株式会社尾鍋組
日本で初めて、住宅の地盤改良工事へ住宅ローン金利優遇を適用するビジネスモデルを構築。中小建設業者として、誰に聞いても「絶対に不可能」と言われた金融機関との連携を実現し、NPO法人と共に「環境と経済の両立」を目指す。この取り組みの背景には、土壌環境に関連する法規制や地価の評価基準の変化と、中小建設業経営者としての高い志と強い信念があった。
強い信念が不可能を可能に!地域とともに環境と経済の両立を目指す
尾鍋組と「アクパド工法」との出会い
三重県松阪市、松阪牛で有名なこの地域の中心松阪駅から、車で心地よい渓流に沿って走ること40分、緑豊かな自然に囲まれて尾鍋組事務所は建っている。尾鍋組は1962年、現社長尾鍋哲也氏の父、尾鍋禮治氏によって建設工事請負業として創業され、1984年に株式会社尾鍋組として設立。公共土木工事を主とする建設会社である。
主に公共土木工事を受注・施工してきた尾鍋組は、高度成長期には公共投資の増加に伴い売上も増加、しかし公共投資の減少に伴い売上も減少していった。「社会から求められる企業」を目指し試行錯誤するなか、環境にやさしい自然石だけを使用する住宅の地盤改良工法「アクパド工法」と出会う。
===================================================================
環境にやさしい地盤改良工事「アクパド工法」
現在、新築される住宅の約半数で地盤改良工事が行われていると言われているが、一般的にはセメント系固化材か鉄管杭が使われている。
セメント系固化材を使用する場合は、地中で六価クロムが基準値を超えて発生する可能性が平成12年に国土交通省から発表されている。また鉄管杭は、将来まで地中の人工物として残る。資産(土地)価値の面から見ると、土壌汚染や地中の廃棄物は土地の価格に影響する。土地は個人の大切な資産である。
それと比べアクパド工法は、セメント系固化材・鉄管杭などの人工物を使わず、砕石(小さく砕いた自然石)だけを円柱状に地中に詰め込む工法であり、土壌汚染もなく地中に人工物を残さず土地の価値も守ることができる。また、地域の砕石工場で生産される砕石を使用するため、地域産業の発展と生産・輸送段階でのCO2削減にもつながる環境配慮型工法なのである。
さらに、地盤改良工事は今まで培った公共土木工事の施工品質管理ノウハウを有効に活用できる分野でもある。
===================================================================
金融機関やNPO法人と連携
尾鍋組の取組みは環境配慮型の地盤改良工事「アクパド工法」を施工し始めたことのみに留まらない。環境に配慮する消費者に経済的なメリットを提供するために、三重大学関連NPO法人地域開発研究機構、百五銀行など5団体による新しい“連携”を生んだことである。
百五銀行の「百五アクパド工法優遇ローン」は、尾鍋組が「アクパド工法」で設計・施工を行い、ビイック社が強度確認試験をシールドエージェンシー社が地盤保証を行い、三重大学関連NPO法人の地域開発研究機構が施工認定書を発行する。
百五銀行はNPO法人の施工認定書を受けて消費者に対し住宅ローンの金利を優遇する。
この連携により、環境に配慮する消費者は経済的メリットを得ることができ、金融機関である百五銀行も地元企業として地域の環境配慮に貢献したことともなる。
連携によって全てのステークホルダーが地域の自然環境の保全に貢献したこととなるという画期的な新連携事業なのだ。WIN−WIN-WIN-WIN-WIN-WINというところである。
===================================================================
「絶対にあきらめない!」〜日本環境経営大賞 環境連携賞の受賞へ〜
この連携に至るまでの道のりは決して容易なものではなかった。社内では、アクパド工法事業に取り組むことに対して、社内体制や導入コストの面で賛同を得られたわけではない。しかし尾鍋氏は、環境問題は人類の生存にかかわる重要な課題であり、この工法はこれからの時代に求められる工法であるという信念を貫き社内を説得した。さらに、金融機関による住宅ローンの金利優遇を適用する発案に対して周囲全員の意見は、
「絶対に不可能!」
それでも諦めずに、三重大学文学部の児玉克也教授を訪ねマーケティング戦略の共同研究を開始。児玉教授が理事長である三重大学関連NPO法人地域開発機構と金融機関、中小企業が連携し「アクパド工法へ住宅ローン金利優遇を適用するビジネスモデル」を構築した。「何事も諦めた時に可能性はゼロになる。どうすればできるのかを考え続けることが大切。」と尾鍋社長は信念を語る。
地盤改良分野への取り組みに対して、三重県より「中小企業経営革新支援法(第258号)」の承認を受けた。またこの連携ビジネスモデルは、2005年7月、経済産業省及び国土交通省より「異分野連携新事業分野開拓(新連携)計画」の認定を受け、2007年7月、第5回日本環境経営大賞 環境連携賞を受賞した。
地域の未来・志援センターからのコメント
尾鍋組の取り組みは、住宅の地盤改良工事における土壌汚染、地中の廃棄物、個人の資産(土地)価値、担保価値など「環境と経済」に影響する社会問題を的確に捉え、中小企業として環境を保全する事業に積極的に取り組むと共に、中小企業単独では解決出来ない経済的な課題を地域のNPO法人や金融機関などの異分野の組織と連携することにより解決し、「環境と経済の両立」を目指す社会的価値の高い取り組みである。
中小企業、NPO法人、金融機関などが連携して住宅会社や消費者と共にCSRを推進する好事例として、多くの市民、行政、企業、各種団体に知っていただくと共に、全国の金融機関や大手住宅会社などにもこの連携の仕組みを活用してほしいと思い全国に紹介する。