横浜型地域貢献企業認定制度[2008年07月24日(木)]
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横浜型地域貢献企業認定制度(神奈川県横浜市)
〜自治体が支援するマルチステークホルダー型の取り組み〜
「地域」を切り口にした横浜型地域貢献企業認定制度
CSRの範囲や対象の広がりを受けて、大手企業だけでなく、地域の中小企業の取り組みを自治体が応援する動きが出てきています。今回ご紹介する「横浜型地域貢献企業認定制度」もそのひとつです。2007年度に、横浜市経済観光局と(財)横浜企業経営支援財団(IDEC YOKOHAMA)、横浜市立大学CSRセンター有限責任事業組合が中心となって発足しました。また、横浜商工会議所、NPO法人横浜スタンダード推進協議会(横浜青年会議所が母体)なども、制度に参画しています。
この制度の特徴は、1)評価軸に「地域性」を加味している、2)複数の主体が制度を設計・運用しており、マルチステークホルダー型の取り組みである、3)地域の中小企業を対象としている、といった点にあります。本コラムでは、マルチステークホルダー型の取り組みのプロセスについて焦点を当てて、紹介します。
制度の概要
「横浜型地域貢献企業認定制度」は、地域性を加味した一定基準を満たした企業を「横浜型地域貢献企業」として認定する制度です。認定された企業は、認定証やマークの使用やCSR応援サイトでの情報発信、中小企業向けの融資制度「企業価値向上資金」を利用し低金利での融資を受けることができます。
認定の評価は、「取組み」と「システム構築(しくみ)」から両面から行われます。実際の評価は、IDEC YOKOHAMAや横浜市の職員の外部評価員が行い、認定委員会で状況を確認できた場合に「横浜型地域貢献」企業として認定されます。(取り組み状況の評価項目は、図表1を参照) 認定に関する費用は、今年度からは有料化される予定です。
平成19年度の認定企業数は、応募72件に対して35件(うち中小企業は30社)でした。残りの企業は継続審査中となっています。今夏には、横浜市立大学CSRセンター(以下、CSRセンター)、横浜市、横浜商工会議所の三者で、ウェブサイト「企業CSR応援サイト」を立ち上げる予定です。

地域性基準について
*具体的には、全項目に次のいずれかの基準が要求される。
@地域性比率:取組みの対象者(従業員、顧客、取引先等)のうち横浜在住・所在の割合が50%以上
A地域限定性:50%以上ではないが、横浜在住・所在の対象に限定した取組みを行っている
B地域志向性:横浜という地域特性・文化等を重視した取組みを行っている
出典:財団法人横浜企業経営支援財団ウェブサイト
図表2

