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幕末開国のまち下田に吹く 新しいまちづくりの風 [2007年10月28日(日)]
 ペリー来航によって、江戸幕府が最初に開港したのは、箱館(函館)と下田。下田には、初代アメリカ総領事ハリスが赴任し、唐人お吉の悲話も生まれました。思えば、鉄道や自動車ができる以前の主な交通・輸送手段は船。海こそ玄関だったのです。
 かつては、海上輸送や水産業で栄え、いまは、観光業の不振にあえぐ静岡県下田市。しかし、そんな開国のまちに、まちづくりの新しい風が吹き始めています。
 下田は、近代以前から、港町として栄え、特に、江戸時代に入ってからは、京都・大坂(大阪)と江戸の二大都市圏をつなぐ海上輸送の要衝として、重要な位置を占めました。下田には、早くから碁盤の目状に整備され、風待ちをする船乗りを相手に繁盛した市街地があり、現在も、ところどころに古民家が点在する風情ある中心市街地となっています。
 しかし、シャッターを下した店舗も目立ち、まちなかを歩く人の姿も、決して多いとは言えません。

 今年、下田市役所の仕事で5回ほど訪れる機会に恵まれましたが、そんな下田市街で、思わず足を止めてしまったポイントがあります。

 つい先日、10月に訪れたときに見つけた、「カフェ バー 茶気茶気」(下田市1丁目20-10)です。仕事の打ち上げで他の店に向かう途中、とてもセンスのよいシックな外観に、まず、目を奪われました。
 店先のラックには並ぶのは、フリーマガジン『下田的遊戯』。同伴の下田市職員たちの話でも、現在、このフリーマガジンは、地元で注目されているとのこと。見た目のデザインのよさと、読みやすさと読みごたえを兼ね備えた記事に、どんな人がつくっているのか、大いに興味を引かれました。

 翌日、あちこち観光した後、昼食どきに合わせて、お店を訪ねてみました。少し腰をかがめて、低い引き戸の入口から入ると、なかは間接照明でおしゃれに演出された空間。酒好きの私には、カウンターに並ぶ和洋両方のお酒のビンが目に止まりましたが、その横に若い男性が一人、立っていました。
 この人、この店「茶気茶気」の店主で、かつ、『下田的遊戯』の編集長でもある、渡辺一夫さん。まだ20代の青年ですが、本業の建築やデザインとともに、まちなかに飲食店を構えて自ら料理の腕をふるい、さらに、まちの魅力を発見、紹介するフリーマガジンまで手がけるという、信じられないほどの多才な人物です(しかも、ハンサム)。

 素敵な盛り付けのアジアンテイストの料理をいただいた後、実は、私が理事をしている地元大田区のNPOでも、フリーマガジンの発行をしています、という話を切り出しました。
 『下田的遊戯』は、渡辺さんが仲間とともに、2ヶ月ごとに製作、発行しています。各号5,000部の発行で、地元の人に地元のことを知ってもらうのがねらいだそうです。私たち、NPO法人おおた市民活動推進機構が発行する『やるじゃん!おおた』も、地域でがんばっている人や団体を紹介するものなので、コンセプトが近いといえます。

 帰りの電車が迫っていたため、ほんの5分くらいの立ち話でしたが、渡辺さんの考えのエッセンスに触れることができました。下田市の財政状況は大変厳しく、行政にばかり期待してはいられない。自分たちで何とかしたいと思って、仲間と語らって始めたのだそうです。仲間のうちには、市の職員もいて、記事の執筆もしているとか。
 記事は、下田のまちづくりの取り組みや観光イベントをとり上げたり、魅力あるスポットや歴史を発掘して紹介したりしています。渡辺さんは、全体のデザインはもちろん、記事の執筆も担当しますが、なかでも、「まちの方程式」というまちづくり論は、読みごたえがあります。最新の4つの号をもらいましたが、帰りの伊豆急のなかで、あっという間に完読してしまいました。

 帰り際、教えてくれたのが、「茶気茶気」の向かいの「茶○○(さわわ)」というお店。ずっとシャッター店舗であったため、こんどは、スペースを区切ってテナントに貸し出す、チャレンジショップを始めたのだそうです。おそるべき行動力・・・
 少しくたびれた街並みのなかで、この向かい合った2つのお店は、そのセンスのよい外観が目を引きます。若者が、その才能を活かして、事業を通してまちの活性化に取り組んでいく。行政にも、古い世代のNPOにもなかった、新しいまちづくりの風が、この一角から吹き始めているのを感じました。

渡辺一夫さんのデザイン事務所「K Design Office」ホームページ http://kdo2004.com/
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