昨日(10日)、WACからほど近い田町にある芝浦工業大学キャンパスで行われた、もうひとつの住まい方推進協議会主催の「これからの高齢者の住まい政策を考える」という会合に参加しました。
「衣」「食」「住」のうちでも、「食」と「住」は高齢者でなくても関心が高いところです。
私は10数年農業に携わってきたので、「食」の部分は身近にあったのですが、高齢者問題を考えるとき、どうしても「食」よりもこの「住」の部分が非常に大きい問題だと感じるようになりました。
今回は2部構成で第1部では下記の方がそれぞれのテーマで講演をされました。
@被災地の高齢者住まいの状況 田村明孝(タムラプランニング代表)
A事業者から見た高齢者住まい法の課題 浦田慶信(生活科学運営 代表取締役)
B特定住居制度の提案 池田徹(生活クラブ風の村 理事長)
コメンテーター 長谷川洋(国交省国土時術制作総合研究所住環境計画研究室室長)
最初に田村氏から今回の震災により被災した高齢者施設の概況の説明がありました。
正確な数字はまだ出ていませんが、約35,000か所、10万人以上が被災しているのではないかという報告があり、この震災の被害がいかに深刻であるかを突き付けられました。
なかでも、宮城県の施設の被害が深刻であり、全施設のうち7割が被災しているという事実に大変に驚きました。
今後、この問題はかなり注意深く見ていけない問題であると考えさせられました。
他の講演者からは主に改正される「高齢者住まい法」を踏まえ、独自に進めるユニークな事例が簡単に紹介されました。
私が大いに関心があったのは、生活科学運営の進める『多ニーズ対応型住宅“つどいの家”』でした。
小規模多機能型居宅介護+高専賃+グループホームという複合型の施設で、場所によってはここに地域交流スペースが併設され、運営は地域のNPOやワーカーズコープなどが行うというものです。
また、生活クラブ風の村が現在、千葉県稲毛で建設している複合施設はさらに、介護&訪問看護ステーション、児童ディサービス、診療所(外来・訪問治療)といった福祉施設にとどまらず、生活クラブ生協の店舗(配達サービス可)、惣菜・弁当の店、福祉用具の店舗、コミュニティカフェ、生活相談窓口…と、ここ1か所ですべてのことが足りる施設になっていることが驚きでした。
また、この施設が利用者や入居者だけでなく、地域の人達と共に作られ、ひきこもり等の人達も働ける新たな就労機会の場所になっていることに感嘆しました。
こういった施設が中学校区に1か所あれば素晴らしいですね。
第2部では会場の参加者も交えてのパネルディスカッションがありました。
今回の改正法では、高専賃や高優賃などが廃止され、「サービス付き高齢者住宅」に統合される欠点や欠陥が話題となりました。
また、要介護者向け住宅が圧倒的に少ない現状の中で、これからの高齢者住宅政策として、建設のための補助金よりも、家賃補助などの入居しやすい環境を作る施策も重要だという議論がありました。
参加者からも国全体の横並びの形ではない、地域差や経済差に配慮した柔軟な対応を求める声もあり、縦割り行政の問題がここでも提起されました。
時間的な制約があり、「サービス付き高齢者住宅」と言いながらも、ソフト面の問題の話があまりできず、震災の復興後の新しい高齢者住宅への提起などが少なかったのは残念でしたが、大変に得るものが多い会合でした。
私たちが安心して暮らせる「終の住処」を作るためには、行政の力には限界があり、企業+NPO+社会福祉法人+生協…などの「協働」による新たな社会的経済セクターが必要なのではないか…。
私たちも高齢者を応援する団体として、かなり真剣に住宅問題にも取り組まないといけないな〜・・・そんなことを考えながら帰宅しました。