CSRについての基本的な知識と、企業やNPO、自治体による取り組みの最新情報を知るためのコラムを掲載します。

 CSRプラスのデータ分析や、市民へのアンケート調査を掲載する「傾向と対策」をはじめ、 CSRの取り組みに熱心な企業にヒントを学ぶ「ケーススタディ」、社会的課題に直面するNPOのマネジャーが取り組みのポイントを提案する「ホットイシュー」、CSRに関心を持つ大学生によるレポート「CSR探検隊」。シリーズでお届けします。

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第4回 かわさきコンパクト(前編)[2008年08月27日(水)]
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第4回 かわさきコンパクト(神奈川県川崎市)
     〜自治体がグローバルな視点から取り組む地域のSR〜
       

執筆者:鈴木暁子(ダイバーシティ研究所)
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日本の自治体として初めて「グローバル・コンパクト」参加

神奈川県川崎市は2006年1月、国連が提唱する「グローバル・コンパクト」に日本の自治体として初めて署名しました。現在の川崎市は、臨海部での鉄鋼・化学などの重工業に加えて、IT産業などの先端産業が集積する工業都市ですが、1960年代には大気汚染を初めとする公害が深刻化していました。公害を乗り越えるために市民と行政が一体となって努力してきた経験や環境技術を活かそうと、川崎市では2003年から「国際貢献事業」として、「アジア・太平洋エコビジネスフォーラム」の開催や、人材育成プログラムや都市交流を行っており、この事業で連携があったUNEP(国連環境計画)や海外の自治体との交流と通じて、国際社会への一歩として「グローバル・コンパクト」への参加を実現しました。

 国連の「グローバル・コンパクト」とは、1999年にアナン国連事務総長(当時)が提唱した企業や組織のための自主行動原則で、参加する団体に対して、人権、労働、環境、腐敗防止の4分野で10原則の支持を呼びかけるプログラムです(図表1)。世界で120か国、5226団体が参加し(2008/4/1現在)、近年では、オーストラリア・メルボルン市など自治体による参加もみられます。

 「グローバル・コンパクト」は、代表者が署名をして国連事務総長に参加書簡を提出し、承認を得られれば「参加」したこととなりますので、参加した後の「実効性」をどう担保するのか、10の項目を満たしているかをどう実証していくのかが課題です。企業の場合は自社の取り組みを通して表現していくこととなりますが、自治体の場合は地域での取り組みをどう促していくのかがポイントとなります。そこで市内の事業者や市民にも「グローバル・コンパクト」の理念を広める試みとして、検討委員会での約2年間の議論をふまえた「かわさきコンパクト」を始動しました。

【図表1】 グローバル・コンパクト 10原則


各企業に対して、それぞれの影響力の及ぶ範囲内で、人権、労働基準、環境に関して、国際的に認められた規範を支持し、実践するよう要請しています。その狙いは、各企業がそれぞれの事業を遂行する中で、これらの規範を遵守し、実践することを通じて、世界に積極的な変化をもたらすことです。

人権
 原則1.企業はその影響の及ぶ範囲内で国際的に宣言されている人権の擁護を支持し、尊重する。
 原則2.人権侵害に加担しない。
労働
 原則3.組合結成の自由と団体交渉の権利を実効あるものにする。
 原則4.あらゆる形態の強制労働を排除する。
 原則5.児童労働を実効的に廃止する。
 原則6.雇用と職業に関する差別を撤廃する。
環境
 原則7.環境問題の予防的なアプローチを支持する。
 原則8.環境に関して一層の責任を担うためのイニシアチブをとる。
 原則9.環境にやさしい技術の開発と普及を促進する。
腐敗防止
 原則10.強要と賄賂を含むあらゆる形態の腐敗を防止するために取り組む。 


