所界隈では、ケース会議やスクリーニングなどが重視され、子どもと直接出会うケースワークがあまりに軽視されています)。

これから県で検証委員会がたち上がるということですが、おそらく過去の例から検証委員会の再発予防は児童相談所の機能強化という話でまとまり、職員が一人増員されるとかスーパーヴィジョン体制を強化するという結論におさまるような予感がします。もちろんそれも大事ですが、今回事件に巻き込まれた二人の子どもや家庭にとって必要だったのは、直接あたたかさを感じる人とのつながりや居場所ではなかったのかと思います。が、この手の検証委員会による再発予防でそのような提案をされることはあまりありません。そして居場所が増えても、今回の事件もそうですが、地域の民間の居場所は出会うきっかけがなければ身近な地域で苦しんでいる子ども若者がいてもサポート出来ません(実際に今回はうちの居場所にこの子どもたちがつながる機会はありませんでした)。

今回の事件は報道にも書かれていますが、おそらく夏休みに入って一週間たらずで急激に悪化して、誰も最悪の事態に気がつかなかったということでした。今、コロナの感染拡大に伴って、また一斉休校論が議論されはじめました。すでに夏休みの延長を決めた自治体や学校も出てきています。今回の大津の事件から学んで欲しいのですが、その一週間延長や安易な休校によって家庭が苦しい子どもたちがどれだけ絶望に追いやられるのか考えて、せめて休校するならその対策をきちんと講じてからにして欲しいということです(昨年度のコロナによって亡くなった子どもの数と自死で亡くなった子どもの数を考えれば感情論でなく、子どもの命を守るために優先すべき課題としてどちらが上かわかりますよね)。

そしてこの夏休み明けは、昨年以上に苦しい環境で絶望を抱える子どもたちが増える中、こどもソーシャルワークセンターでは、現在の公的支援や他の民間団体の支援が手薄な22時から翌朝6時まで緊急支援として一週間限定でオンラインサロンや緊急宿泊支援など出来る範囲での直接支援を行います。現在そのためのクラウドファンディングもスタートしています。ぜひこどもソーシャルワークセンターのホームページから、この緊急支援やクラウドファンディングなどの内容を確認してください。そしてぜひみなさんの力を貸してください。小さな団体であるので、つながれる子ども若者の数は限られていますが、それでも夏休みのはじめに起こった大津の事件のようなことをこの夏休みの終わりに起こさないためにも、やれることをやっていきます!

京都地域創造基金クラウドファンディング
【コロナ対策】子ども若者たちの自死や事故をなくすための緊急支援


★この投稿の元になった読売新聞(8月20日)
1000円渡し夜も帰らない母親、
17歳少年「妹の世話つらかった」…大津妹暴行死
についてはこの後に追記
続きを読む・・・
大津市内での小学生死亡事件について その3 [2021年08月11日(Wed)]
★理事長の個人のSNSで発信した記事の内容を転載します。

連休明けに、さっそく最初の報道が入ってきました。記事の見出しが兄の暴力についてなのですが、大事なのはそこではなく暴行が7月22日、つまり夏休みに入ってはじまっているという事実(ただ警察に連絡され、児相がふたたび介入したタイミングでもあるので、この介入失敗の可能性もありますが)。逆を言えば、学校がある間はこの妹はギリギリ安全を保っていたということです。このように夏休みは家庭に課題(貧困や虐待など)がある子どもたちには地獄の40日間となります。さらに今年と昨年の夏は、コロナの感染拡大でステイホームを国が呼びかけていることもあり、子どもが家庭外でエネルギーを発散する機会、家庭外の人が地域の子どもの変化に気がつく機会がほとんどありません(その意味では勇気をもって通告したコンビニの人たちをもっと評価してほしい)。

この3月に行ったこどもソーシャルワークセンターの事業報告会で、センターのボランティアさんたちと安田夏菜さんの児童書『おはなしSDGs貧困をなくそう みんなはアイスをなめている』の主人公である兄と妹が、もしこどもソーシャルワークセンターに来たならどうなったかを実際のセンターでのエピソードをまじえて物語形式で報告しました(こどもソーシャルワークセンターのホームページ「イベント情報」から当日の朗読形式の発表が見られます。また賛助会員や寄付者にはこの脚本が掲載されている報告書が送られます。正直、すごくよく出来ているので多くの人に見て欲しいです)。

