ファシリテーターのような中立な第三者が必要とされるようになったのは、企業でも行政でも地域社会でも、前例のない課題に取り組む状況が増えてきたからです。
そこには、経験の長い者や役職の高い者がよりよい答えを出せるとは限らないなか、当事者がフラットな関係で智恵を出し合って解決を図ろうとする考え方があります。
そんなフラットな関係での対話が成り立つように、ファシリテーターは、参加者が公平に発言できるように配慮しながら、会議を進行します。
地方自治体の条例案や計画案を検討する市民参加の会議では、市民同士、市民と行政の主張がぶつかり合うことがしばしばですが、できるだけ様々な意見を引き出しては、論点を整理し、合意を探っていきます。
ところが、最近では、そのような主張がぶつかり合う会議をうまく仕切るだけでなく、参加者をやる気にさせたり、異なる主体をチームとして融合したりすることが、ファシリテーターに求められるケースが増えてきました。
そこでは、行政が協働で事業を進めるために招集した様々な主体を、チームとして機能させることが役割となります。行政の仕事について話し合う「市民参加」を超えて、市民自らが行動主体となる「協働」が増えてきたことの表れです。
昨年9月から今年2月にかけて5回実施した、神奈川県相模原市の「木もれびの森ワークショップ」は、市街地に残された保全緑地の意味を隣接住民が学ぶ機会とするものでしたが、そのプログラムを企画・運営するために「運営委員会」を設けました。
そこには、行政の依頼で、森の保全活動や鳥の観察会などを行っている各種の市民団体の代表者、森に隣接する複数の自治会の役員、森の保全・活用計画を策定した委員などが参加しました。
当初は、行政の依頼を受けて参加したという経緯、また、森に関する専門知識の差から、運営委員の間には温度差がありました。しかし、一緒にワークショップを企画・運営していくなかで、お互いのことが見えるようになり、チームといえる関係になっていきました。
ワークショップも最終回を迎える頃には、市民団体の方と自治会の方との間で信頼感が深まり、自治会で森の学習会を行う際に団体が講師をしたり、団体が森の保全活動を行う際に自治会が人を出したりする、といった話も行われるまでになりました。
また、現在は、東京都三鷹市の「プレイパーク運営委員会」に、同様のチームビルディングをするファシリテーターとして関わっています。
三鷹市のプレイパークは、行政が呼びかけて立ち上げた運営委員会が、当面は、外郭環状道路の暫定用地に設けられた「北野遊び場広場」で実施するものです。運営委員会は、市内外でプレイパーク活動をしている市民、また、プレイパークに関心のある公募の市民から成っています。
今年2月から始まり、4回の運営委員会を経て、6月1日(日)に1回目のプレイパークを実施しました。
運営委員のうち、すでに他所でプレイパーク活動をしている方々は、今回の運営委員会のコアメンバーになるのは難しいことがわかったため、豊富な経験をもとにサポートする役と位置づけ、公募の方々をコアメンバーとして育成していく方向で進めています。
また、運営委員や当日の協力者を、参加者のなかから徐々に増やしていく戦略をとっており、1回目のプレイパークでも数人の希望者が得られています。
第三者として関わるファシリテーターは、もとより「風の人」であり、「土の人」たちがチームとして機能するようになれば、いつかは去る存在です。そのため、自分がいなくても活動が回るような状態にすることを意識する必要があります。
あまり口数を多く挟むのでなく、自然にコミュニケーションが成り立っている場面では、後ろに引いて見守り、自律的なチームワークを育てる。協働のファシリテーターには、市民参加のファシリテーターとは、また一味違った役割が求められます。