出典:国連広報センターウェブサイトhttp://www.unic.or.jp/globalcomp/




「かわさきコンパクト」の挑戦 
〜持続可能な都市づくり、世界に貢献できる都市づくり〜


 「かわさきコンパクト」は「グローバル・コンパクト」の理念の市内展開として位置づけられたもので、グローバルな視野から設定した諸課題に対して、市民、企業、行政等の連携により、課題解決を目指す取り組みです。「グローバル・コンパクト」の地域版ともいえます。「かわさきコンパクト」は企業などの事業所を対象とした「ビジネスコンパクト」と、市民を対象とした「市民コンパクト」の2つからなります(図表2)。

 「ビジネス・コンパクト」は、川崎市内に本社・事業所を有する企業が、グローバルな経営環境変化を自らの課題として認識し、社会からの要請を踏まえた主体的な活動を展開していくことを促すために策定されており、9つの自主行動原則(図表3)を定めています。自治体による地域でのコンパクトですが、9項目の中に「国際貢献」を入れており、公害を克服した工業都市としての経験と環境技術をセールスポイントとして内外に発信しようという強い自負が伺えます。

【図表2】かわさきコンパクトの概要図




【図表3】 かわさきビジネス・コンパクト 9原則


原則1:わたしたちは、一人ひとりの人権を大切にします。
原則2:わたしたちは、全ての働く人を大切にする職場をつくります。
原則3:わたしたちは、環境問題に対する基本的な活動方針を作り公表します。
原則4:わたしたちは、環境問題の解決に向けた予防的な活動を展開します。
原則5:わたしたちは、環境にやさしい技術の開発と普及を促進します。
原則6:わたしたちは、公正な経済取引の実現に努めます。
原則7:わたしたちは、安全かつ安心な商品・サービスを提供していきます。
原則8:わたしたちは、地域社会の一員として、地域社会に貢献していきます。
原則9:わたしたちは、自らの特徴を活かし国際社会に貢献していきます。 


図表2〜3出典:「かわさきコンパクト」オフィシャルサイトhttp://kawasaki-compact.com/index.html



Posted by CANPAN運営事務局 at 09:00 | ホットイシュー:地域ぐるみで進めるSR | この記事のURL

第4回 かわさきコンパクト(後編)[2008年08月27日(水)]
参加申請の流れ

企業や市民への普及推進にあたっては、各セクターの代表から構成される「かわさきコンパクト委員会」と、実務を担う「かわさきコンパクト推進事務局」が主体となって行います。参加を申請する事業所(参加単位)は、理念への賛同文や取り組み実績、活動方針を文書にして公開することが求められます。審査にかかる費用は無料で、参加申請書の送付後、同委員会による審査が実施されます。認定された事業所(参加単位)は、自社のウェブサイトでの情報発信や「かわさきコンパクト」のロゴマーク(図表4)の使用が認められます。

2008年6月現在、参加している事業所は8件で、地元の企業や企業の支社、工場、商店街振興組合となっています。地域でのSRを考えるうえでは、地元の商工業者の参画はもちろん、工場などをおく大企業の参画も不可欠です。「かわさきコンパクト」は事業所単位の参加で大企業の参画も促しています。また大企業にとっても地域から支社や工場への評価が得られることで、トップや本社の担当部署とは別の視点から、地域での取り組みを再確認するきっかけとなっています。


【図表4】 「かわさきコンパクト」 ロゴーマーク





自治体が地域のSRに取り組む意義

 一方の「市民コンパクト」は、3つの宣言(図表5)に基づいて、今年度から具体化していく予定です。「企業と市民団体とがどのような方法で付き合っていくのかについての議論を深めたい、市民コンパクトを自分たちで作りたい、というご意見が、市民団体の方々から寄せられるので、市民活動とビジネスコンパクトとのマッチング作業はこれからの取り組みとして進めていきたいと思っています」(川崎市環境局地球環境推進室 長瀬一郎さん)。

ビジネスコンパクトを含めた運用方法などの道筋は、今後具体化していくこととなりますが、市民にもコンパクトを用意し責務を明らかにしようとする「市民コンパクト」は、「CSR」として企業を中心に考えがちだった社会責任の概念を、「SR」として地域全体に広める試みとして注目できます。