マルチステークホルダー型のしくみ作りのプロセス

横浜では、どのようにして、多様なステークホルダーのエンゲージメント(参画)を進めていったのでしょうか。制度設計を担当した影山摩子弥センター長はこう語ります。
「制度の基本構想は、平成18年頃から、横浜市からの派遣の(財)横浜企業経営支援財団の吉田正博事務局長(当時、横浜市経済観光局経営支援課長)が描かれたものです。ご存じの通り、CSRは面倒くさい。CSRと聞いただけで拒絶される企業が多いです。しかし、この制度は企業の協力を得ない限り、成立しません。吉田事務局長の発想が優れていた点は、『企業は行政に協力するはずだ、すべきだとしなかった』ことだと思います。行政が前面に出ずに、いろいろな主体をやわらかな形で巻き込み、制度の構築を考えていったのです。結果的に、コンソーシアム(連合体)的な形となり、現在もそれが維持されています。」
企業と自治体の間に、CSRセンターが入りつなぎ役を務めたことで、相互が本音を言いやすい関係を築くことができたといえます。加えて、「みんながやらなければ」という考えは常にベースにあったそうです。各ステークホルダーが当事者として責任を果たす、主体性の醸成も大きなポイントであると言えます。
CSRは中小企業にこそ意味がある
この取り組みを進める上で、企業に対してどのようなアプローチを行っているのでしょうか?
横浜の事例では、商工会議所等、ビジネスセクターの諸団体の構想段階からの巻き込みに加えて、企業向けの導入説明会を何度も行い、直接、個別企業に出向いての説明やフォローアップも行っています。
「説明会で強調したのは、中小企業にこそ意味があるということ。実はふたを開けてみたら、中小企業は結構できていますよ、ということをお伝えしました。制度の説明というよりも、CSRは中小企業にとって、魅力があるんだということを理解していただければ、取り組みの意義も分かっていただけるのではないか」と。(影山さん)
横浜の事例では、当初から地域の未来を見据えて、各ステークホルダーの巻き込みの戦略を描いていたこと、企業に対して丁寧なコミュニケーションを図り信頼関係を醸成する努力を怠らなかったことが、地元の中小企業の意欲を高めたといえます。広範なステークホルダーが、対話を通じて情報や認識を共有し、協働して解決にあたる「マルチステークホルダー・アプローチ」の取り組み事例であるといえるでしょう。
今後の課題は、NPOのエンゲージメント(参画)
影山さんは、制度を稼働させるにあたり、ステークホルダーとしてのNPOの役割に着目し、NPOを30団体近く訪問して制度への参画を打診されたそうですが、すべて消極的な反応であったといいます。地域ぐるみのSRを進めるためには、NPOのSRに対するリテラシーを高めることも必要です。NPOの参画(エンゲージメント)が実現できれば、制度も進化を遂げて、環境にも人にも優しい地域づくりに近づいていくのではないでしょうか。
【参考文献】
・財団法人横浜企業経営支援財団 「横浜型地域貢献企業認定事業」
・横浜市経済観光局
・横浜市立大学CSRセンター
・「月刊ポジティブ」Vol.33 No.3 (発行:2008年3月、ブレーンダイナミクス)
横浜型地域貢献企業認定制度(神奈川県横浜市)
〜自治体が支援するマルチステークホルダー型の取り組み〜
執筆者:鈴木暁子(ダイバーシティ研究所)
__________________________________________________________________________________________________________________________________「地域」を切り口にした横浜型地域貢献企業認定制度
CSRの範囲や対象の広がりを受けて、大手企業だけでなく、地域の中小企業の取り組みを自治体が応援する動きが出てきています。今回ご紹介する「横浜型地域貢献企業認定制度」もそのひとつです。2007年度に、横浜市経済観光局と(財)横浜企業経営支援財団(IDEC YOKOHAMA)、横浜市立大学CSRセンター有限責任事業組合が中心となって発足しました。また、横浜商工会議所、NPO法人横浜スタンダード推進協議会(横浜青年会議所が母体)なども、制度に参画しています。
この制度の特徴は、1)評価軸に「地域性」を加味している、2)複数の主体が制度を設計・運用しており、マルチステークホルダー型の取り組みである、3)地域の中小企業を対象としている、といった点にあります。本コラムでは、マルチステークホルダー型の取り組みのプロセスについて焦点を当てて、紹介します。
制度の概要
「横浜型地域貢献企業認定制度」は、地域性を加味した一定基準を満たした企業を「横浜型地域貢献企業」として認定する制度です。認定された企業は、認定証やマークの使用やCSR応援サイトでの情報発信、中小企業向けの融資制度「企業価値向上資金」を利用し低金利での融資を受けることができます。
認定の評価は、「取組み」と「システム構築(しくみ)」から両面から行われます。実際の評価は、IDEC YOKOHAMAや横浜市の職員の外部評価員が行い、認定委員会で状況を確認できた場合に「横浜型地域貢献」企業として認定されます。(取り組み状況の評価項目は、図表1を参照) 認定に関する費用は、今年度からは有料化される予定です。
平成19年度の認定企業数は、応募72件に対して35件(うち中小企業は30社)でした。残りの企業は継続審査中となっています。今夏には、横浜市立大学CSRセンター(以下、CSRセンター)、横浜市、横浜商工会議所の三者で、ウェブサイト「企業CSR応援サイト」を立ち上げる予定です。
図表1 取り組み状況の評価

