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消える“地域の庭” コミュニティを守れない「協働」 [2008年04月02日(水)]
 防犯・防災や子育て支援にせよ、里山・農地の保全や商店街の活性化にせよ、いま地方自治体が抱える難題の多くは、コミュニティがないことに一因があります。したがって、コミュニティ再生は、自治体行政にとっては喫緊の課題のはずです。
 ところが、足立区に花開いた新しいタイプのコミュニティ「足立グリーンプロジェクト 六町エコプチテラス」が、古い政治と行政の無策のために、いままさに消えようとしています。
 私が副代表理事を務めるNPO法人おおた市民活動推進機構の事業、「ぷらっとツアー」第2弾として、3月30日(日)、「足立グリーンプロジェクト 六町エコプチテラス」を訪れました。
 2年半前に開通した、つくばエクスプレスの六町駅にほど近い「六町エコプチテラス」(以下、エコプチ)は、新駅整備による土地区画整理事業に伴う、神社の移転用地を暫定利用して、2002年10月に誕生した“地域の庭=コミュニティガーデン”です。
 足元から環境問題に取り組む市民団体「足立グリーンプロジェクト」(以下、AGP)が、用地を所有する足立区に働きかけて、「ゆとりとふれあいのポケットパーク」をつくるための「足立区プチテラス設置要綱」を活用して実現しました。

 当初、草が生えるにまかせ、ごみの捨て場所と化していた約2,100uの空き地は、AGP代表の平田裕之さんら若手が「畑をやるんだ」と草刈を始めたところ、近所の人たちが鎌や鍬を手にして集まってきたことから、エコプチへの第一歩を踏み出します。
 エコプチは、ヒートアイランド対策としてキウイ棚をつくり、実際に周辺気温を下げたほか、周囲の家庭から出る生ごみの堆肥化、アルミ缶のリサイクル、雨水や風呂の残り湯の活用などを行う場となりました。
 また、エコ農園を整備し、個人区画(4m×4m)として年5,000円で貸し出して、近所の人たちが、野菜や果物、花の栽培を楽しめるようにしましたが、すぐそばに、虫も含む多様な生物が棲めるビオトープもつくるなど、あくまでエコが目的である点が、区民農園とは違うところです。

 もっとも、足元からエコライフを実践する活動も、コミュニティという副産物を生み出すことで、さらにその真価を発揮しています。地元出身の30代前半の平田さんを中心に、親の世代かそれ以上の近所のおじさん、おばさんたちが集まり、いつも誰かが入れ替わり立ち替わりでいる場になっているのです。
 私たちが視察に訪れた日も、「エコボランティア」というお洒落な肩書きをもつフツーのおじさん、おばさんたちが10数名も来てくださり、空き缶リサイクルで得たお金でつくったというビニールハウス「空き缶ハウス」で、3時のおやつがてら、いろいろな話を聴かせてくださいました。
 他にも、「回転テーブル」と呼ばれる円卓があるなど、井戸端会議ができるようになっています。「人の家だと遠慮があるけど、ここなら気兼ねなく立ち寄れる」といいます。

 フツーのおじさん、おばさんといっても、大工仕事が得意なおじさん、キムチづくりが得意なおばさんなど、それぞれが特技をもっています。それらの特技が事業で発揮されることで、自分の居場所が感じられるのも、エコプチがコミュニティになった秘訣といえます。
 また、代表が若いというのも、「自分の子どもの世代なので、ほっとけない気になる」という声も聞かれました。「代表は口ばかりで、何にもしないから」というおばちゃんの冗談に、一同爆笑に包まれました。若い人の市民活動のセンスと年配者の人間的な温かみが組み合わさって、コミュニティができているのを感じました。
 何より、平田さんの一番の応援団は、実のお母さん。丁々発止で繰り出される、笑いのツボを押さえた面白トークは、「ここに来れば、ただで笑えて、ガン予防にもなるよ」というように、エコプチの元気の源になっているようです。平田さんも、随所に笑いを織り交ぜるかなりの話し上手ですが、この母にしてこの息子だと納得します。

 エコプチは、コミュニティといっても、古いタイプの義務的な共同体ではありません。何より楽しく関われることを前提としていて、無償のボランティアのやる気を引き出す工夫が数多くされています。
 ヒートアイランド対策のためにキウイを選んだのも、藤棚なら見た目はきれいだけど、果物の方が食べられて楽しいからだといいます。また、収穫したキウイを売って収益にすることも当然考えましたが、ボランティアをして稼いだ地域通貨に応じてキウイと交換できる「エコポでQ」という仕組みにしています。これは、無償のボランティアとはいえ、がんばりを評価することがやる気につながるからです。
 ほかにも、NHK『ご近所の底力』をはじめ、テレビや新聞、雑誌などのメディアに多数とり上げられることで、ボランティアは社会の注目を感じてがんばるようになります。また、「空き缶ハウス」やキウイの木の「テツエちゃん」(亡くなった副代表の名前)、菜の花の黄色(Yellow)で畑を染める「プロジェクトY」など、場にストーリー性をもたせることで、夢を共有するのも、成功しているNPOに共通する要素です。