 自治体による地域SRへの関わりには、条例や基本計画などの策定による市民や事業所への行動促進や、ISO14001の認証取得や障碍者雇用の状況を公共事業の入札時に要件に加味する「総合評価入札制度(*)」の導入などもありますが、市民に責務を求めたり、地域全体で評価制度を設けて事業所とコンパクトを結ぶといった取り組みもまた、自治体にできる重要な役割です。CSRから地域でのSRへ、視点が広がっていく中、雇用やコミュニティ貢献の視点で熱心に取り組む企業を応援する施策を通して、自治体には地域SRを推進する重要な責務を果たしていくことが求められています。グローバルな視点に立ちながらも地域での取り組みを促そうとする「かわさきコンパクト」は、他の自治体にもSRへの関わり方のモデルとなりそうです。


第1回 「ビジネスコンパクト」登録証授与式の様子(2008年3月)



【図表5】 かわさき市民コンパクト3つの宣言


宣言1:私は川崎の町と人と自然を大切にします。
宣言2:わたしの‘地球温暖化対策’を進めます。
宣言3:かわさきビジネスコンパクトパートナー企業と協働します。 


図表4〜5出典:かわさきコンパクトオフィシャルサイトhttp://kawasaki-compact.com/index.html

第4回(後編)終わり

第4回(前編)


関連コラム
*総合評価入札制度については、CSRプラスコラム「自治体の総合評価入札制度の採用により地域企業も変化」(執筆者:大谷強氏、2007年7月)をご参照ください。
 http://blog.canpan.info/column/archive/49

Posted by CANPAN運営事務局 at 09:00 | ホットイシュー:地域ぐるみで進めるSR | この記事のURL

第3回 横浜型地域貢献企業認定制度[2008年07月24日(木)]
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  第3回 横浜型地域貢献企業認定制度(神奈川県横浜市)
      〜自治体が支援するマルチステークホルダー型の取り組み〜
 

執筆者:鈴木暁子(ダイバーシティ研究所)
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「地域」を切り口にした横浜型地域貢献企業認定制度

CSRの範囲や対象の広がりを受けて、大手企業だけでなく、地域の中小企業の取り組みを自治体が応援する動きが出てきています。今回ご紹介する「横浜型地域貢献企業認定制度」もそのひとつです。2007年度に、横浜市経済観光局と(財)横浜企業経営支援財団(IDEC YOKOHAMA)、横浜市立大学CSRセンター有限責任事業組合が中心となって発足しました。また、横浜商工会議所、NPO法人横浜スタンダード推進協議会(横浜青年会議所が母体)なども、制度に参画しています。

この制度の特徴は、1)評価軸に「地域性」を加味している、2)複数の主体が制度を設計・運用しており、マルチステークホルダー型の取り組みである、3)地域の中小企業を対象としている、といった点にあります。本コラムでは、マルチステークホルダー型の取り組みのプロセスについて焦点を当てて、紹介します。

制度の概要

「横浜型地域貢献企業認定制度」は、地域性を加味した一定基準を満たした企業を「横浜型地域貢献企業」として認定する制度です。認定された企業は、認定証やマークの使用やCSR応援サイトでの情報発信、中小企業向けの融資制度「企業価値向上資金」を利用し低金利での融資を受けることができます。

認定の評価は、「取組み」と「システム構築(しくみ)」から両面から行われます。実際の評価は、IDEC YOKOHAMAや横浜市の職員の外部評価員が行い、認定委員会で状況を確認できた場合に「横浜型地域貢献」企業として認定されます。(取り組み状況の評価項目は、図表1を参照) 認定に関する費用は、今年度からは有料化される予定です。
平成19年度の認定企業数は、応募72件に対して35件(うち中小企業は30社)でした。残りの企業は継続審査中となっています。今夏には、横浜市立大学CSRセンター(以下、CSRセンター)、横浜市、横浜商工会議所の三者で、ウェブサイト「企業CSR応援サイト」を立ち上げる予定です。


