とよた日本語学習支援システム(愛知県豊田市)
愛知県豊田市は、自動車産業が集積する東海地方の中核都市であり、欧米からのビジネスパーソンの来訪も盛んな「国際都市」である一方、人口の3.9%にあたる約1万6千人の外国人の住民が暮らす「多文化共生都市」でもあります。外国籍住民を国籍別でみると、2008年5月1日現在で、ブラジルが最も多く7,896人、次いで中国が2,839人、韓国・朝鮮が1,575人となっています。
この背景には、1990年の入管法改正で、日系人に就労制限のない「定住者」の在留資格が与えられたことにより、中南米からの日系人が急増したことがあります。彼ら/彼女らは、東海地方の自動車産業を支える人材として派遣や請負といった形態で、製造現場で働いています。
当初、外国人は数年で帰国するとみられていましたが、現実的には滞在が長期化してきており、言葉の問題や子弟の教育、労働、医療等の問題が顕在化しています。また、雇用の面でも、外国人の多くは派遣や請負といったいわゆる「間接雇用」であり、景気によって左右される不安定な雇用形態や、雇用期間が短いために熟練した技術が身につかない、正社員化への道筋が見えないために日本での将来の展望が開けないといった課題があります。
一方で、同様な課題は、外国人が働く企業の側にも生じています。多くの外国人が製造現場で働いているものの、外国人の日本語能力を客観的に評価する指標がないために、意欲のある外国人を採用・登用することができないという悩みを抱えていました。
豊田市はこうした声を踏まえ、一定の検討期間を経た後、2008年4月年6月より「とよた日本語学習支援システム」のモデル事業を始めました。これは、市内で国際交流や外国籍住民支援に取り組む(財)豊田市国際交流協会や国立大学法人名古屋大学、豊田商工会議所、、NPOといった関係機関の協力を得て、豊田市が立ちあげた同市における日本語学習支援のプラットホームです。実際には、日本語学習の教材開発やガイドラインの策定、専門人材の育成・派遣、日本語能力の判定方法の開発、インターネット学習のための環境整備を行い、2010年からの本格運用をめざしています。

誰でも、どこでも、いつでも 学べる 日本語学習環境づくり
このシステムの最大の特徴は、包括的かつ持続可能な日本語学習の環境づくりを、地域全体で構築しようとしている点です。学習内容も、地域で暮らす生活者の視点が強く意識され、地域コミュニティでのトラブル防止や相互理解が進むよう、外国人が日常生活で最低限必要な日本語能力を習得できる構成となっています。
また、日本語教室の運営のノウハウもガイドライン化される予定で、多様な教材や学習方法、教室の運営方法を想定し、日本語教室の主催者がガイドラインに沿ってカスタマイズできるように設計されています。今まで、地域のボランティアグループ、国際交流協会、学校、企業といった関係団体が別々に担ってきた日本語教室を、地域のしくみとして構築しようとしている点が目新しいといえます。
2008年度には2社で、企業内での日本語教室がスタートしています。その中には、外国人従業員を受け入れている企業と従業員を派遣している派遣会社が協力して、日本語教室を開催しているケースもあります。日系ブラジル人の多くは間接雇用のため、勤務先の企業での日本語教室への参加には送りだし側である派遣会社の協力が欠かせないのですが、現状ではまだ課題が多く、企業内の日本語教室の開催は、先駆的な事例といえます。
さらに、今年11月にはe-ラーニングによる日本語学習サイト(ポルトガル語版)がウェブサイト上にオープンし、どこでも、いつでも学ぶことができる環境が整備されました(図表1参照)。現在の多くの日本語教室は、時間や場所が限られており、学習者が継続的に通うことが難しいのですが、e-ラーニングシステムステムはそれらの課題を解決できる手段として期待されています。次年度以降は、会話場面を増やすとともに、中国語、スペイン語、タガログ語にも対応する予定です。
図表1 とよた日本語e-ラーニング 画面

