「黄金まちNPOステーション」を立ち上げたのは、北九州市立大学の楢原真二教授と学生たちです。彼らは、中間支援組織「キャンパステーション」を結成して、福祉、環境、まちづくりなどをテーマに、市民、NPOと連携した事業を展開するとともに、NPOのパワーアップのためのセミナーなどを行っています。
2003年から毎年作成している『北九州NPOハンドブック』は、市内のNPOを1つひとつ訪問してまとめた、内容の濃いデータ集です。NPOが抱える様々な課題が実地で把握されており、その1つ、活動拠点の課題への対処が、今回の「黄金まちNPOステーション」開設につながっています。
私は、2年前に楢原教授と知り合ったのが縁で、実家が福岡ということもあって、夏に帰省するたびに、北九州の市民の皆さんと交流する機会を設けてもらっています。
今年の8月に帰省した際は、もちろん、「黄金まちNPOステーション」におじゃましました。ほとんど同時期に、同じようなオフィスを立ち上げたという奇縁もあるため、今回のテーマは、「市民版協働(共同)オフィス」でした。
このテーマで、当事者同士の交流が持たれたのは、おそらく、本邦初!の歴史的な出来事でしょう。8月12日(土)のことになります。
「黄金まちNPOステーション」は、その名が示すように、「黄金(こがね)市場」にあります。「ぷらっと」もアーケード付き商店街のなかですが、こちらは2メートルほどの通路が入り組む屋根付き市場のなかです。
向かいには魚屋さん、その隣には八百屋さんが並ぶような狭い通路を歩いていると、突然、雰囲気を異にする事務所が現れるのですから、いやがうえにもお客さんの目にとまります。
もともとは、2年前まで魚屋さんだったところです。所有者から市場の活性化のために使ってほしいと持ちかけられ、5年間は無償で貸してもらえることになっています。
すっかり市場にも溶け込んでいるようで、情報交換会の後に、市場で買ってきた料理で懇親会をしていると、向かいの魚屋さんから差し入れがありました。また、通路の列ごとに点灯する電灯は、最後に帰るお店が消すのがルールで、「先に帰るから、電気頼んだね」と声がかかっていました。
(また、「キャンパステーション」の事業として、市場のアーケード内に会場を設け、NPO会計講座や商店街活性化シンポジウムなどを開催しています。)
名前に「NPO」と入っているように、いまのところ、NPO(法人格は問わない)だけを対象としており、次のような5団体が、公募のうえ審査を経て入居しています。家賃は月5,000円です。
○玄海ライフセービングシステムズ
○北九州後見支援センター
○北九州まなび場
○CAP北九州
○キャンパステーション
事務スペースは、部屋ごとに分けたり、仕切りを入れたりするのではなく、1階の真ん中に机を向き合わせる形で固められています。2階は、和室と洋室が3部屋ずつあり、いまのところ、相談室などとして使っているそうです。
広さは、1、2階合わせて、延べ約140uですので、「ぷらっと」とほとんど同じです。
さて、情報交換会は、お盆の時期ということもあって、13名の参加でしたが、入居団体のうち4団体からも参加があり、「黄金まちNPOステーション」と「ぷらっとホーム大森」のお互いの活動報告や質疑応答を行いました。
(現在、北九州の若松に赴任されている、「大和市自治基本条例をつくる会」の会長だった太田善夫さんにも、来ていただきました。)
私に寄せられた主な質問は、「入居者の利用率(稼働率)はどうか?」「家賃以外でどのように稼ぐのか?」「商店街とのつながりは?」「ソーシャルな活動の基準は?」「行政との関わりは?」といったものでした。
これはとりも直さず、あちらが悩んでいることを反映しており、「家賃が安いため物置き程度の使い方になってしまうのでは?」「入居者同士の相乗効果をどう生むか?」「市場の活性化にどうつなげられるか?」「入居者をNPOに限定しない方がよいのか?」「行政をあてにしないで事業をやるには?」といったことが、課題であるようでした。
建物こそ無償で提供されているものの、改装費は自分たちで持たなくてはならず、いまのところ楢原教授のポケットマネーで賄っているのが実情です。家賃の5,000円というのは、自治体が設置しているNPO向け貸オフィス並みの安さであり、オフィス環境の整備の投資に回すには十分ではありません。
個人に金銭的負担が偏っていては、事業の継続性が危うくなります。「ぷらっと」のように会員種別を増やして、応分の会費(家賃)に切り換えることも考えているようでした。
ともあれ、市民活動や社会起業の拠点となる空間を、市民の手で設けていこうという動きが、これからますます増えるのを予感させる、本邦初!の市民版協働(共同)オフィス情報交換会でした。