図表1 取り組み状況の評価

地域性基準について

 *具体的には、全項目に次のいずれかの基準が要求される。

@地域性比率:取組みの対象者(従業員、顧客、取引先等)のうち横浜在住・所在の割合が50%以上
A地域限定性:50%以上ではないが、横浜在住・所在の対象に限定した取組みを行っている
B地域志向性:横浜という地域特性・文化等を重視した取組みを行っている


出典:財団法人横浜企業経営支援財団ウェブサイト


図表2  

マルチステークホルダー型のしくみ作りのプロセス
影山摩子弥センター長


横浜では、どのようにして、多様なステークホルダーのエンゲージメント(参画)を進めていったのでしょうか。制度設計を担当した影山摩子弥センター長はこう語ります。
「制度の基本構想は、平成18年頃から、横浜市からの派遣の(財)横浜企業経営支援財団の吉田正博事務局長(当時、横浜市経済観光局経営支援課長)が描かれたものです。ご存じの通り、CSRは面倒くさい。CSRと聞いただけで拒絶される企業が多いです。しかし、この制度は企業の協力を得ない限り、成立しません。吉田事務局長の発想が優れていた点は、『企業は行政に協力するはずだ、すべきだとしなかった』ことだと思います。行政が前面に出ずに、いろいろな主体をやわらかな形で巻き込み、制度の構築を考えていったのです。結果的に、コンソーシアム(連合体)的な形となり、現在もそれが維持されています。」

企業と自治体の間に、CSRセンターが入りつなぎ役を務めたことで、相互が本音を言いやすい関係を築くことができたといえます。加えて、「みんながやらなければ」という考えは常にベースにあったそうです。各ステークホルダーが当事者として責任を果たす、主体性の醸成も大きなポイントであると言えます。


CSRは中小企業にこそ意味がある

この取り組みを進める上で、企業に対してどのようなアプローチを行っているのでしょうか?

横浜の事例では、商工会議所等、ビジネスセクターの諸団体の構想段階からの巻き込みに加えて、企業向けの導入説明会を何度も行い、直接、個別企業に出向いての説明やフォローアップも行っています。
「説明会で強調したのは、中小企業にこそ意味があるということ。実はふたを開けてみたら、中小企業は結構できていますよ、ということをお伝えしました。制度の説明というよりも、CSRは中小企業にとって、魅力があるんだということを理解していただければ、取り組みの意義も分かっていただけるのではないか」と。(影山さん)

横浜の事例では、当初から地域の未来を見据えて、各ステークホルダーの巻き込みの戦略を描いていたこと、企業に対して丁寧なコミュニケーションを図り信頼関係を醸成する努力を怠らなかったことが、地元の中小企業の意欲を高めたといえます。広範なステークホルダーが、対話を通じて情報や認識を共有し、協働して解決にあたる「マルチステークホルダー・アプローチ」の取り組み事例であるといえるでしょう。

今後の課題は、NPOのエンゲージメント(参画) 

影山さんは、制度を稼働させるにあたり、ステークホルダーとしてのNPOの役割に着目し、NPOを30団体近く訪問して制度への参画を打診されたそうですが、すべて消極的な反応であったといいます。地域ぐるみのSRを進めるためには、NPOのSRに対するリテラシーを高めることも必要です。NPOの参画(エンゲージメント)が実現できれば、制度も進化を遂げて、環境にも人にも優しい地域づくりに近づいていくのではないでしょうか。
第3回終わり




【参考文献】
財団法人横浜企業経営支援財団 「横浜型地域貢献企業認定事業」
横浜市経済観光局 
横浜市立大学CSRセンター           
・「月刊ポジティブ」Vol.33 No.3 (発行:2008年3月、ブレーンダイナミクス)

Posted by CANPAN運営事務局 at 10:00 | ホットイシュー:地域ぐるみで進めるSR | この記事のURL

第2回 中間支援組織と地域SR[2008年06月18日(水)]
CSR(企業の社会的責任)からSR(社会責任)の流れの中で、企業だけではなく、複数のステークホルダーで課題の解決をめざす取り組みが各地で始まっています。この新シリーズでは、そうした地域の取り組み事例をお伝えします。

