三井物産株式会社
三井物産は「大切な地球と人々の夢溢れる未来作り」を企業使命と定め、社会や環境の課題解決に取り組んでいます。資源エネルギー、物流、インフラ、コンシューマーなどさまざまな分野を通じて「世の中の役に立つ価値のある良い仕事」を創出し、さらに社会とパートナーシップを築きあげることが当社のCSRにおける大事な取り組みです。
「良い仕事とは何か」を問い続ける
三井物産へのヒアリング調査
三井物産を訪れたのは、8月上旬の午後という猛暑のさなかであった。眼下に皇居のみどりを見渡すことの出来る見晴らしの良い会議室で、CSR推進部の小田切次長より1時間半にわたり、話をうかがうことができた。
同社のCSR推進体制は、CSRにかかわる経営方針および事業活動に関する経営会議への提言、CSR経営の社内浸透、また「特定事業」に対する答申などをその目的として、CSR推進委員会を設置しており、CSR推進部がその事務局を担っている。同部には4つの室があり40名弱のスタッフが働いていると聞き、その人数の多さに驚くと同時にCSR推進にかける同社の本気度を見る思いがした。
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ノミネートされた「売り手よし」部門で特に力を入れているところ
三井物産は石油などのエネルギー開発から食料品、日用雑貨まで、世界中でビジネスを展開する総合商社であり、同社のCSRをひと言で言い表すのは難しいが、根底に流れるのは、経営理念(Mission、Vision、Values)に基づく「良い仕事とは何か」を問い続けることであると小田切次長は述べていた。「高い志、正しい目線で、世の中の役に立つ仕事を追求していこう」という意識を全従業員で共有することに力を入れており、同社としてどれかの事業に特化しているという意識はなく、「売り手よし」の部門でノミネートされたことに驚いておられた。また同社は多様なステークホルダーの中でも、株主や市場への責務も「売り手よし」だと考えていて、事務局の設定した人権や労働者の権利だけが「売り手よし」であるという基準とは異なる見解を持っていた。これは同社が、CSR活動は各企業が独自の方針で主体的に行うものであるという本質を理解して実践していることの表れであると感じた。
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取り組みの効果
三井物産では本業を通じてCSRを推進していくことがベースにあるので、各方面でシナジー効果はでているとのこと。特に鉄鉱石採掘をはじめ、ビジネス上の密接なパートナーであるブラジルとは、ビジネスを超えた社会との取り組みを重要視している。社会貢献活動の一環として、在日ブラジル人学校の支援や、ブラジル人コミュニティの支援活動をしているNPOへの援助など、在日ブラジル人子弟教育支援活動を推進している。この取り組みが本国に伝わり、三井物産に対する理解が深まり結果として新しいビジネスにスムーズに入っていけるなど、本業に良い効果をもたらしているとの認識が示された。
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CSR推進に関して苦労している点、課題
前述したように本業を通じて社会貢献するというのがベースにあるが、経済性をしっかり固めた上で、環境、社会へ配慮していくのが基本であり、収益性とのバランスに悩む従業員もいて、従業員が社会的課題を事業を通して解決して欲しいと、同社は願っている。
現在の事業評価制度は、単年度の収益性は2割であり、残りの8割は長期的かつミッションに合致した仕事をやっているかで評価している。プロセスを重視し仕事の質を高めると収益も後からついてくる、という考えを社内に浸透させるのに5年を費やした。かつて単年度の収益を追求するあまりコンプライアンスをおろそかにし、大きな不祥事を二度起こし会社存亡の危機を招いたときがあり、その反省に立って現在があるのである。
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今後取り組んで行きたいCSRテーマ、展望
2006年は三井物産創立から130年目の節目を迎え、「原点から未来へ良い仕事」というテーマを設定し、「良い仕事とは何か」を見つめ直す活動を行ってきた。その一環として、全従業員参加の「良い仕事ワークショップ」を海外を含む全活動拠点で行った。CSRという言葉だけでは偏った考えを持つ従業員がいるかもしれない中で、「良い仕事」を問い直すことにより従業員の意識も変わりつつあり、今後もこの活動を継続していきたいと考えている。
最後に、小田切さんにとって「良い仕事とは何か」という問いかけに対して、「常にチャレンジしていくこと。仕事を通じて自分も成長し、ひいては世の中に役立ち、会社への定量的リターンにもつながる。」と力強い答えが返ってきたのが印象的であった。
パートナーシップ・サポートセンター調査員から
三井物産は、従業員41,000名、売り上げ15兆円、海外140ヶ所以上に拠点を持つ、文字通り日本を代表する総合商社である(数字はいずれも連結対象を含む)。事業分野も多岐に亘り、CSRのみならず会社方針を全従業員に浸透させるのは至難の業であるというのは容易に想像できる。今回の訪問だけで、同社のCSR活動のすべてを語ることは出来ないが、明確な方針に基づく社長のリーダーシップが発揮され、「良い仕事とは何か」を問い続けることにより、従業員の意識改革を図ろうとしている姿勢は充分感じられた。本業を通じて社会課題を解決していこうという原点は、コンプライアンスだけが目立つ日本のCSR活動を超えたところを目指しているように思えた。(Fs)