地域性基準について
*具体的には、全項目に次のいずれかの基準が要求される。
@地域性比率:取組みの対象者(従業員、顧客、取引先等)のうち横浜在住・所在の割合が50%以上
A地域限定性:50%以上ではないが、横浜在住・所在の対象に限定した取組みを行っている
B地域志向性:横浜という地域特性・文化等を重視した取組みを行っている
出典:財団法人横浜企業経営支援財団ウェブサイト
図表2

マルチステークホルダー型のしくみ作りのプロセス
影山摩子弥センター長

横浜では、どのようにして、多様なステークホルダーのエンゲージメント(参画)を進めていったのでしょうか。制度設計を担当した影山摩子弥センター長はこう語ります。
「制度の基本構想は、平成18年頃から、横浜市からの派遣の(財)横浜企業経営支援財団の吉田正博事務局長(当時、横浜市経済観光局経営支援課長)が描かれたものです。ご存じの通り、CSRは面倒くさい。CSRと聞いただけで拒絶される企業が多いです。しかし、この制度は企業の協力を得ない限り、成立しません。吉田事務局長の発想が優れていた点は、『企業は行政に協力するはずだ、すべきだとしなかった』ことだと思います。行政が前面に出ずに、いろいろな主体をやわらかな形で巻き込み、制度の構築を考えていったのです。結果的に、コンソーシアム(連合体)的な形となり、現在もそれが維持されています。」
企業と自治体の間に、CSRセンターが入りつなぎ役を務めたことで、相互が本音を言いやすい関係を築くことができたといえます。加えて、「みんながやらなければ」という考えは常にベースにあったそうです。各ステークホルダーが当事者として責任を果たす、主体性の醸成も大きなポイントであると言えます。
CSRは中小企業にこそ意味がある
この取り組みを進める上で、企業に対してどのようなアプローチを行っているのでしょうか?
横浜の事例では、商工会議所等、ビジネスセクターの諸団体の構想段階からの巻き込みに加えて、企業向けの導入説明会を何度も行い、直接、個別企業に出向いての説明やフォローアップも行っています。
「説明会で強調したのは、中小企業にこそ意味があるということ。実はふたを開けてみたら、中小企業は結構できていますよ、ということをお伝えしました。制度の説明というよりも、CSRは中小企業にとって、魅力があるんだということを理解していただければ、取り組みの意義も分かっていただけるのではないか」と。(影山さん)
横浜の事例では、当初から地域の未来を見据えて、各ステークホルダーの巻き込みの戦略を描いていたこと、企業に対して丁寧なコミュニケーションを図り信頼関係を醸成する努力を怠らなかったことが、地元の中小企業の意欲を高めたといえます。広範なステークホルダーが、対話を通じて情報や認識を共有し、協働して解決にあたる「マルチステークホルダー・アプローチ」の取り組み事例であるといえるでしょう。
今後の課題は、NPOのエンゲージメント(参画)
影山さんは、制度を稼働させるにあたり、ステークホルダーとしてのNPOの役割に着目し、NPOを30団体近く訪問して制度への参画を打診されたそうですが、すべて消極的な反応であったといいます。地域ぐるみのSRを進めるためには、NPOのSRに対するリテラシーを高めることも必要です。NPOの参画(エンゲージメント)が実現できれば、制度も進化を遂げて、環境にも人にも優しい地域づくりに近づいていくのではないでしょうか。
【参考文献】
・財団法人横浜企業経営支援財団 「横浜型地域貢献企業認定事業」
・横浜市経済観光局
・横浜市立大学CSRセンター
・「月刊ポジティブ」Vol.33 No.3 (発行:2008年3月、ブレーンダイナミクス)