ホットイシュー:地域ぐるみで進めるSR


せんだい・みやぎNPOセンターの取り組み

執筆者:田村 太郎 
   (ダイバーシティ研究所代表 ・特定非営利活動法人多文化共生センター大阪代表理事)


「CSR推進相談所」を開設

 NPO法人「せんだい・みやぎNPOセンター」(仙台市)は2008年5月、「CSR推進相談所」(以下「相談所」)を開設しました。同センターは1997年(法人化は99年)に設立された民設民営の市民活動支援組織で、仙台・宮城地区のNPOのための社会環境の整備や、行政セクター、企業セクターと市民との出会いの機会の創出を目的に活動を展開しています。資金や物資などの資源を持つ企業や個人と、そうした資源を必要としているNPOとを結ぶサポート資源提供システムや、仙台市内の企業と連携した市民参加型まちづくりキャンペーン「せんだいCARES」等の活動を通して、同センターではNPOと企業とを結ぶ様々な取り組みを行ってきました。            

                                             
 支援を必要とする人や組織と支援を提供する人や組織との中間にあってコーディネートするせんだい・みやぎNPOセンターのような組織を「中間支援組織」といいます。

 中間支援組織の仕事は、支援をキーワードにした場づくりともいえるのですが、同センター常務理事・事務局長で相談所の所長でもある紅邑晶子さんは「支援という『場』をどうやって組み立てるかが大切であって、NPOを支援される側、企業を支援する側に分ける必要はないのではないか」と考えるようになりました。CSRをテーマとしたセミナーを重ねる中で、企業も支援を必要としていることを感じた紅邑さんたちは、同センターのこれまでの取り組みを整理するなかから、企業が社会貢献活動への取り組みなどについて、気軽に相談できる新しい支援の「場」として、「相談所」を立ち上げたのです。


地域をベースにした学ぶ機会の提供

 相談所の主な活動は、企業の取り組みに関連したCSRレポート作成支援などの相談活動、NPOとのマッチングやCSRに関する情報収集・発信などの情報提供活動、CSRに関する勉強会やセミナーの開催等を通したCSRに関する交流の場の提供の3つです。「実は看板を先にあげたんですよ。私たちもCSRに特別詳しいというわけではないんです」と紅邑さんはいいます。

 相談所を立ち上げる前にも、企業だけで研究会をされていた方からNPOの意見も欲しいといった相談や、とにかく何をしたらいいのかわからない、といった声を聞き、「相談機能ができたらこういう相談にも乗れる。即答できなくても、情報収集してからでも大丈夫ではないか」(紅邑さん)と考えるようになったそうです。「看板を上げて相談を受ければ、情報やネットワークが蓄積されていく。そうすれば層が広がっていく。」(同)

 「地域には本当に素晴らし活動をしている企業がたくさんあります。それらをCSRと呼んでいないだけ。では地方の企業がCSRをイチから勉強して、自社の取り組みをアピールできるかというと、単独では難しい。東京に本社のある大きな企業のCSRの取り組みと同じレベルで評価されるところまでもっていくには支援が必要」と紅邑さんは考えています。


CSR事業に関わるせんだい・みやぎNPOセンターのスタッフのみなさん

左:高橋陽佑さん 中央:紅邑晶子さん(常務理事・事務局長) 右:田内 亜紀子さん
 

 一方で、例えば、地域で障がい者の雇用促進に取り組んでいるNPOがどこでどんな活動をしているのか、といった情報を知っているのが中間支援組織。NPOにもCSRの概念を理解してもらい、企業とどのようにつながっていけばいいのかをともに考えていこうというのが相談所の現在の立ち位置のようです。相談所の設置は、企業とNPO、そしてせんだい・みやぎNPOセンター自身にとっても、CSRをベースにした「学ぶ機会」であるといえるでしょう。


中間支援組織への期待

 内閣府の国民生活審議会は、「安全・安心で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議」の設置に向けて準備を始めています。企業や自治体などが単体では達成が難しい課題解決に、多様なステークホルダーが協働して合意形成を図りながら課題の解決にあたる手法を「マルチステークホルダー・アプローチ」といいます。持続可能な発展や社会責任に関する国際社会での実践や議論の高まりを受け、洞爺湖サミットを目前に控えた日本でも、同様の取り組みを進めていこうという主旨のようです。

