大田区長選挙の結果は、次の通りです。
当 松原忠義 85,472
宇佐美登 76,463
小松恵一 30,414
佐伯正隆 20,415
内田秀子 19,194
岩崎弥太郎 7,462
当選したのは、区議、都議を各10年務めた、地盤が強固な自民党推薦の松原氏。次点は、前衆議院議員(民主党)で、知名度が高く、年齢も40歳と若い宇佐美氏でした。
新聞等では、羽田空港の跡地購入、JR蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶ「蒲蒲線」の整備などを争点に見せようとしていましたが、世田谷区の下北沢再開発のように区を真っ二つに割るほどのものではありませんでした。しかも、上位3名はいずれも推進の立場であったため、勝負の決め手になったとは言えません。
また、候補者全員が新人となり、現職への対抗策や「多選」批判は武器とはなりませんでした。批判の対象が明確な場合に強さを発揮する「市民派」を掲げた、元区議・内田氏の戦略は不発に終わりました。
むしろ、誰がなっても新しい区長という点で、区民が何らかの新しさを期待したのは確かです。この点は、現職から後継指名を受けた、元助役・小松氏には不利に働いたと言えます。
何らかの新しさという点で、松原氏は、初の役人出身でない区長の実現を訴え、宇佐美氏は、民主党の若手国会議員であったイメージを打ち出しました。ことに宇佐美氏は、抜群の知名度もあり、漠然と「変わる」ことを求める層の支持を多く集めたと言えます。
それだけに、急に思いついたように、一番遅く立候補を表明したのが、致命的になりました。早くから立候補を表明し、支持層の重なる内田氏との一本化を図っていたら、宇佐美氏の勝利に終わっていたでしょう。
市民参加や協働による自治体経営を支援する立場の私としては、区議会の多数派と区長がなれ合うことには反対ですので、「市民派」の区長誕生に大いに期待するところでした。
しかし、「多選」批判が使えなかったうえ、政策的な争点も提示できず、単に「区民主体の大田区に」というスローガンだけでは、支持を広げるには不十分でした。
「市民派」が、一部の目覚めた市民の支持を得るだけでなく、多くの市民をその気にさせるには、わかりやすい争点を自ら演出することが必要だと痛感しました。
ところで、今回の統一地方選で、最も驚いたのは、市民自治の政策に力を入れてきた、土屋侯保・大和市長が落選したことでした。提案・協議型の協働事業の先鞭をつけ、住民自治と団体自治のバランスのとれた自治基本条例を制定、市民自治区によるコミュニティ政策にも取り組んできた土屋氏は、少なくとも外部の目には盤石に見えていました。
しかし、4期目をめざしたことが「多選」批判を生み、一騎打ちであったこともあり、対立候補に敗北。市長の座を去ることになりました。
しがらみのない「市民派」が首長をとるには、政策的なものにせよ、「多選」のようなものにせよ、わかりやすい争点を設定すること。また、できるだけ支持層の重なる候補者を減らすこと。今回の選挙で見えた課題を、次のチャンスでは活かしたいものです。