今日の報道では「少年と妹は千円の食事代だけで1日を過ごす日があった」とありました。先ほど紹介した児童書も貧困家庭でネグレクトを抱えているヤングケアラーの兄が主人公で、作中でも妹の面倒を見ているのですが、このきょうだいが夕食500円(というかお昼は給食、朝食はなし)で過ごすシーンが描かれます。本のようにうまく伝えられないのですが、子どもが少ない食費で毎日やりくりしないといけないことの息苦しさがこの本を読めばよくわかります。調理が好きだったり得意な方は、一日千円や一食500円もあれば、いろんなごはんが作れると思います。でもその調理や買い物スキルのない子どもたちは近所のコンビニに行くしかないのです。コンビニからの通告があったことを考えると、このきょうだいはそうやって毎日コンビニで買い物をする姿をコンビニ店員が目撃していて気にかけていたから通告出来たのかもしれません。これは地元ならではの話になりますが、事件のあった団地はとても急な坂の上にある団地で車がある家庭にとっては近所の安いスーパーに買い物行くことは苦でないでしょうが、車がない家庭にとってこの暑い中、重い買い物荷物をもって買い物から帰るのは苦行でしかありません。

児童書の中では、妹が切り詰めた食事の買い物中にお菓子が買いたいと駄々をこねるシーンが出てきます。お話ではお兄ちゃんが最終的には妹のわがままにつきあうのですが、もし妹に言うことをきかせようとしたなら、結局は暴力や恐怖で言うことをきかせるしかないはずです。きっと妹は痛くて、怖くて泣くでしょう。するとお兄ちゃんは余計に苛立ちます。「泣くな!」と怒鳴ってさらに強い暴力をふるうしかなくなるわけです。新聞の見出しになっている「連続で何十発も殴った」には、おそらくこのような流れがあるはずです。そしてセンセーショナルな見出しを使うなら、報道側もそのぐらいの解説もきちんとして欲しいと思います。

さて前回の【その2】の投稿では、ソーシャルワーカーとしての3つのアクションを宣言しました。が、あれは中長期なアクションで、とにかく今すぐやらないといけない目の前のアクションについて、この三連休中にこの事件を受けて、こどもソーシャルワークセンターの職員とミーティングをした結果、このような危機的な夏休みの終わりと二学期のはじまりが、統計的にも子ども若者が自死につながりやすいということから、「緊急コロナ対策:一週間限定深夜のアウトリーチ活動」をこどもソーシャルワークセンターとして行うことが決まりました。日中はおそらくいろんな民間団体や公的機関もそれなりに居場所づくりや声かけをしてくれますが、深夜は相談窓口も居場所もありません。そこでこどもソーシャルワークセンターでは、昨年度から週2回取り組んでいる「生きづらさを抱える若者たちによる深夜のアウトリーチ活動」を一番危険な一週間は毎日行うことにします。センターに朝まで職員やボランティアがいるので、必要に応じて緊急宿泊支援も行えることになります。とはいえそのための資金と現状のスタッフでは難しいので、現在クラウドファンディングのサイトとスタッフ募集のサイトを作成中です。近日中に公開することになると思います。ぜひみなさんの力を貸してください。一人ずつになりますが、この苦しい夏休みを過ごしている子どもとつながりましょう!

この連休中も大津市内で起こった事件ということで、心痛めている市民のみなさんがセンターに寄付をもってくるついでに「何か出来なかったか」という思いを話してくれています。同じソーシャルワーカー仲間や子どもの居場所に関わる人たちから今回の件で傷ついているとのDMが来ています。きっとセンターやソーシャルワーカーである幸重に何か期待してくれていると思うので、今回のアクションは、それに応える意味も大きいと思っています。正直、へんなアドレナリンが出ていて、突っ走っているのはわかっていますが、身近な場所の子どもが命を亡くし、子どもが加害者になってしまった以上、やはりソーシャルワーカーとして、何かアクションを起こしていきたいと思います。

★この投稿の元になった産経新聞(8月11日)
「連続で何十発も殴った」逮捕の少年が供述
についてはこの後に追記
続きを読む・・・
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