この日は、行政が行う事業に市民が参加することをきっかけとして、地域における市民の活動が活性化するという可能性について、3つの事例を題材に考えました。
神奈川県相模原市の村富公園は、ワークショップによるリニューアル計画の策定を、私がファシリテーターとして支援した公園です。そのとき、ワークショップの運営委員を務め、現在も、矢部第四自治会の役員として公園の美化や運営に携わる、池田稔さんが報告者でした。
池田さんは、ワークショップをきっかけとして、隣接する2つの自治会に協力関係が生まれたこと、また、ワークショップやその後の地域活動に関心を持った、地元の麻布大学の教員・学生との交流が生まれ、大学で地域活動について講義をしたり、学生が祭りの御輿を担ぎに来たりするようになったこと、などを報告されました。
今回の会場となった、東京都大田区のこらぼ大森(大田区区民活動支援施設)は、少子化で閉校となった旧大森第六小学校を転用した複合施設です。閉校時のPTA会長として、施設活用の提言づくりに参加し、現在は、こらぼ大森を運営する、NPO法人大森コラボレーション事務局長・さかいかずえさんが報告者でした。
さかいさんは、活用協議のなかで、地域を結び直すような施設にすることを確認し、地域が自主運営する覚悟を固めていった経過、また、場所があることで、手伝えることはないかと聞きに来る人がいたり、夏まつりに地元の大森学園高校が協力したり、といったつながりを生んでいること、などを報告されました。
埼玉県和光市の市民参加条例は、条例にもとづく市民参加の事業を評価する試みを始めたところです。市民参加条例の運用を担当し、各課に市民参加を着実に行ってもらうよう働きかける、政策課市民まちづくり担当の茂呂あかねさんが報告者でした。
茂呂さんは、今年度から導入した評価シートの仕組み、しかし、地域力の向上といった成果指標(アウトカム)の導入にはまだ至っていないこと、などを報告されました。その一方で、意見を言うだけの参加にとどまるのではなく、市民ができることについては、自ら汗をかいてもらえるよう、促進グッズとして、汗をふくための「ハンカチ」をつくったことなどを紹介されました。
市民参加は、行政が行う仕事の内容を話し合うものであるため、基本的には「行政にやらせる、やってもらう」ことを議論する場です。しかし、個々の地域の課題解決について、雇われ人の行政職員の「本気度」には限りがあります。最終的に地域に対して責任を持つのは、直接に利害のある、地域住民でしかあり得ないわけです。
行政が仕事として行う市民参加ではありますが、市民の意見を聴いてやりました、というアリバイづくりだけで終わらせてはもったいない。「本気」で課題解決につながるようにするには、村富公園やこらぼ大森のように、話し合いの機会を通して、人が育ち、意識が高まるなどして、市民が自らまちづくりを担うきっかけとなることが大切なのです。
さて、こんな大事なテーマを話し合うのに、3時間程度で足りるはずもなく、「オレは酒が飲みたいから、地域の仕事をやってんだ」という池田さんのお言葉もあって、夕方からは大森のまちで交流会と相なりました。
実はこの日、池田さんのために、若手の応援団が駆けつけていました。麻布大学の学生として、ともに矢部や淵野辺のまちづくりに取り組み、いまは、NPOサポートセンターのスタッフとなった田邊健史さんです。70代の池田さんと20代の田邊さん。世代を超えて、まちづくりの仲間、飲み仲間なのです。
新婚の田邊さんに、迷言(?)を弄しながら夫婦関係の妙を説く池田さん。二人の関係を見ながら、NPO法人おおた市民活動推進機構の事務局長・中野真弓さんと、「これぞ、まちづくりだよね」と話し合ったものでした。
また、和光市からは、茂呂さんを含めて、政策課と地域振興課の職員が5名、なんと「個人的」に参加してくださいました。これがまた、テレビ局出身の地域振興課市民活動推進担当の野口晋央さんを筆頭に、ユニークな人ばかり集まっており、やはり推進機構の中野事務局長曰く、「とても行政職員には見えない」とのこと。
現在、和光市では、野口さんが担当となり、市民活動センターの開設準備を進めており、協働支援施設を持つこらぼ大森は大変参考になったようで、そういったセンター運営を担う、さかいさんとの話からは、多くのヒントを得られたようでした。
そんな、世代を超え、地域を超えて、魅力的な人たちと知り合っていけるのが、まちづくりのやめられないところ。今回できた「飲み二ティ」が、各地のまちづくりに活かされることを期待しています。