私自身が、大田区内の市民活動に足を突っ込んだのは、2000年のことです。当時、大田区では、新たな長期基本計画の策定を行っており、その検討を行う審議会の傍聴に出かけたのがきっかけでした。
10人くらいの傍聴者がいたでしょうか。休憩時間に入ると、「こんどこんなイベントをやるので、来ませんか?」というような勧誘が始まりました。傍聴席に新顔がいれば声をかける、というのは仲間集めの鉄則だったのですね。
大田区長期基本計画審議会では、公募で入った委員が、面白い試みをしていました。公募委員は市民一般の代弁者と位置づけて、広く市民の意見を聴き、長期基本計画の市民案をまとめる「市民フォーラム」を行ったのです。もちろん、私も参加しました。
そこで知り合った人たちが、実は、「推進機構」の中核メンバーとなっています。行政が設けた市民参加の機会が、市民同士のつながりを生むことにつながれば、それは市民参加の大きな成果と言えます。いま振り返ると、長期基本計画づくりが、その後の大田区内の市民活動の大きなステップになったことは確かです。
ついでに言うと、このとき「市民フォーラム」を支援していたのが、私の古巣の「NPO法人東京ランポ」で、私にとっては、新たな職場を得るきっかけにもなったのでした。
当時、「市民フォーラム」を支えたのは、大田・生活者ネットワークを母体に市民活動をしている人たち、それから、子育て政策の提言活動などを行っている「ふぼれん」の人たちでした。そこに、私のほか、PTA活動やマンション自治会の活動などを行っている、何人かの新たな人材が加わったのでした。
その後、このうちから、文化活動支援施設「おおた文化の森」の運営協議会の委員になる人、廃校施設の跡地活用をした「こらぼ大森」のスタッフになる人などが出てきました。私は、大田区の連携・協働の基本方針を策定する検討会「おおたパートナーシップ会議」の公募委員となりました。
長期基本計画づくりに携わった「市民フォーラム」の後、そういった実践活動を重ねるなかで、市民自治を実現するうえでの行政の限界が見えてきます。不十分な予算のうえに制約の多い施設運営の委託、市民との協働に創意工夫を発揮することを認めない職員組織など、行政と一緒になって行動することの限界を感じるようになってきました。
そこで、市民自治は市民がリードする形で進めよう、と決意するに至ります。「ふぼれん」を通して知り合った、手話によるろう児教育、インターネットによる映像配信、食育などの分野で活動する仲間も加わり、「市民フォーラム」当時より、さらにネットワークを広げて、「推進機構」の立ち上げとなりました。
上記で紹介したような活動を行っている仲間が、「推進機構」の理事となっていますが、会員には、大田区の有名どころの介護団体、障がい者団体、男女共同参画団体なども、団体や個人で名を連ねます。
また、「推進機構」の主要な事業である、フリーマガジン『やるじゃん!おおた』、協働オフィス『ぷらっとホーム大森』、NPOマネジメント講座などを通して、20歳代から30歳代の人たちも、「推進機構」の活動に関わるようになってきました。
世代交代は、町会・自治会でもNPOでも共通する重要な課題ですが、幅広い世代が活動に加わっていくような兆候が見られます。
世代と言えば、「推進機構」の理事は20歳代から60歳代までいますが、年齢や経験による上下関係を感じないのがよいところです。お金で人を動かす会社や役所と違い、NPOの理事は自発的な動機で動きますので、上下関係や強制は禁物です。互いの特技や特性を尊重しながら、活かし合うことが重要になります。
組織づくりが得意な人、助成金をとるのが得意な人、事務作業が得意な人、物書きやデザインが得意な人、話し合いをまとめるのが得意な人、機械整備や大工作業が得意な人、魚釣りや料理が得意な人など、それぞれの持ち味を活かし合いながら活動しています。
組織を立ち上げてから約1年、NPO法人となってからは1週間と、いずれにしても、まだまだこれからのNPOですが、大田区内の市民活動のネットワークの核となり、市民自治の社会づくりの原動力になるというミッションを忘れず、今後も邁進していきたいです。
※ 2月17日(土)東京新聞朝刊で、『やるじゃん!おおた』のことが紹介されました。