市長交代の大和市 市民自治の政策に異変 [2007年07月10日(火)]
|
4月の統一地方選挙で、市長交代が起きた神奈川県大和市。市民自治の政策のトップランナーと目されてきた同市は、前市長を破って就任した新市長のもとで、大きな政策転換が図られる兆しが見えます。
市長が変わっても大きな方向性が変わらないよう、自治基本条例をはじめ、協働や市民参加を条例で定めてきた同市ですが、どこまで市長交代の影響を受けるのか注目されます。 ![]() |
|
大和市のホームページ。トップページの左端には、主要政策の大きなアイコンが並べられ、市民自治に関わる政策に力を入れていることが一目でわかります。
ところが、現在、その「協働事業」というページを開くと、そこには、赤字でこう記されています。 「※協働事業・市民活動推進補助金事業は、大木市長の就任に伴い今後方針が変更されることがあります。予定している事業、会議スケジュール等についても変更の可能性がありますので、ご承知おきください。」 実際、大和市がパイオニアとなって全国に制度が広がっている、市民が市と一緒に取り組む事業を提案し、その企画段階から両者が一緒に取り組む「協働事業」も、今年6月10日(日)に予定されていた「公開プレゼンテーション」が、土壇場で中止になり、再開のメドは立っていません。 自治会などをベースとした地域の底力の発掘に取り組んだ「市民自治区」に至っては、すでに「制度構築を中止」との決定がなされています。 やはりホームページの「市長のページ」を見てみると、大木哲(さとる)・新市長の市議会での所信表明が載っており、そこでは、土屋侯保(きみやす)・前市長の政策を正面から否定する言葉で埋め尽くされています。 土屋市政では、行政以外の主体が担う「新しい公共」が謳われましたが、大木市長の考えでは、「公共を担う主体はあくまで行政」であり、また、全国に先駆けた政策を発信するのが、これまでの大和市の特徴でしたが、「政策を一番手に実行することは、理想ではありますがリスクも伴い、現実には、失敗すると撤退できない危険性があるものです」といった具合です。 土屋氏は自民党出身でありながら、いわゆる「市民派」のような政策を行い、市民自治を看板政策として掲げてきました。それゆえに、選挙で対決した大木氏は、一般には市民活動に近いと見られる民主党出身にもかかわらず、振り子を大きく戻す政策を標榜することになった面もあるでしょうか。 もっとも、所信表明にも「参加が一部の人々に限られ、特定の市民の意見により、公共サービスの内容が左右されていることがあるならば、それはあってはならない」とあるように、特定の市民が市長と一緒になって市政を動かしていると見えてしまう面があったのは確かで、市民や議員からもそういった批判が寄せられていたことは想像できます。 また、これまで協働事業で取り組まれていたものを見ると、ファミリーサポートセンターの代わりの子育て家庭サポート事業、医療機関が行う病児保育の周知・広報など、他自治体であればすでに取り組んでいるものも目立ちます。それらをあえて協働事業の形で行うことで、市民を公共の担い手とするメリットもありますが、市民一般としては、もっと迅速に市が取り組むべきという思いもあったかもしれません。 元祖の大和市はまだしも、大和市モデルの協働事業を導入した自治体によっては、市民一般にそれほど貢献する事業ではなく、単に市民活動団体がやりたいだけの事業と思われるものも目につきます。課題解決のための制度というより、制度を使うこと自体が目的化していると言えるかもしれません。 これまでは、市民自治の政策でトップランナーであった大和市が、無条件にモデルとされてきた面がありますが、市長が交代した大和市のみならず、これまでフォロワー(追随者)であった自治体でも、改めて大和市モデルに問題はないか、思い返してみる必要があるでしょう。 なお、私自身は、大和市の協働事業の仕組みは、ある程度の具体的な「事業の提案」が必要という意味でハードルが高い面があり、むしろ、本当に困っている「課題の提起」ができる仕組みの方が必要ではないかと考えています。 提起された市民が困っている課題に対して、市民活動団体や自治体を含む、様々な主体が協働で取り組むテーブルに着くという仕組み(青森県の「パートナーシップテーブル」のイメージ)であれば、協働自体が目的化することもなく、課題解決のための協働を行えるでしょう。 それにしても、これまで市民参加による条例づくりの現場で言われてきた、「市長が変わっても市の方向性が変わらないように条例で定める」という教科書的な説明については、本当にそうだろうかと疑ってかかる必要があります。 やはり市民自治の政策のトップランナーであった埼玉県志木市も、穂坂邦夫・前市長の勇退後、かなりのゆり戻しがありました。首長が市民自治の政策を看板政策にしてしまうと、首長交代時の政策変更のターゲットになってしまうリスクがあることを示しています。 「既に条例が施行された内容であっても、柔軟に対応すべきであり、私は、条例自体を見直すことも辞さない覚悟で大胆に取り組みたいと考えております。」(大木市長) 「新しい公共を創造する市民活動推進条例」による協働事業には変更の兆しが見られ、前例のない規模の市民参加で策定された大和市の憲法「自治基本条例」はどうなるのか。トップダウンで進んだ市民自治の政策の行方から目が離せません。 大和市ホームページ http://www.city.yamato.lg.jp/ |





