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わが身を出発点として 「差別」を考える [2007年12月03日(Mon)]
 12月1日(土)にNHK教育で放送された、身体・知的・精神に様々な障害を持つ当事者が多数出演して、語り合う番組をご覧になりましたか。私をはじめ、ふだん障害者に接する機会の少ない人にとっては、新鮮かつ衝撃的な番組ではなかったでしょうか。
 番組を見ていて、弱いものへの「差別」を生み出す構造について、考えさせられました。
 午後7時から10時までの3時間にもわたり、しかも生放送で行われた番組は、『ETVワイド ともに生きる』の「怒りを忘れた若者よ! これからいったいどーすんねん!? 〜障害者・徹底生討論〜」。
 テーマ自体は、若い障害者が声を上げなくなったことを、これまで自らの体を張って、制度をつくってきた中年以上の障害者が嘆いている現状を討論するというものでした。

 いわば障害者同士の世代間対話なのですが、討論の前提として情報提供される、障害者自身の闘いの歴史などは、大変勉強になりました。私が生まれた昭和40年代に、障害を持つ子の将来をはかなんだ親が、子どもに手をかけた事件などは、ショッキングでした。
 出演者が語る、就職活動で受けた差別、健常者との結婚を相手の親に反対された話など、障害者本人の口から聴くことで、初めてリアルに感じられるものばかりでした。

 ふと振り返ってみると、そういった「差別」は日常生活にあふれています。最近では、学校や職場におけるいじめ、非正規雇用者のワーキングプア、児童虐待やドメスティック・バイオレンスなど。もっとありふれたことでいえば、家庭内での男女の地位の差もそうです。
 私も、現在は、公務員を兼務していることもあって、ほとんど土日もない忙しさのため、共働きの妻に家事・育児をほとんど任せきりになっています。

 わが身を出発点に置いたとき、そこにあるのは、自分の好きな仕事をする「自由」のために、妻を「差別」的な地位に置いて、犠牲を強いている構造です。むかし「搾取」という言葉がよく使われましたが、私の妻に対する関係も「搾取」といえると思います。
 「差別」とは、強いものが「自由」に生きるために、弱いものを「搾取」していることだといえるでしょう。

 今年11月、インドに亡命中のチベット法王、ダライ・ラマ14世が来日しましたが、「自由」と「搾取」の問題は、ダライ・ラマの問題意識にも通じるところがあります。
 文化人類学者の上田紀行・東京工業大学大学院准教授が、ダライ・ラマとの対談を書にした『目覚めよ仏教!』(NHKブックス)のなかで、地位の高い僧侶が他の僧侶や信者を食い物にして肥太っていること、自らも「搾取者」であると認めていることは印象的です。
 誰しも社会的な活躍の背景には、それを陰で支える人の存在があることを忘れてはならないのでしょう。

 宗教的には、物事は互いに関わり合っているという、仏教の「因果」が説くところですし、人は生まれながらに罪を負っているという、キリスト教の「原罪」の思想でも説明できるかもしれません。
 今年もまもなくクリスマスですが、弱者に寄り添い続けたイエス、それを現代社会で実践して見せたマザー・テレサなどは、果てしない「差別」に立ち向かった人間の姿です。

 目を転じて、政治はどうでしょう。政治は、強いものが弱いものを抑圧する装置となるのか、それとも、弱いものを「差別」から救うための武器となるのか。
 政治が、家庭内の問題から国際的な格差まで、人間の社会に深く刻み込まれた「差別」に立ち向かう手段となっているかを、そのつど問い直すことが必要でしょう。

 もっとも、宗教や政治があっても、「差別」が根深く存在しつづけるのは、人が二人以上存在して、いわば「人間」となることで、「差別」は不可避的に発生するものだからです。
 「差別」は、各自の「自由」への希求が生み出す、他者に対する「搾取」によって生じることを、一人ひとりが自覚すること。ここがやはり出発点なのだと、これまでに訪れた、インド、チベット、イスラエル/パレスチナなどを思い起こしながら、あらためて感じているところです。
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