地域全体で取り組む 日本語能力の可視化
このシステムでは、独自の日本語能力の判定基準「とよた日本語能力判定」の開発を行っています。今まで外国人労働者の基礎的な日本語会話能力を判定できるような尺度はほとんど存在しておらず、このことが、外国人労働者次のキャリアを描きにくいことの要因ともなっていました。今後、就職の際に活用できる尺度が開発されれば、メリットとして次の点が挙げられます。
まず企業にとっては、採用や登用等、人事制度の基準として活用することが可能となります。加えて、企業内でのコミュニケーションの改善が製品の品質管理の向上にもつながることが期待できます。また外国人労働者にとっては、日本語能力が雇用に直結すれば、学習への大きなモチベーションとなり、日本語を習得することにより将来にも展望が開けてきます。このように、全員がメリットを実感できる制度設計は、多文化共生というテーマに、地域いう横軸を通したことで初めて可能になったといえます。
日本語の習得で、ひろがる仕事の選択肢
米国に端を発した世界的恐慌により、東海地方の製造業の現場においても、日系ブラジル人をはじめとする非正規雇用者が解雇され、地元自治体では、解雇された外国人労働者への対応が急務となっています。派遣会社の寮からの退出を迫られている外国人も多く、住宅の確保や当面の生活維持が喫緊の課題です。
とよた日本語学習支援システムでコーディネータを務めている土井佳彦さんはこう指摘します。
「この危機的ともいえる状況に直面し、自治体は緊急性が高い課題への対応に追われていますが、しかし長期的に見た場合、日本語を学び認定を受ければ、働くことができる職種の範囲が広がると思います。また、製造業以外にも選択肢が広がったり、正社員として採用されることは、日本での生活の安定を考えるうえで大きな強みになります。」
生活が安定するということは、子どもの教育にも良い影響をもたらしますし、地域のトラブル防止にも役立ちます。このような意味からも、当システムの果たす役割は大きいといえるでしょう。
【参考資料】
とよた日本語学習支援システムウェブサイト http://www.toyota-j.com/
いろいろな人と人との関係が、このシステムを支えています。
今の職場にきて6年目になります。日本語はまあまあできるのですが、仕事で、班長さんと日本語で話せるようになるのが、とても役立ちます。楽しいです。
(参加者イノウエ タイチさん 来日13年)
ブラジル人の人たちは仕事で疲れているのに、日本語へのモチベーションを高く保つのは大変だと思います。私自身は、終了後は充実感があり、がんばろうという気持ちになります。毎週、自転車で来るので雨の日は大変ですが(笑)(日本語パートナーの門間美智子さん)
教えるという感覚はなくて、何かを共有できればという思いが大きいです。ここで生活する上で、大変な問題もたくさんあると思うのですが、日本語教室に通うことで、少しでも問題が解消できて、日本が好きになってもらえれば。(同・大山琴代さん)
●「日本語パートナー」とは、日本語会話のパートナーとなるボランティアです。
他で関わっていた日本語教室と比べて、笑顔が多いです。コミュニケーションの取り方や相互のやりとりが重層的なので、関係性も深まるのだと思います。(プログラム・コーディネーターの北村さん )













愛知県知多半田の小高い丘にある、木をふんだんに使った建物「アートスクウェア」に「中華茶房うんぷう」がある。ここの名物メニューがしょうゆベースのこってり系ラーメン「黒豚うんぷう麺」である。スープは、江戸時代から醤油所として有名な地元武豊町の「傳右衛門(でんうえもん)」を使っている。この醤油は江戸時代から使っている樽を使って醸造しており、そこに生きついている菌がコクのある味を作り出している。

エネルギッシュに活動を続けるむそう、その商品開発の秘訣を聞いてみた。「いやぁ、秘訣って言うか…、単純に“普通”においしいものを作ろうと思っているだけです。」と戸枝理事長。この顧客視点をぶらさないところは見事である。