 マルチステークホルダー・アプローチによる議論では、政府や企業といった会議での決定事項から直接影響を受けるステークホルダーではない担い手が場を開く方が合意形成がスムーズです。国同士の意見調整は難しい場合に、国連が話し合うテーブルを用意するのと同じです。

 全国には数多くの中間支援組織があります。せんだい・みやぎNPOセンターのような民設民営のもののほか、社会福祉協議会や自治体が直接運営しているところもあります。また、市民活動やNPO支援という大きな枠組みで活動している中間支援組織のほか、環境や子どもといったテーマを絞った中間支援を行う組織もあります。直接支援型の組織でもCSRをキーワードにした場づくりや企業との協働は可能ですが、地域やテーマごとにNPOの情報をよく知る中間支援組織には、地域ぐるみでの、あるいはテーマ別に専門性の高いCSRの推進で大きな力になることが期待されています。

 環境や労働での課題解決には、国レベルでの目標設定や課題解決の取り組みの議論も重要ですが、地域レベルでの円卓会議は、必要性も実効性も高いと考えられます。中間支援組織にはCSRをベースにした学びの場の創造を、まずは期待したいところです。


*CSR推進相談室開設の詳細は、こちらから
(せんだい・みやぎNPOセンターウェブサイトへジャンプします)

                                                    第2回終わり
第1回を読む

【お知らせ】

せんだい・みやぎNPOセンターが運営する「みやぎ公益活動ポータルサイト『みんみん』」が、2008年6月、CANPAN上でリニューアルオープンしました。今後、CANPAN上で、日本各地の「公益活動ポータルサイト」が続々オープンする予定です。


                                                    

Posted by columnist1 at 10:00 | ホットイシュー:地域ぐるみで進めるSR | この記事のURL

第1回 なぜ「地域でSR」なのか?〜外国人の児童労働から考える〜[2008年05月01日(木)]
CSR(企業の社会的責任)からSR(社会責任)の流れの中で、企業だけではなく、複数のステークホルダーで課題の解決をめざす取り組みが各地で始まっています。この新シリーズでは、そうした地域の取り組み事例をお伝えします。

ホットイシュー:地域ぐるみで進めるSR


執筆者:田村 太郎 
   (ダイバーシティ研究所代表 ・特定非営利活動法人多文化共生センター大阪代表理事)


日本で増える「児童労働」

 昨年10月、静岡家庭裁判所浜松支部は、労働基準法違反の罪で元人材派遣会社社長に懲役4月、執行猶予3年の判決を言い渡しました。この人材派遣会社は、浜松市内の食品製造会社に、当時14歳だったブラジル人の少年2人を派遣していたとして摘発されていました。過去にも少なからぬ数の少年を雇い入れていたことがわかっています。就学年齢にありながら工場などで働く外国人の子どもたちは、他にも各地で散見されますが、とりわけ日系ブラジル人の子どもたちを初めとする外国人児童生徒の「不就学」が、働く子どもたちを生み出す大きな要因となっています。

 文部科学省は全国12の自治体に委嘱して、外国人児童生徒の就学実態調査を実施しました。就学していないことが明らかになったのは1.1%で、就学していない外国人児童生徒数の合計は12の自治体だけで112人いることがわかりました。外国籍の子どもには就学義務がないとされており、いわゆる「不登校」ではなく、どこの学校にも学籍がない「不就学」となっています。また、就学状況が確認できたのは全体の81.4%で、転居などで居所がつかめなかった子どもたちが17.5%、1,732人にのぼります。

 同じ調査で不就学の子どもたちに学校に行かずに日中何をしているのかを尋ねていますが、20.2%が「仕事・アルバイトをしている」と回答しています。就学年齢にある子どもはブラジル人だけでも全国で約3万人ですから、不就学率を1.1%、そのうち20.2%が働いているとして、全国で働いている可能性があるのは60人、という計算になります。しかし所在不明の子どもたちも相当数が学校に行っていない可能性があります。もしそのうちの20%が働いているとすれば、ブラジル人だけで1,000人を超える子どもが日本で働いていることになります。