 ところが、そんなエコプチが、この4月6日(日)の「菜の花まつり」をもって閉園します。もとより土地区画整理事業に伴う暫定利用であったため、いつかは終わる事業であったわけですが、終わりは予想よりも早くやってきました。神社の移転だけが、その他の移転とは切り離された「特定ピンポイント移転」という形で、早く行われることになったのです。なぜ、どうして?
 詳しくは、AGPのホームページにある平田さんの文章( http://www.greenproject.net/modules/nsections/index.php?op=viewarticle&artid=25 )をお読みいただきたいと思いますが、誰もが「失敗する」と高をくくっていたエコプチが、地域住民の新たなコミュニティの場となり、メディアにも注目されるようになったことが、古いコミュニティにとっては面白くない事態であったことは容易に想像されます。格好としては、土地区画整理事業の施工主体である東京都が、神社移転を決めることになりましたが、あまりに不自然なピンポイント移転の裏では、政治的な力が働いたと考えるのが自然でしょう。
 そして、暫定利用を認めていた足立区も、都が決めた神社移転、すなわち、エコプチの閉園に対しては、あっさり受け入れたようです。エコプチができたことで、空き地時代にかかっていた年間約60万円の除草費が不要になり、年間約9,000人が訪れる場所になるなど、自治基本条例を定め、協働を掲げる行政としてもプラス面が多かったにもかかわらず、政治的な力や法的なタテマエの前に、エコプチを守り抜くことはしなかったようです。むしろ、住民意見を聴取する機会ももたず、一方的に閉園を迫った形になりました。

 エコプチは、全国でもまれに見る、新しいタイプのコミュニティ形成の成功例です。全国各地での長年の取り組みにもかかわらず、町内会・自治会の活性化やコミュニティ協議会の設置など、地域を1つの組織のもとに強制的に束ねるやり方が成功モデルを築けないなかでは、小さくてもつながる場があることが重要になります。
 足立区からは、代替地の提供などの提示もあったようですが、自治基本条例に定める協働の理念に反し、住民意見を十分に聴かずに一方的に神社移転を受け入れた区役所と妥協してしまえば、自分たちも協働の理念を破ったことになると考え、断ったそうです。それに何より、コミュニティというのは、場所とともに築き上げていくものですから、どこかに代替地を与えられても、同じコミュニティが根付くとは限りません。

 エコプチは、参考にするモデルがないなかで、手探りでつくり上げられた協働の事例でした。協働条例や指針にあるような型にはめたようなやり方でなかったからこそ、スゴイ協働の事例が生まれたわけです。逆にいうと、自治会に花壇づくりをお願いしたり、市民と一緒に草むしりしたりすることが協働だと思っている程度の行政には、こういった事例は理解できる範囲を超えているに違いありません。
 時代を切り開く、本当にスゴイ事例というのは、他の事例のモノマネで生まれることはなく、当事者の情熱があってはじめて生み出されるものです。自治や協働を本気で掲げるのであれば、行政の狭い了見に納まる程度の取り組みで満足するのではなく、常識を超えた市民のパワーを誇り、その応援団になってこそ、成功をつかむことができるといえます。足立区には、ぜひ今回の苦い経験を教訓にしてほしいものです。
 一方、平田さんも、メディアでたびたびとり上げられ、そのことで評価されていると思ってしまったことを反省しているといいます。行政は、担当者によって同じ事業への取り組み姿勢もまったく変わります。そういった属人的な評価にならないように、きちんと文書の形で、組織としての行政に評価してもらうことが必要であったと気づいたそうです。足立区と(財)足立区まちづくり公社とAGPによる評価は、遅ればせながら、閉園決定後に行われています。これを読むと、エコプチの全貌を知ることができます( http://www.city.adachi.tokyo.jp/006/d08100014.html )。

 エコプチが、日本の協働まちづくりの歴史から姿を消すのは、大いなる損失です。しかし、ここを見た多くの人たちによって、また、ここに関わった当事者たちによって、将来的に新たな形で花を咲かせることを信じています。
 そんな最後の花を見に、フィナーレとなる4月6日(日)の「菜の花まつり」には、ぜひエコプチをお訪ねになることを、強くツヨクおススメします。

足立グリーンプロジェクト http://www.greenproject.net/modules/news/
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