企業だけでは責任を負えない

 子どもたちが働く理由は何でしょうか。

 一年ほど前に、浜松とはちがう別のある地域で、10名を越える子どもが工場で働いていたことが判明しました。労働基準監督署の方が一部の子どもから就労の事情について確認したところ、経済的な理由よりも、日本語が話せずに学校になじめないことや、ブラジルの学校を修了した(ブラジルでは初等教育が8年)ので働かせて欲しいと両親が就労を頼んだ、といった答えが多かったそうです。「学校に行かない」→「居場所がない」→「働く」という流れが見えてきます。

 先述の就学調査では、学校に行かない理由についても回答を得ています(図1)。最も多い回答は「学校に行くお金がない」というものですが、これは他の理由で日本の学校に行かないために、人材派遣会社等が経営するブラジル人学校に通うための学費(1人1ヶ月3〜4万円)が払えない、というものです。2位の「日本語がわからない」は、90年に入国管理法が改正され、日系ブラジル人がたくさん来日してからすでに長い年月が過ぎているにもかかわらず、子どもたちの日本語教育がまだ充分でないことを示しています。

【図1】


 「すぐに帰国するから」という理由からは、いわゆる「デカセギ」のままの就労が子どもの将来を描きにくくさせている様子が透けて見えますし、「母国の学校と生活や習慣が違うから」「勉強がわからないから」という理由も、外国人を必要としながら地域として準備が整っていないことも背景にあるでしょう。もちろん、日本語習得の支援や適切なオリエンテーションを行って、丁寧に就学をサポートしている地域も少なくありません。しかし ながらこのような取り組みはまだ少数で、現実的には、さまざまな理由から不就学になった子どもたちが、日本での「児童労働」につながっていきます。

 就学年齢にある子どもが働くことは確かに問題がありますが、働いていた工場や派遣した会社だけに責任を求めても、本質的な問題の解決にはならないのではないでしょうか。ある人材派遣会社の社長さんによると、「子どもが学校に行ってなくて家でゴロゴロしているが、そろそろ体も大きくなってきたので働かせて欲しい」といって子どもを連れてくる親もいるそうです。学校に行かない子どもが家にじっとしているはずもなく、非行に走るよりも工場で働いていた方が安心できる、という親の気持ちも理解できます。

SRはマルチステークホルダーで

 日本で起きているこうした現状は、バングラディシュの縫製工場やガーナのカカオ農園での児童労働の問題とも似ています。単純に児童労働を摘発したり、工場での年齢確認を徹底するだけでは、子どもたちはより厳しい状況に陥るかもしれません。つまり、企業や消費者が「子どもがつくった製品を買わない」「取り引きしない」というだけでは、子どもたちは行き場を失い、より不安定な状況を招きかねません。子どもが働いている地域の産業や社会の構造をよく研究し、政府や教育関係者などと連携しながら、地域全体で改善のための取り組みを模索していく必要があります。

 環境や労働でのCSRも、企業が単体で取り組めることには限界があります。自社のCSRを進めるためにステークホルダーダイアログを開く企業は多いのですが、企業もステークホルダーのひとつとして、「地域」という視点から解決策を考えていくアプローチがなければ、本当のSRは実現しないのではないでしょうか。


「自治体による多文化共生への取り組みも議論が進んでいる」
 (07年11月・美濃加茂市でのフォーラムの様子)
 岐阜県美濃加茂市長と群馬県大泉町長との対談  コーディネーターは筆者
 *本文とは関係ありません


 次回から、人にも地球にも優しい社会の実現に地域の視点で取り組む内外の事例を紹介しながら、「地域SR」推進のためのヒントを考えてゆきたいと思います。

第1回終わり

Posted by CANPAN運営事務局 at 16:29 | ホットイシュー:地域ぐるみで進めるSR | この記事のURL